景気拡大、革新なき終幕 71カ月間で後退入り政府認定

2020/7/30 23:25 (2020/7/31 5:13更新)
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内閣府は30日、景気の拡大局面から後退局面への転換点を表す「山」を2018年10月と認定した。12年12月から71カ月間の回復局面は戦後2番目の長さになった一方、期間中の経済成長率の低さは過去の拡大期や他の先進国と比べて目立つ。世界で進むデジタル革命への対応に企業も政府も遅れ、投資や規制緩和による生産性向上が停滞している現状を映す。

内閣府の経済社会総合研究所が経済学者やエコノミストらで構成する「景気動向指数研究会」(座長・吉川洋立正大学長)を開き、18年10月を「山」と認定した。

景気の「谷」から「山」への回復局面は、02年2月から08年2月までの「いざなみ景気」(73カ月間)が戦後で最も長い。今回は「いざなみ」には届かなかった。

今回の回復局面は国内総生産(GDP)の成長率が実質で年1.1%程度にとどまった。高度成長時代の「いざなぎ景気」(11.5%)や86年からの「バブル景気」(5.3%)を大きく下回り、「いざなみ」(1.6%)よりも低かった。

同じ期間中の他の多くの先進国も下回った。米国は平均で年2%台の成長を維持し、英国は2%程度、ドイツは1%台後半だった。韓国は3%前後の成長を保った。

岡三証券の愛宕伸康氏は回復局面でも低成長が続いたことについて「人口減少などで成長への期待が低下し、お金を借りてまで設備投資をする企業が減った」と語る。

21世紀の競争のカギを握るデジタル分野の投資も消極的だ。経済協力開発機構(OECD)によると00年から17年までに米国はIT(情報技術)投資額を6割増やし、フランスは2倍としたが、日本は2割減らした。

日本はオンライン講座などで技能向上に取り組んでいる成人の比率も36.6%とOECD加盟国の平均(42%)を下回る。ITでの出遅れは労働生産性に響き、18年の加盟国中の順位は21位で、米国(3位)やフランス(8位)、ドイツ(13位)と差がついた。

生産性の向上は経済成長の地力と言える潜在成長率を上昇させる。今回の回復局面では生産性の停滞が足を引っ張り、内閣府によると潜在成長率は年1.0%を割ったままだった。政府の度重なる財政出動や日銀の異次元の金融緩和により、地力の弱い成長をなんとか支えたのが長く弱い回復の実態だった。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎氏は「財政と金融緩和で支えるうちに、成長戦略で景気を押し上げることを考えたがうまくいかなかった」と話す。

政策頼みとともに外需頼みも強まった。12年に14.5%だったGDPに対する輸出の比率は18年に18.5%となり、世界経済の変調に引きずられやすくなった。18年10月は米中貿易摩擦が激化し、中国への輸出が停滞し始めた時期と重なる。

デジタル化の遅れは政府の責任も重い。医療や教育、司法など多様な場面で対面や書面を求め、デジタル技術の活用を阻んでいる。学校でのデジタル機器の活用度はOECD加盟国で最下位だ。

規制改革の遅れで終身雇用など従来の労働慣行が根強く残り、成長分野への人材のシフトも進まない。成長の地力を高めるには幅広い規制改革を急ぐ必要がある。

西村康稔経済財政・再生相は30日の記者会見で「デジタル化で効率的に働くなど、時間にとらわれない多様な働き方を認め、全ての人が成長を実感できるようにしていきたい」と述べた。

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