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財政黒字化一段と遠のく 25年度困難、29年度に後ずれ

経済財政諮問会議であいさつする安倍首相(31日、首相官邸)

内閣府は31日の経済財政諮問会議で、国と地方の基礎的財政収支(PB)の黒字化が2029年度になるとの試算を示した。新型コロナウイルスの感染拡大による景気悪化や財政支出により、1月の前回試算から2年遅れる。政府が目標に掲げる25年度の黒字化は極めて難しい情勢だ。

内閣府は毎年1月と夏にまとめる「中長期の経済財政に関する試算」を公表した。29年度のPBの黒字化は政策が想定通りに効果を出して潜在成長率が高まる「成長実現ケース」として示した。潜在成長率をほぼ横ばいにした「ベースラインケース」では29年度もPBは国内総生産(GDP)比で1.7%(約10兆円)の赤字となる。

PBの赤字は米リーマン危機後からの景気回復局面でほぼ毎年縮小が続いてきたが、19年度はGDP比で2.6%、20年度は12.8%に急拡大する見通しになった。コロナ対応の20年度補正予算で財政支出が計120兆円を超える規模に膨らんだことに加え、企業業績の悪化で税収が減るためだ。黒字化の目標としていた25年度は1.1%(約7兆円)の赤字だ。

試算の前提は楽観的との指摘が多い。成長実現ケースは名目経済成長率が21年度から3~4%で推移する前提を置く。実質成長率も21~22年度に3%台半ば、その後は2%程度で安定する予想だ。23年度ごろには名目GDPが600兆円に達し、24年度からは消費者物価上昇率が日銀の目標である2%で安定する。

90年代のバブル崩壊以降、年度単位でみた日本の名目成長率が3%を超えたことは一度もない。物価の見通しも毎年のように下方修正している。名目経済成長率は税収を試算する前提となっており、財政改善のシナリオにも疑問符がつく。

日本の財政悪化は先進国の中でも際立つ。経済協力開発機構(OECD)が6月にまとめた試算では19年度に1.6%だった加盟国全体のPBの赤字のGDP比は20年度に9.4%まで拡大する。日本は11.4%で11.9%の米国に次ぐ規模だ。もともとPBが黒字で推移してきたドイツやイタリア、韓国などはマイナス幅が比較的小さい。

懸念されるのは国債の格下げだ。格付け会社のフィッチ・レーティングスは28日、日本国債の格付け見通しを「安定的」から「弱含み」に引き下げた。S&Pグローバル・レーティングも6月に見通しを「ポジティブ」から「安定的」に引き下げている。感染の再拡大などで景気悪化や財政支出の拡大が続いて格下げになれば、金融機関や企業の資金調達コストの上昇につながりかねない。

BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは、新型コロナで企業の倒産や失業を防ぐための政府・日銀の資金繰り支援策は不可欠だったとしながらも、結果として成長産業に労働者が集まりにくい環境を生み出す副作用もあると指摘。次の危機に備えて企業が支出を抑える動きも加われば「低成長・低インフレ・低金利・公的債務の膨張という傾向がさらに強まる」と予測する。政府には信認維持にむけた丁寧な説明が求められる。

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