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英政府、ワクチン2億5千万回分確保 感染拡大に備え

(更新)

【ロンドン=佐竹実】英政府は29日までに、新型コロナウイルスのワクチンを2億5千万回分確保した。感染拡大で多くの国民が複数回接種すると想定し、人口の4倍近い量をおさえた。どのワクチンが有効か証明されていないため、開発元が異なる4タイプを手元におくことで有効なワクチン確保に努める方針だ。

英政府は29日、英グラクソ・スミスクライン(GSK)と仏サノフィが開発するワクチンを6千万回分確保したと発表した。有効性が確認された場合、2021年夏にも医療従事者や健康面でのリスクが高い人などに優先的に接種する。

ほかに英アストラゼネカと英オックスフォード大が開発するワクチンを1億回分、仏バルネバから6千万回分、米ファイザーと独ビオンテックから3千万回分を確保済みだ。アストラゼネカのワクチンは臨床試験(治験)を経て早ければ9月にも供給が始まる予定だ。

現在治験が進む24のワクチンの中でも、アストラゼネカのワクチンは初期段階で強い免疫反応が確認された。ただ、実際にどのワクチンが有効なのかはまだ分からない。シャーマ英ビジネス相は29日「多様な候補を早期に確保することで、有効なワクチンを見つける機会が増える」と述べた。

英政府がワクチン確保を急ぐのは、ある程度落ち着きを見せた感染が再び広がる兆候があるためでもある。スペインではここ1週間で感染者が急増し、フランスは渡航を控えるよう呼びかけた。

欧州各国もワクチンや治療薬の確保に動く。欧州連合(EU)の欧州委員会は29日、米製薬大手ギリアド・サイエンシズから抗ウイルス薬「レムデシビル」3万人分を購入する契約を結んだと発表した。購入額は6300万ユーロ(約78億円)で、加盟国と英国に8月上旬から供給する。レムデシビルは日本を含め世界で新型コロナ治療薬として承認されており、EUは7月3日に承認した。

一般的にワクチンの開発には5~10年ほどかかるが、各社は1年以内という異例のスピードで新型コロナワクチンを完成させる構えだ。副作用の懸念があり、予防効果が数カ月しか続かない可能性も指摘されている。通常8割以上とされるワクチンの有効性についても、世界保健機関(WHO)は今回開発の早さを優先して50%を目安にした。有効性が50%の場合、半分の人は接種後でも発症することを意味する。

英政府ワクチンタスクフォース会長のケイト・ビンハム氏は「もしワクチンを手にしたとしても、ウイルスの感染を防ぐのではなく、症状を軽くするワクチンである可能性を覚悟しなければならない」と指摘し、過度にワクチンに期待することに警鐘を鳴らしている。

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