20年度マイナス4.5%成長 政府試算、下振れも

内閣府は30日、2020年度の経済成長率が物価の動きを除いた実質でマイナス4.5%になるとの試算をまとめた。年初に閣議決定した見通し(プラス1.4%)を大幅に下方修正した。新型コロナウイルス禍による景気の急落を反映した。感染の第2波で海外経済が一段と低迷すれば、さらに0.5ポイント程度下振れするとみている。
同日開いた経済財政諮問会議で報告した。緊急事態宣言が出ていた4~5月が個人消費の底で、その後は内需主導で経済が回復するシナリオを描いている。外需の影響が大きい生産や輸出も最悪期は脱したとの見方だ。
内需の柱で国内総生産(GDP)の半分以上を占める個人消費は前年度比4.5%減と見込む。コロナ対策で外出や移動が控えられ、需要が蒸発した。
内需のもう一つの柱である設備投資は4.9%減とした。企業業績の悪化や先行きの不透明感から前向きな投資は広がりにくい。6月の日銀短観でも生産・営業用設備に過剰感が高まっていた。住宅投資も9.0%の大幅減を見込む。
輸出は17.6%減と、特に厳しい見通しを示した。コロナ前の年初時点では、2.4%増と2年ぶりにプラスに戻る想定だった。欧米の感染の広がりで一転、外需の早期の回復は期待しにくい状況になっている。
秋に海外で大規模な感染の第2波が到来した場合、経済成長率がマイナス5%程度まで落ち込むとの参考試算も示した。すでに感染再拡大の兆しはみられる。米国は7月に入ってカリフォルニアなど一部の州で感染者が急増し、経済活動レベル引き上げの一部撤回を迫られた。
消費者物価は0.3%の下落を見込む。原油安にコロナによる需要減が重なり、4年ぶりのマイナスになる。デフレの影が改めてちらつく。
政府はリーマン・ショック後の09年度に成長率が実質マイナス3.3%になるとの試算を出したことがある。今回、コロナ禍による経済の急収縮を踏まえ、当時より厳しい数字を示した。
民間の見立てに比べると強気だ。日本経済研究センターがエコノミストの予測をまとめる「ESPフォーキャスト」の7月調査で、成長率は平均マイナス5.4%。政府は経済対策の効果を高く想定しがちで、個人消費や設備投資の予測差につながっている。
21年度の成長率の見通しはプラス3.4%とした。感染対策と経済活動の両立が進むとみる。非対面型のビジネスや暮らしなどの新しい様式に対応した投資や消費が広がる想定だ。民間の予測平均もプラス3.3%で、予測の水準はおおむね一致している。
前年度比の数字なので20年度の落ち込みが深い分、そもそも21年度は高く出やすい面もある。GDPの規模でみれば、コロナ前の水準に戻るのは早くても22年度以降との見方が市場では大勢だ。
経済を本格的な回復軌道に戻すには治療薬やワクチンの開発、検査・医療体制の充実などがカギを握る。コロナ禍をきっかけに広がったテレワークをはじめ柔軟な働き方で生産性を高める取り組みが必要だ。海外に比べ遅れている社会のデジタル化なども重要な課題になる。

新型コロナウイルスの感染症法上の分類が2023年5月8日に季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行しました。関連ニュースをこちらでまとめてお読みいただけます。
-
【よく読まれている記事】
- 新型コロナウイルスは体内にいつまで残るのか
- 「コロナに決してかからない人」はいるのか?