除菌住宅にオンライン歌舞伎 コロナシン景まとめ読み

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2020/8/2 2:00
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NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

日経産業新聞で連載中の写真企画「コロナ シン景」。新型コロナウイルスで変わる産業や社会、人々の生活を点描しています。ウイルスを室内に持ち込まない「抗ウイルス仕様」の住宅を開発したり、飛沫を防ぐシートを備えたマージャン卓を考案したり、たくましく新常態を模索する現場の動きをまとめました。

■玄関入るとウイルス掃除 土間に手洗い、天井からオゾン

「帰ったら手を洗いなさい!」。新型コロナウイルス流行で、家庭で定番のセリフになっただろう。ついうっかり手洗いを忘れてしまうこともあるが、住宅メーカーのアキュラホーム(東京・新宿)が販売する「新生活様式の家」では忘れようもない。玄関の土間に入った瞬間、手洗い場が目に入るためだ。

埼玉県久喜市のモデルハウスは、ウイルスを室内に持ち込まない設備を各所に構えていた。玄関は「ウイルス除菌エリア」とした。土間の手洗い場は手を差し出せば自動で水が出て、水栓に触れる必要がない。

玄関の壁には掃除機が埋め込んである。吸い込み口をつかんでホースを引き出し、服や体に付いたウイルスを吸い取る。通常の掃除機は吸い込んだウイルスを再び室内に拡散してしまうが、この掃除機は壁を通して室外に排出する。靴箱には病院などで使われる滅菌用の紫外線ライトを設置し、天井にはオゾン発生装置を据えて新型コロナウイルスの働きを抑えるという。

玄関を上がると風呂場まで直行できる廊下があり、ウイルスを生活空間に持ち込まないように移動できる。間取りを見ると玄関からの廊下はリビングなどを囲み、家の外側を通って風呂場まで続いている。脱衣所の入り口は自動ドアになっており、ドアノブに触ることはない。

在宅勤務も快適になる。可動式の棚とブラインドで机を囲めば、仕事に集中できる。建物規模にもよるが、ウイルス対策の機能を完備すると、追加料金は100万円前後の予定。ウイルス対策を新たな住宅の標準装備にしたいという。

(企業報道部 茂野新太)

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■「新雀態」ジャンシールド、卓に透明シート 飛沫防ぐ

ささき商事のマージャン教室では「ジャンシールド」で飛沫を防いでいる

ささき商事のマージャン教室では「ジャンシールド」で飛沫を防いでいる

「ポン!」「あっ、リーチ!」。ささき商事(埼玉県川口市)が運営するマージャン教室に明るい声が戻ってきた。6月に営業を再開して以降、卓を囲む4人を仕切る透明なシートが活躍する。マージャン用具を扱う同社が開発した「ジャンシールド」だ。生徒の澤山典子さん(72)は「この仕切りがあるから安心して遊べる」と満足げだ。

マージャンは一つのテーブルを4人で囲み、会話を楽しみながら長時間過ごす。コロナ禍以前では当たり前だった風景だが、「密」を避けるべき状況ではリスクが高い。ささき商事が取引するマージャン店では客足が激減し、家賃の支払いに追われ、閉店を決めた店もあるという。

難局を突破するには、ツキだけに頼れない。ひらめいたアイデアがジャンシールドだ。教室の営業自粛期間を利用して製作した。通常の仕切り板を卓上に置くと、マージャンパイを取る際に邪魔になる。そこで、卓を囲むように置くパイプを開発。プレーヤーの間にパイプの足を4本設置し、飛沫を防ぐシートをつり下げた。高さを調整してシートと卓の間にスペースを確保し、手を伸ばしてパイを取れるようにした。表情が見える透明性の高いシートを採用し、醍醐味である心理戦も楽しめる。

6月の発売後、全国のマージャン教室などから注文が相次ぎ、既に約300台を受注した。佐々木覚会長は「かつて全自動卓の導入店が人気を集めたように、『ジャンシールドがある店で打ちたい』と指名される商品を目指す」とマージャン店の新常態の定着に挑む。風を読んだアイデアでコロナ禍で荒れる場を乗り越える。

(企業報道部 赤堀弘樹)

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■図夢(ずうむ)歌舞伎、見せやしょう オンラインで配信

松竹は歌舞伎のオンライン配信で画面を4分割する表現を取り入れた。(C)松竹

松竹は歌舞伎のオンライン配信で画面を4分割する表現を取り入れた。(C)松竹

切腹を命じられた塩冶判官は自らの腹に刃を突き立てた。歌舞伎演目「仮名手本忠臣蔵」の泣かせどころだ。すると突然、画面は4分割され前後左右から悲壮感あふれる表情が映し出された。

