金・ビットコインに資金流入 法定通貨への不信背景に - 日本経済新聞
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金・ビットコインに資金流入 法定通貨への不信背景に

貴金属の金と暗号資産(仮想通貨)のビットコインがともに急騰している。金は年初来で3割、ビットコインは5割上昇した。両者に共通するのは通貨に似た性質を持つが、特定の発行国を持たない「無国籍」である点だ。両者の上昇は、米ドルをはじめとする法定通貨への不信感を映す。

金の国際指標の一つであるロンドン市場の現物の金の取引価格は日本時間の28日午前、一時1トロイオンス1980ドルまで上昇。前日に付けた過去最高値をさらに更新し、2000ドルの大台に迫った。

代表的な暗号資産(仮想通貨)であるビットコインの上昇にも弾みがついている。米調査会社のコインデスクによれば、26日に約2カ月ぶりに1ビットコイン=1万ドルの大台を回復し、日本時間の28日午前には一時1万1000ドルを超えた。

金の価値の源泉は、世界各地の鉱山で採掘しても、わずかな量しか産出されないという希少性にある。ビットコインは「デジタルゴールド」とも呼ばれ、プログラムで発行上限を決めることで金と同様に希少性を維持しているとされる。

金やビットコインが買われる背景にあるのが、各国政府の信用力が裏付けとなっている法定通貨への不信感だ。その法定通貨の中でも「基軸」であるはずの米ドル。米インターコンチネンタル取引所(ICE)が算出し、ドルの総合的な強さを示す「ドル指数」は27日に一時、93台半ばまで低下し、2年ぶりの低水準となった。直近の金価格とドル指数の動きは逆相関が明確となっている。

米国では新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、経済の停滞が長引くとの懸念が広がる。積極的な金融緩和や財政出動が打ち出されるものの、金融市場では政策が奏功して米国経済が力強く回復するとの期待は高まっていない。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「低金利環境の長期化がドル資産の魅力を低下させ、ドルから金などへの資金シフトを促している」と指摘する。

政策の大盤振る舞いが続く一方で、経済の回復期待が高まりにくいという状況は米国に限らない。

国際決済銀行(BIS)が算出する60カ国・地域の貿易量で加重平均して通貨の相対的な強さをみる名目実効レート(直近20日時点)。主要通貨の年初来の騰落率を見ると新興国通貨は2割程度下がっており、下落が鮮明だ。新興国ではコロナ禍で膨らんだ財政赤字が通貨安のリスクを高めており、先進国以上に金やビットコインへの資金シフトが起きる可能性がある。

ただ、金もビットコインも、巨額の資金が入ってくると値動きが荒くなりやすい面がある。仮想通貨市場で象徴的な動きとなったのは、7月中旬に登場したイーサリアムを土台にしたトークン「yearn.finance(YFI)」だ。当初の取引価格は30ドル強だったが、1週間で4600ドル近くまで急騰した後、3000ドル近辺に急落した。

金も28日の1日の値幅が73ドル(約4%)に達するなど、高値圏での乱高下が激しくなっている。ともに法定通貨と違って金利がつかないため、保有しているだけでは利得はない。いったん下げ基調に転じれば、投資マネーの逃げ足は速い。

(浜美佐、フィンテックエディター 関口慶太)

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