東エレクの4~6月、純利益77%増で過去最高

半導体製造装置の東京エレクトロンが28日発表した2020年4~6月期連結決算は、純利益が564億円と前年同期比77%増えた。同期間として過去最高となった。次世代通信規格「5G」の本格化やリモートワークの広がりによるサーバー向けの需要の増加で、取引先の大手半導体メーカーが設備投資を拡大した。
売上高は45%増の3148億円。売上高、純利益ともに市場予想平均のQUICKコンセンサス(28日時点、5社)を上回った。
新型コロナウイルスの影響でオンラインでの経済活動が広がり、データ通信量が拡大して半導体需要が増えている。メモリー半導体大手の韓国サムスン電子やSKハイニックスなどは4~6月期に利益を大きく伸ばしている。中国のメモリー半導体も投資を積極的に増やしており、東エレクのメモリー向け新規半導体装置の売上高は2倍の1131億円になった。

サーバー向けの需要増に加えて、5Gや人工知能(AI)の本格的な普及が追い風となり、演算処理に使われるロジック半導体向けの製造装置も伸びている。米インテルや台湾積体電路製造(TSMC)などの業績も伸びており、東エレクのロジック向け新規装置売上高は41%増の1087億円となった。
装置の保守点検、改造や部品交換を行う「フィールドソリューション事業」は20%増の837億円だった。新型コロナで渡航制限が出ているが、遠隔でサービスを継続するなどして順調に売り上げを拡大している。
笹川謙経理部長は同日の決算会見で「(メモリー半導体の顧客は)DRAMの投資モメンタムが弱くなっている」としたものの、「将来的には引き続き成長する」と述べた。新型コロナの感染拡大を考慮しても20年の半導体前工程の製造装置市場が過去最高の規模となるとの見方を維持した。
21年3月期通期の業績見通しは6月に公表した予想を据え置き、売上高は前期比14%増の1兆2800億円、純利益は11%増の2050億円を見込む。河合利樹社長は同日の決算説明会で「IoT、5Gが(需要を)強力に推し進める流れは変わっていない」と指摘。新型コロナの影響で顧客が一部の投資を遅らせたことや、需要がさらに盛り上がることもあり、「来年は(製造装置市場の)ビッグイヤー」になるとの見方を示した。
もっとも株価は上値の重い展開が続く。東エレク株は10日に上場来高値を更新したが、インテルが次世代半導体の投入を遅らせることなどが悪材料視され、5%安い水準で推移している。
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