自治体が仕事マッチング コロナで悪化の雇用対策

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2020/8/2 2:00
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新型コロナウイルスの影響で職を失った人が新たな仕事に就けるよう、地方自治体が地元の求人情報を仲介する動きが広がっている。自治体のサイトに求人情報を掲載し、専用窓口で相談に応じている。雇用の悪化に歯止めをかけ、地域経済の停滞を防ぐ狙いだ。

新型コロナの就業専門相談窓口には求職者など多くの人が相談に訪れる(6月、札幌市)

新型コロナの就業専門相談窓口には求職者など多くの人が相談に訪れる(6月、札幌市)

「観光業と違う業務に不安もあっただろうが、よく働いてくれている」。札幌市内の運送会社は5月、コロナによる観光客減少で自宅待機が続いていたホテル勤務の男性を雇った。男性は現在、宅配の仕事をこなしている。人手不足の運送会社が男性を雇ったきっかけは、北海道が4月に開設した「北海道短期おしごと情報サイト」だ。

同サイトでは道内の130社以上が最長6カ月の求人情報を掲載している。コロナの影響などで仕事を失ったアルバイト学生や、勤務先の休業中に副業を探す人などの求職を見込んでおり、7月15日までに62人がサイトを通じて就職した。コロナの影響が深刻な北海道内では、札幌市が4月に「新型コロナ特別就業専門相談窓口」を設置し、これまでに延べ300件以上の相談を受け付けている。

兵庫県は7月、コロナの影響で一時的に雇用の維持が難しくなった企業と、人手不足の業種を結びつける仲介事業を始めた。専用のウェブサイトを立ち上げ、短期的に人手を求める事業主からの求人情報を掲載。雇用の維持に悩む企業や職探しをする個人がサイトを閲覧し、求人側に直接連絡できる。7月31日時点で5社の求人がある。

井戸敏三知事は「期間限定で人材を融通する『ワークシェア』に取り組む。実施する企業を掘り起こし、周知徹底を図りたい」と強調する。同県では一時的な人材の融通に伴う就業規則の変更といった各種の相談に、社会保険労務士が無料で応じる体制を整えた。

鳥取県は5月、コロナによる離職者らを雇用する企業などから求人を募る「ささえあい求人」制度を導入した。7月半ばまでに45社が約400人分の求人を出し、雇用につながった例も8件あった。県内では電子機器・自動車部品の工場がコロナ禍に伴う事業再編で100人超の希望退職を募るなどの動きがある。ハローワークの担当者は「感染拡大も見据え、求職者の支援を強化したい」と話す。

同県は県立ハローワーク4カ所にコロナ関係の特別相談窓口を設置。7月半ばまでに県立ハローワーク全体でコロナ関連の相談が120件以上寄せられている。集客が減った観光業や飲食業の従業員からの相談が目立つという。

市単位でもコロナ禍を受けた仕事仲介の動きが広がっている。青森県弘前市はコロナの影響で休職などを余儀なくされた市民と、人手不足に悩むリンゴなどの農家をマッチングする事業を始めた。休職者を雇用した農家には、1日3000円を上限に賃金を補助する。

7月14日までに62の農家などから求人が寄せられ、183人が畑作業をした。秋には大事な収穫作業が控えている。弘前市りんご課の前田修さんは「リンゴの安定生産には人手が必要で、一時的に仕事がなくなった人とウインウインの関係になれれば。生産現場を知ってもらう良い機会にもなっている」と話す。

島根県出雲市は6月1日から求人サイト「ジョブ・ナビIZUMO」に緊急求人情報の特設掲示板を立ち上げた。登録企業は当初60社弱だったが、現在は医療福祉関係や飲食業、建設業など約110社に増え、正社員や短期のアルバイトなどを募集している。求職者は企業に直接連絡を取って選考に臨む仕組みだ。

市内の有効求人倍率は昨年12月に2.03倍だったが、今年5月は1.14倍まで低下した。特設掲示板の効果について同市では「予定人員に達して求人を取り下げる企業もあり、ある程度の成果は出ている」(産業政策課)という。

労働政策を専門とする第一生命経済研究所の的場康子主席研究員は「仕事のマッチングは有効な対策の1つ。在籍出向など業界を超えた人材のやりとりも重要だ」と指摘する。同時に、再就職に向けた「学び直し」の後押しなど行政による幅広い支援の必要性にも触れ、「働き方改革により政府の支援メニューはそろっている。スピード感を持ってうまく活用していかなければならない」と話す。

■政府、雇用維持へ府省連携

新型コロナウイルスの影響による失業者らを支援するため、政府も雇用対策に力を入れている。6月には内閣府や厚生労働省などの副大臣による会議を発足させ、仕事が急減した産業から人手不足の産業に橋渡しするなど関係府省が連携して雇用維持に取り組む。

実動部隊となっているのが国の出先機関だ。関東経済産業局や埼玉労働局、埼玉県などは雇用の維持が難しい企業と人手不足の企業をつなぎ、一時的に従業員を出向させるなどの形で人材をシェアするマッチング事業を7月から始めた。

埼玉県内の企業に対するアンケートを通じて「人材余剰企業」と「人材不足企業」を掘り起こし、データベースに登録する。既に受け入れ企業の掲載が始まっており、出向後に希望が合致すれば転籍も可能とする企業もある。

感染拡大で求職者と企業の対面が難しくなる中、オンラインで「マッチング会」を開く動きも出ている。九州経済産業局は7月17日、解雇や雇い止めになった人を対象にビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」を使用したマッチング会を開催。九州の20社と求職者13人が参加した。

一方、農林水産省は農業部門の外国人技能実習生の受け入れが難しくなったことなどを踏まえ、他産業から代替の人材の確保を目指している。求職者と農業生産者らを結ぶポータルサイトを開設し、マッチングを支援する。観光庁もこの事業の周知を進めている。

(塩崎健太郎、小嶋誠治、山本公啓、山田伸哉、鉄村和之、辻征弥)

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