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札幌がポートランドに?再開発ラッシュの未来観

2030年度の北海道新幹線延伸に向けて熱を帯びる札幌市内の再開発にはモデルがある。内陸にありながら交通の要衝として発展し、豊かな自然に地ビールの香りが溶け込む文化都市――。理想は「全米で最も住みたい都市」の常連、米西海岸のポートランド(オレゴン州)だ。

「今後の札幌のまちづくりにも色々とヒントがある。できることから生かしていきたい」。札幌市長の秋元克広(64)はかつて、ポートランドをこう評した。ポートランドは札幌にとって初めての姉妹都市。付き合いは60年以上に及ぶ。

開拓者が街を開き、市街地は碁盤の目状に広がる。市中心部を大きな川が流れる地理的な構造も似ている。札幌ではポートランドの先例を生かしたまちづくりが進む。

ポートランドでは路上に店舗を出して街に活気を生んでいる。札幌でも19年4月から市中心部の狸小路商店街内の路上でトレーラーハウスやキッチンカーを使った飲食・物販を開始。札幌駅南口の札幌西武跡地で19年秋まで営業した飲食店やイベントスペース「コバルドオリ」もこの流れだ。

職場や住宅、商業施設などが1つの建物に混在する「ミクストユース」をはじめ、街づくりで参考にすべき点は多い。飲食店の売り上げが伸びるなど経済との相乗効果も札幌が目指す路線とシンクロしている。

新たな街づくりの扇の要となるのは「サツエキ」。中心部のグランドデザインを描くうえで、札幌駅の機能強化は避けて通れない。中心部を「すすきの」や「大通公園西」など6つのエリアに分ける市の計画でも、最も力点を置くのが札幌駅を拠点とするエリアだ。

JR北海道などは新幹線駅に隣接する地区に道内最高層のビルを建てる予定

「スクランブルスクエア(東京・渋谷)と同規模を目指したい」(JR北海道社長の島田修=62)。市とJR北海道は19年、新駅に隣接する北5西1、西2地区に道内一高い(230メートル)ビルを建設する構想を披露した。低層階は商業施設、中層階はオフィス、高層階にホテルが入居。47階建てで道内一高いJRタワー(173メートル)を抜く。

市中心部に散らばるバス停留所を集約し、都市間バスや路線バスが乗り入れる交通の要にもなる。20年度上期をメドに基本計画をまとめ、22年度に都市計画を決める。着工は23年度。29年秋の完成を目指している。

30年度に新函館北斗―札幌間の北海道新幹線が開業すれば、新駅は現在の駅の東側にできる。「西高東低」の続いてきたサツエキ前のパワーバランスに地殻変動が起きるのは確実だ。市の都心まちづくり推進室は新駅設置で現札幌駅を利用する人のうち、少なくとも1割が東側にできる新駅方面に流れるとみる。

現在のJRタワー(中央)より高いビルの建設構想が浮上している(札幌駅前)

市が新たな再開発で創成川の東側「創成川イースト」地区を重視する。駅前よりも地価が安くリノベーションしやすい建物が残る創成川イーストに人の流れを波及させれば、用地が尽きつつある創成川の西側との相乗効果に期待できる。

もちろん、西側も黙ってはいない。ヨドバシホールディングスや東急などは駅南側の旧西武跡地、「北4西3」地区にホテルやオフィス、商業施設が入る高層ビルを計画する。再開発を担う不動産事業者は「なんとしてもJRのタワーより先に完成し、テナント誘致にこぎつけたい」と息巻く。競争は熾烈だ。

第一生命は「北3西4」の同社ビル建て替えを20年度から始める。北海道電力は本店移転に伴い、周辺施設と一体で再開発を始める。新型コロナウイルス禍でも、札幌市内の再開発機運に衰えは見られない。

ここ数年、創成川イーストはじわりとその色を変化させてきた。殺風景だったビル街には「おしゃれなカフェや飲食店が増えている印象がある」(札幌市在住の女性)。若者が足を向け、商業施設が増えて暮らし安くなればファミリー層もひきつける。西にも東にも絶えず人が流れ、活気あふれる街へ。10年後だけでなく20年、30年後を見据えた息の長い都市計画が動き始めた。

(塩崎健太郎、久貝翔子)

姉妹都市60年、市電延伸構想でも注目
 札幌市と米ポートランド市の姉妹都市の交流は1959年から続く。66年にポートランドから寄贈された「ベンソンの水飲み」が大通公園にあり市民に親しまれている。豊平川にかかる幌平橋にある「ポートランド広場」の彫刻家像をはじめ、交流がうかがえるモニュメントが街中にある。
 再開発をめぐって札幌市は、市内交通でポートランドが持つ知見に注目する。現在は環状に走る市電の延伸構想を札幌市は温めているからだ。
 札幌市電は15年の環状化とインバウンドブームで利用者数も回復基調にあり、貴重な市民の足となっている。市はかねて要望の多い札幌駅だけでなく、創成イーストの「苗穂」方面、北のベッドタウン「桑園」方面の3方向を検討しており、次世代型路面電車(LRT)の発達したポートランドに学ぶ点は多い。
 16年にポートランドを訪れた市長の秋元は小規模な工房や再開発が進むウオーターフロント地区などを視察し、ポートランドの独自の都市開発組織である「ポートランド開発局」も訪問。街中の「にぎわいづくり」や環境と経済を両立させる再開発の手法を精力的に見て歩いた。
 中でも感銘を受けたのが、交通インフラを取り巻く料金収入の仕組み。視察後の記者会見で秋元は「ポートランドに学びながら合意形成に向けての方法を札幌市として考えていきたい」と意気込んでいた。

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