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量子計算機で産学連合 東大・みずほ・日立など協議会

ソフト開発に活路

米IBMとも連携して早期の応用をめざす(日本IBM提供)

次世代の高速計算機、量子コンピューターの実用化に向けて国内の取り組みが本格化する。30日、東京大学を主体とする産学の協議会が発足した。みずほフィナンシャルグループ日立製作所などが参加し、米IBMとも連携してソフトウエア開発などを加速する。米中主導で開発競争が激化する中、材料探索や金融の分野で早期の応用をめざす。

30日発足の「量子イノベーションイニシアティブ協議会」にはトヨタ自動車三菱UFJフィナンシャル・グループ、三菱ケミカル、JSR、東芝などを含め計9社が参加を予定する。研究開発の加速や事業化に向けて協力を深め、連携の枠組みを広げていく方針だ。オンラインの記者会見で東大の五神真総長は「社会実装を日本が先導するには産学官の連携が必要だ」と強調した。

企業が期待するのは量子計算機のビジネスへの応用だ。そのためには計算手法(アルゴリズム)やソフトの開発が必要になる。従来のコンピューター向けとは異なる専門知識が求められ、協議会にはこの分野に強い慶応義塾大学も加わる。参加企業は2021年にIBMが日本に導入する最先端の量子計算機などを活用して研究に取り組む。

量子計算機への関心が高まったのは19年だ。米グーグルがスーパーコンピューターより約15億倍速く計算できる性能を示し、世界に驚きを与えた。高度なシミュレーション(模擬実験)などを通じ、効果的なワクチンの短期間での開発、大容量で高速充電できるバッテリーの実現、金融商品の将来価値の予測などに役立つと期待される。

米グーグルの量子コンピューターとピチャイCEO(2019年10月、米カリフォルニア州サンタバーバラ)=同社提供

量子計算機の本格的な実用化には20年かかるとされるが、一部の分野では数年内に利用が始まる可能性がある。特に材料開発などで早期の導入が期待され、JSRは半導体やディスプレー材料など幅広い素材への活用をめざす。三菱ケミカルは次世代電池の「リチウム空気電池」などを対象にノウハウを蓄える。

現在、量子計算機関連の研究を主導するのは米中だ。米国は特許出願や論文の数でリードし、中国が猛追する。特にハードウエアの開発ではグーグルやIBM、中国のアリババ集団などが圧倒的な存在感を放つ。

30日発足の協議会ではハードの研究も連携の対象とするが、資金力が豊富な米中を相手に日本が真っ向勝負で闘うのは容易ではない。このため、独自の戦略で勝機を探る国内企業も多い。

NECはカナダのDウエーブ・システムズと提携し、特定の問題に狙いを定めた特化型の量子計算機を開発する。富士通や日立、東芝は既存のコンピューターを応用した「疑似量子計算機」の導入を進めつつある。

ソフトの開発はハードに比べると投資負担は少ない。日本は物理や化学の基礎的な研究は得意で、材料開発の競争力も高い。これらの強みを発揮できれば、産業応用で先行できる可能性がある。

もっとも、応用に力を入れるのは海外勢も同じだ。IBMは16年にクラウドで量子計算機を利用できるサービスを開始し、外部の企業などと組んで活用法の発掘を進めてきた。同社の連携先は独ダイムラーや米エクソンモービル、米JPモルガン・チェースなど100を超え、各社とも早期のビジネス利用を狙う。

量子計算機向けのアルゴリズムやソフトの開発競争は今後、激化する見通しだ。国内ではスタートアップ企業のQunaSys(キュナシス、東京・文京)も、20社以上の企業と材料開発などの分野で連携に乗り出した。米ザパタ・コンピューティングやカナダの1Qビットなど、海外でも新興企業が台頭する。

米中の対立などを背景に、先端技術の重要性は世界的に高まっている。量子計算機の導入や開発をどう進めるかは、日本の競争力を左右する。

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