核禁止条約への締約求める 広島平和宣言、日本政府に
広島市の松井一実市長は31日、記者会見を開き、被爆75年の節目となる8月6日の原爆の日に平和記念式典で読む平和宣言の骨子を発表した。3年前に国連で採択されたが、現在も発効していない核兵器禁止条約について、日本政府に「締約国」となるよう求める。

同条約を巡っては近年、地元の被爆者団体などから、強い言葉で批准を政府に求めるよう要望が出ていた。松井市長は、条約の批准国が増えていることや、平和宣言の内容を話し合う懇談会でも踏み込んだ文言を求める意見があったことを踏まえ「今年は明確に申し上げる」と話した。
放射性物質を含んだ「黒い雨」を浴びた人たちの救済については、援護対象となる降雨地域の拡大に向けた政治判断を、改めて強く求めるとした。広島地裁は29日の判決で、黒い雨が国の援護対象区域外でも降ったとして、広島県と広島市に84人への被爆者健康手帳の交付を命じている。
収束が見通せない新型コロナウイルスにも言及。13歳で被爆した男性(88)=広島市=の「自国のことばかり考えるから争いになるのだ」との言葉や、ローマ教皇が2019年11月に広島で述べた言葉、同10月に亡くなった元国連難民高等弁務官の緒方貞子さんの言葉を引用し、市民社会へ連帯を促す。
松井市長は「被爆75年の節目の年にふさわしい発信力のある平和宣言にしたい」と述べた。〔共同〕