危機管理で組織を、経営者の教訓生きる 本社景気討論会

2020/7/30 21:17
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日本経済新聞社と日本経済研究センターは30日、名古屋市内で景気討論会を開いた。聴衆間の距離を取るなど感染対策を施し、来場者は新型コロナウイルス禍の経済見通しや必要な政策に耳を傾けた。パネリスト4人の発言要旨は以下の通り。

■危機管理、統括組織を
(中部経済連合会会長 水野明久氏)

 中部圏の4~6月期の景況判断(DI)はマイナス82.6ポイントと、前四半期比76.8ポイント悪化し、下げ幅はリーマン危機より大きかった。サービス業の経営は厳しく、中部に集積する航空機関連の需要も先行きは見えない。景気の回復には時間がかかるだろう。
水野明久 中部経済連合会会長

水野明久 中部経済連合会会長


 一方、トヨタ自動車が減産から増産に転じつつあるなど底入れの兆しも出ている。自動車の需要はコロナで後ずれしたが、消費は戻ってきた。需要が蒸発した訪日外国人客(インバウンド)関連とは違う。
 今後を見据えればイノベーションの重要性が増してくる。スタートアップの育成を集中的に支援する国の拠点都市に名古屋と浜松が選ばれた。産官学の連携でスタートアップを支援する。
 感染症以外にも日本は地震などの自然災害は多い。非常時の危機管理を統括する組織が必要だ。東京一極集中の是正も再考すべきで、中部圏がどのような役割を果たせるか考えていきたい。
■経営者、リーマン当時の教訓生かす
(日本銀行名古屋支店長 加藤毅氏)

 景気は依然厳しいが、政府の緊急事態宣言の解除などを受けて緩やかに改善に向かうだろう。中部が強い自動車産業では、足元の生産や輸出は回復している。製造業の操業再開で電力やガスの需要も戻ってきた。
加藤毅 日本銀行名古屋支店長

加藤毅 日本銀行名古屋支店長


 自動車の回復は戦略的に生産調整できたことに起因する。リーマン・ショックでは製造業が在庫を抱えすぎた反動で多くが赤字に苦しんだ。過去の教訓を生かし、今回の危機では前もって生産調整するなど高い危機管理力を示した。経営者の声を聞くとリーマン当時のような悲観ムードは薄いように感じる。
 コロナばかりに気を取られてもいけない。世界ではデジタル通貨や環境問題について並行して議論を深めている。コロナ以外の政策対応は日本の課題でもある。世界経済を分析する際、見落としがちなのがミクロの視点だ。例えば米国では州によって感染状況が大きく異なる。一部の指標を見ただけの解釈は方向性を見誤りかねない。

■企業のデジタル化、重点支援を
(野村証券チーフエコノミスト 美輪卓氏)

 経済は「L字回復」になるとみる。業種ごとで異なり、サービス業では始まったばかりの「Go To トラベル」事業に期待するが、足元では新型コロナの感染が再拡大しており、出ばなをくじかれる可能性がある。
美和卓 野村證券チーフエコノミスト

美和卓 野村證券チーフエコノミスト


 ポストコロナでは(デジタル技術で変革を促す)デジタルトランスフォーメーション(DX)と働き方改革がとても重要になる。これらは自発的に進めている民間企業もある一方、(医療関係者ら)エッセンシャルの業界ではできないところも多い。デジタル化を進めたいができていない業種や企業を重点的に支援していくべきだ。
 新型コロナは人々の生活様式を変えた。これがどう潜在成長率に影響していくかは注視する必要がある。女性の復職などが経済を押し上げてきたが、コロナで変わっていく可能性がある。潜在成長率を押し下げないか懸念している。
 今後の世界経済の最大のテーマは米中関係だ。秋には米大統領選を控えるが、米中は技術覇権を争いながらも共存していくとみられる。ホットウォー(武力衝突)のリスクは残るが、現在のような経済対立であれば市場が荒れることはない。

■国内GDP、コロナ前回復に2年
(日本経済研究センター研究顧問 小峰隆夫氏)
 コロナショックによる落ち込みは大きいが、6月から景気は回復傾向にある。雇用情勢は厳しく観光客も戻らない中で回復は実感のないものになるだろう。日本経済の国内総生産(GDP)は楽観的に見てもコロナ前に戻るまでに2年はかかる。
小峰隆夫 日本経済研究センター研究顧問

小峰隆夫 日本経済研究センター研究顧問


 最も打撃が大きいのは観光などの人の移動に関する分野だ。ここの回復は最も遅くなるだろう。訪日外国人客(インバウンド)に頼っていた北海道や沖縄、京都は厳しい。中部地区は相対的にインバウンドの依存度合いが低く、その意味では恵まれている。
 新型コロナの新規感染者数を巡る報道が連日出ている。重要なのは感染者数でなく重症患者の数だ。重症患者が増え続ければ医療体制を揺るがしかねない。日本の重症患者数は以前と比べれば低い水準で推移している。
 財政再建は課題だ。膨大な財政出動の後始末について議論していく必要がある。消費税を引き下げる意見も出ており、歯止めがかからなくなっているのは気がかりだ。延期としている東京五輪の開催は現実的に考えれば厳しいだろう。開催費用をほかの財源に充てるような議論も必要だ。
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