アマゾン、PB疑惑「調査継続」米公聴会GAFAトップ詳報

2020/7/30 20:36
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ビデオ会議システムを通じて公聴会に参加したアマゾンのベゾスCEO=ロイター

ビデオ会議システムを通じて公聴会に参加したアマゾンのベゾスCEO=ロイター

米アマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)は米国時間29日、米議会下院司法委員会の公聴会でプライベートブランド(PB)商品の開発を巡る疑惑に「調査を続ける」と述べた。ネット通販で得た外部事業者のデータを自社製品の開発に役立てたと米紙が報じていた。議員の追及に対し、ベゾス氏は明確な回答を避けた。

PB疑惑は4月に米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が報じていた。同紙はアマゾンのPB商品の開発担当者らが、同社のネット通販サイトで扱う外部商品の販売データを不正に利用していたと指摘。事実であればアマゾンの社内規約に反する行為だ。

ベゾス氏はアマゾンが本社を置くワシントン州選出のプラミラ・ジャヤパル議員(民主党)の追及に、「非常に注意深く調査を続けている」と説明。「外部事業者の固有データを扱う際の社内規定を定めているが、その規定に違反したことがないと保証することはできない」と明言を避けた。

公聴会ではアマゾンが利用できるデータの種類も議論になった。アマゾンは複数社の販売データを集計したデータを自社商品の開発に生かすが、1社がシェアの大半を握る場合なら競合の状況が筒抜けになりかねない。ベゾス氏は公聴会で集計データの定義について「販売業者が1社超だ」と答えた。商品を2社しか作っていない場合でも集計データとみなすという見解を示した。

スタートアップの経営者らはアマゾンが彼らとのミーティングで得たデータをPB商品の開発に利用したとも指摘している。公聴会に出席した議員は「こうした主張が重要なのはアマゾンの市場への独占的な地位なしには起きないからだ」と追及した。

米調査会社のeマーケターによると、2019年時点でアマゾンは米国の電子商取引(EC)市場で4割近くのシェアを占めた。競争法に詳しい池田毅弁護士は「市場の優位性を生かして隣接する分野に支配力を広げるのは典型的な競争法違反だ」と指摘する。ベゾス氏は内部調査の結果を委員会に共有する方針を示しており、疑惑が事実であればアマゾンへの追及が激しさを増しそうだ。

公聴会で米アップルのティム・クックCEOは「我々は顧客と開発者(の獲得)ですさまじい競争がある」と強調し、独占との見方に反論した。割高と批判されているアプリ配信サービス「アップストア」の手数料についても冒頭発言要旨で「競合他社と同等かそれ以下だ」とコメントした。

アップルはスマートフォンのアプリ配信を外部に開放していない。iPhoneなどで使うソフトは自社サービス「アップストア」を通してのみダウンロードできる。同サービスはアプリ開発者から売り上げの30%、定期購読型のソフトで2年以降に15%を手数料として徴収している。

こうしたアプリ販売手法は欧州連合(EU)の欧州委員会も競争法違反の疑いがあるとして調査を始めると明らかにするなど、米国内だけでなく、世界的に批判が強まっている。

クック氏は「アップストア」について「以前のソフトウエアは小売店に手数料を払ってCDのような物理的なメディアで販売しなければならず、革命的な代替手段だった」と説明した。

自社アプリや一部の開発者が優遇されているのではとの質問に対し、「すべての開発者を同じに扱っている。オープンで透明性のあるルールがあり、厳格なプロセスを取り入れている」と否定した。

手数料については「84%のアプリが(無料のため)課されておらず、16%のアプリが手数料を払っている」と説明。「手数料は2008年から一度も上げていない」とし、独占的な地位を使って利益を上げているとの批判を否定した形だ。自社アプリについても「170万個以上あるアプリのうち、60しかない」と強調した。

アップルは冒頭発言要旨でも韓国サムスン電子、韓国LG電子、中国華為技術(ファーウェイ)、米グーグルなどとの競争を「fierce(すさまじい)」と表現し、スマートフォン市場を取り巻く環境を反論の材料とした。