これは松竹がオンラインで生配信したその名も「図夢歌舞伎(ずうむかぶき)」のワンシーン。ビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」にあやかった。新型コロナウイルスの影響で公演は中止に追い込まれたが、6月27日から5回に分けて同演目を届けた。

生配信ながら、要所要所で収録映像を使い毎回、視聴者を飽きさせない。例えば忠臣蔵の塩冶判官が切腹するシーンでは、画面分割に加えて、顔のしわが一本一本見えるほどズームアップして判官の表情に迫る。判官が敵役の高師直に斬りかかる場面は、判官の視点でカメラを回して臨場感を演出した。

30分前後の配信で料金は各回3700円。観客は30~50代の女性層が多く地方からのアクセスも多かったという。チケット購入者は2万人以上に達した。

8月から歌舞伎座(東京・中央)での公演が再開するが、主演の松本幸四郎氏は「舞台の再開後も歌舞伎見物の選択肢の一つとして(配信が)存在することを願っています」と強調。コロナを前に見得(みえ)を切って舞台を盛り上げていく心意気をみせている。

(企業報道部 茂野新太)

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■自粛消費にギターの調べ 入門用アコースティックギター、売上高2割増

ギターを教える三浦光さん(31)顔にはマスク、額にはフェースシールドを装着

ギターを教える三浦光さん(31)顔にはマスク、額にはフェースシールドを装着

音楽教室BRICKS Music Salon(ブリックス ミュージック サロン、東京・千代田)から、覚えたてのギターコードの音色が流れてくる。教室には新型コロナウイルスで外出自粛を強いられ、在宅でも楽しめる楽器を始めたい人たちが集う。

「マスクは着けない方が教えやすいが、生徒の皆さんには安心してレッスンを受けてもらいたい」。ギターを奏でるヤマハ音楽振興会所属の講師、三浦光さんはフェースシールドにマスク姿だ。この教室では講師や生徒全員に検温や消毒を施し、感染を防ぐ間仕切りを設けている。

感染対策も功を奏し、6月に体験レッスンで教室を訪れた人は35人と前年同月と比べて10人増えた。三浦さんの教室では、初めてギターを習う人が6~7割を占めるようになり、ギター購入の相談もよく受けるという。ヤマハによると、入門用も兼ねた3万~5万円する普及価格帯のアコースティックギターの4~6月の売上高は、前年同期に比べ約2割増えたという。

「外出自粛で時間ができた」。島村楽器錦糸町パルコ店(東京・墨田)でギターを物色していた会社員の小林勝太郎さんは、高校時代に買ったギターを約10年ぶりに引っ張り出した。教室への参加や買い替えも検討中といい、図らずもコロナ禍が再び趣味の世界へ経験者をいざなおうとしている。

同店店長の石井敬さんは「初めてギターを買う人や、再開するため修理に訪れる人は多い」とにわかに接客対応が忙しいよう。楽器販売や音楽教室を手掛ける企業の「巣ごもり消費」に合わせたチューニングはうまくいくか。

(企業報道部 仲井成志)

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■電車の見学、自宅でGO! 職員目線で仕事動画

職員の頭に小型カメラを付けて撮影した

職員の頭に小型カメラを付けて撮影した

「異常なし!」。4月下旬の早朝、東急目黒線・目黒駅(東京・品川)。チェックボードを持つ駅員が、設備に異常がないか確認している。始発列車が来る前、駅の始業準備の一場面だ。普段はなかなか見ない光景である。だがこうした鉄道マンの仕事を、おうちで見学できる時代がきた。

東急電鉄は5月初旬から、鉄道職員の仕事をユーチューブで公開し始めた。名付けて「鉄道現場の現実」。駅員らの頭に小型カメラを取り付け、日々の仕事を職員目線の動画に収めた。

東急線各駅の日常業務や、工場で車両をバラバラにして点検する様子などを見られる。一人称視点の動画で、自分が仕事をしているような臨場感を味わえる。20番組以上を公開し、なかなか見学できない車両工場編では再生回数は3万7000回以上(28日時点)に達した。

企画を考えた目黒駅の菊地敏彦助役は「新型コロナウイルスで外出自粛中の子供たちが、楽しめないかと提案した」と話す。運転士と比べ、駅員などの仕事はあまり知られていない。安全運行を支える駅や車両工場などの仕事にも、子どもたちに興味を抱いて欲しかったという。

収録は終わっており、続編は未定。自粛などの状況次第では続ける可能性もあるという。日ごろ当たり前にこなす仕事も、世の中には新鮮に映ることがある。ウィズコロナ時代には、こうした「バーチャル社会科見学」が広がるかもしれない。

(企業報道部 森匠太郎)

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