過激ユーチューバー、摘発相次ぐ

スコープ
社会・くらし
2020/8/2 2:00 (2020/8/3 11:13更新)
保存
共有
印刷
その他

動画の再生回数を稼ぎたい「ユーチューバー」の迷惑行為が刑事事件に至るケースが相次ぐ。虚偽の被害届や行方不明者の消息を流すなど、過激化も進む。専門家は「視聴する側が面白がらない」ことが大切と指摘している。

自称ユーチューバーの男は、愛知県の商業施設で会計前の魚の切り身を開封する様子をユーチューブに公開した

自称ユーチューバーの男は、愛知県の商業施設で会計前の魚の切り身を開封する様子をユーチューブに公開した

「店の商品、会計前に食ってやったぜー」。5月29日、「へずまりゅう」の名前で活動する自称ユーチューバーの男(29)が愛知県岡崎市の商業施設で、魚の切り身1パック(428円)を会計前に食べる動画を撮影した。県警は会計前の商品を食べる行為が窃盗にあたると判断、7月11日に男を窃盗容疑で逮捕した。男はその後新型コロナウイルス陽性が確認され、滞在していた山口県などで感染を拡大させたとして同県知事らから苦言を呈された。

ユーチューブでは再生回数に応じて広告料の一部が投稿者に支払われる。世界では60億回超の動画もあり、トップクラスの年収は1億円を超えるとされる。現在80カ国以上で数百万人が動画から収益を得ているとみられる。

日本でも有名人の参入やユーチューブ発で個性派タレントが誕生。ユーチューバーは子どもが将来就きたい職業の調査で上位になることもある。ただ、ユーチューバーNEXT(東京・千代田)によると、国内で月に10万円以上を稼ぐ人は2月時点で9千人ほどにとどまるという。

東京・渋谷のスクランブル交差点にベッドを置いたり、コンビニエンスストアのアイスクリーム用冷凍庫の中に入ったり……。再生回数目当ての過激投稿は以前からなくならない。

「ここ(自動販売機)の前にちょっと置きたいと思います」。1月、大阪市西成区の路上。20代の男ら2人はわざと財布を落とし、通行人が拾うまでの様子を車内から観察していた。

拾った男性が財布を持ったままホテルに入ったのを確かめ、大阪府警西成署に「被害に遭った」と相談。警察官とのやりとりも隠し撮りしてユーチューブに投稿した。府警は3月、2人を偽計業務妨害の疑いで逮捕した。「再生数を稼げると思った」と話したという。

2月にはユーチューブに嘘の動画を投稿し警察の業務を妨害したとして、男性が岐阜県警に軽犯罪法違反容疑で書類送検された。男性は同県の長良川近くで行方不明になっている女性について、「行方不明になったのは、僕の家に同棲(どうせい)しているからです」などと知らせる内容の動画を投稿していた。動画は全くの虚偽だった。

事件には至らなくても、「倫理観に欠ける」と批判を浴びる動画も目立つ。タレントの志村けんさんや女優の岡江久美子さんが新型コロナウイルスによる肺炎で亡くなった際、「息子」などと称した人物の動画投稿が相次いだ。SNS(交流サイト)上で視聴者らから中傷を受けた木村花さんが死去した5月には、元恋人や兄を名乗る動画が上がった。

東洋大の桐生正幸教授(犯罪心理学)は「逮捕されることすら、視聴者の注目を得て動画再生数を伸ばす手段になっているかもしれない」と指摘する。「面白がって迷惑動画を見る、コメントを残すといった行為が増長を招く。不適切な動画を見かけたらまずは運営会社や警察に通報してほしい」と話している。

■ガイドライン違反の動画は削除
 迷惑行為などの動画に対しては運営側のユーチューブも監視している。
 ユーチューブは危険ないたずらや暴力的、性的な動画などを規制対象とするガイドラインを設け、投稿を禁じている。ガイドラインの違反が確認された場合は動画を削除し、投稿者側へ警告する。複数回警告を受けた場合などは投稿者のアカウントが停止される。
 ユーチューブが2020年1~3月に削除した動画は全世界で約611万本に上った。うち9割は違反動画を特定する自動システムが検知した。削除された動画のうち、5割は1度も再生されなかったという。
保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]