同業他社も「アップストア」と同じ水準で手数料を徴収していることを念頭に、クック氏は「開発者はアプリをアンドロイド、ウィンドウズ、Xbox、プレイステーションにも出せる」と指摘した。

顧客のスマートフォンの選択の自由だけでなく、開発者がつくるソフトの取り合いでも他のOS(基本ソフト)やゲーム機と競争があり、独占には当たらないとした。

4社首脳は5時間半以上にわたって議員の質問に答えた(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルのアプリ)

4社首脳は5時間半以上にわたって議員の質問に答えた(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルのアプリ)

公聴会に出席したフェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOは2012年のインスタグラム買収が「ライバル潰しだった」とする議員らの指摘に対し、「買収時にはこれほどの成功は約束されていなかった」と反論。高いシェアを背景に競争を不当に妨げる意図はなかったと訴えた。

フェイスブックをめぐるやりとりで最大の焦点となったのが、12年のインスタグラム買収だ。

司法委員長のジェロルド・ナドラー議員が「競合つぶしで反トラスト法違反にあたる。(会社を)分割すべきではないか」と指摘。これに対しザッカーバーグCEOは「米連邦取引委員会(FTC)は買収に反対しないと全会一致で決めた」と反論した。

ザッカーバーグCEOは「買収時は多くの競合がおり、インスタの成功は保証されていなかった」と強調。「インフラ、宣伝やセキュリティーなどに多くを投じた」ことがインスタグラムの成功につながったと説明し、ライバル潰しを図ったとの指摘を全面否定した。

公聴会では各社が強大な力を持ちすぎているのではないか、という疑問が繰り返し投げかけられた。ザッカーバーグ氏は反論として「我々のサービスとビジネスモデルはどちらも激しい競争にさらされている」と発言。アップルのSMS(ショート・メッセージ・サービス)アプリ「iMessage」や中国系の動画投稿アプリ「TikTok」などフェイスブック以外にも勢いを伸ばしている人気アプリはあると説明した。

「我々が革新を続けなければ、今日、ここにいるすべての会社もいずれは誰かが取って代わられてしまう」とし、フェイスブック自身も競争にさらされていると訴えた。

公聴会のなかで、グーグルのスンダー・ピチャイCEOは他の米IT大手3社とともに、主力サービスでの市場での独占的地位について厳しい質問を受けた。

ピチャイ氏は主力の検索エンジンを巡り、グーグルが市場を独占しているという見方そのものに反論した。例えば、商品を検索する際には7割以上の消費者がアマゾンなどECサイトで検索を始めていると説明した。検索市場も分野ごとに分析する必要があるとし「旅行や不動産の分野でも競争は激しい」とも話した。

公聴会では、反トラスト法を管轄する小委員会のシシリン委員長が「なぜグーグルは誠実な企業からコンテンツを盗んでいるのか」とピチャイ氏に質問。ピチャイ氏が「そのような見方には同意できない」と強く反論する一幕もあった。

シシリン氏はグーグルが過去、米評価サイト「イェルプ」のサービス展開を圧迫したとも主張したが、ピチャイ氏は「私はつねにユーザーが求めるものを提供することに専念してきたし、グーグルの事業慣行は最高水準だ」と返し、これにも反論した。

ハイテク分野で中国との国家間の攻防が激しくなるなか、ピチャイ氏は公聴会で中国政府との関係も問われた。

議員から「中国共産党に国民監視のためのプラットフォームを提供しているのではないか」との質問がでたが、ピチャイ氏は「グーグルは米政府を支持しており、最近も米国防総省と、ペンタゴンのネットワークをサイバー攻撃から守るプロジェクト契約を交わしたばかりだ」と否定した。また「検索アプリやGメール、ユーチューブなど多くのサービスは提供していない」と中国での自社の事業展開が限られたものであると説明した。

ピチャイ氏はグーグルの米国経済への貢献を訴えた。米国内26州で7万5千人超を雇用し、デジタル化を支える研究開発費も10年前の10倍の水準になっていると説明した。

(渡辺直樹、堀田隆文、藤村広平、清水孝輔)

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