キヤノン、コロナで事務機打撃 初の四半期赤字
デジカメ苦戦、買収事業も稼ぎ頭遠く

2020/7/28 22:29 (2020/7/29 7:44更新)
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医療機器事業などの収益拡大を急ぐ(写真は18年4月の展示会)

医療機器事業などの収益拡大を急ぐ(写真は18年4月の展示会)

キヤノンの業績が悪化している。28日に発表した2020年4~6月期の連結最終損益は88億円の赤字(米国会計基準、前年同期は345億円の黒字)だった。四半期の赤字は初めて。新型コロナウイルスでデジタルカメラと事務機器が苦戦し、医療機器などで補えなかった。日本を代表する"精密の雄"が成長戦略の見直しを迫られている。

「これまでの戦略の延長線上では時代のニーズに取り残される」。キヤノンの田中稔三副社長最高財務責任者(CFO)は同日の電話会見で危機感をあらわにした。20年12月期通期は売上高で前期比14%減の3兆800億円、純利益で66%減の430億円になる見通しだ。

年間の1株当たり配当予想は未定としたが、20年1~6月期の配当(中間配当)は40円と前年同期の半分に減らす。年間でも減配となれば、プラザ合意後の円高で収益が悪化した1987年12月期以来、33年ぶり。高配当株の代表といわれた時代もあったキヤノンとしては異例の事態となる。

業績が悪化しているのは、主力の事務機器がペーパーレス化で低迷し、デジカメもスマホの台頭で苦戦しているためだ。

カメラが祖業のキヤノンは1967年に事務機器事業に本格参入した。「右手にカメラ、左手に事務機」を経営スローガンに掲げ、屋台骨として経営を支えた。その後、円高などで財務が悪化したキヤノンを立て直したのが、95年に社長になった御手洗冨士夫氏(現在は会長兼社長最高経営責任者=CEO)だった。

パソコンなど不採算事業から撤退し、在庫を極力持たず、資金を活用するキャッシュフロー経営に取り組んだ。07年12月期には純利益が4883億円と過去最高となり、日本の製造業を代表する企業になった。事務機器は技術的に新規参入が難しいとされ、消耗品で稼ぐモデルも注目された。

ただ10年代に入ると、事務機器はペーパーレス化、デジカメはスマホ普及で市場が縮小していく。この構造的な問題にコロナによる需要減が追い打ちをかけた。20年4~6月期は複合機などのオフィス事業が在宅勤務の影響で営業赤字となり、デジカメなどのイメージングシステム事業も9割強の減益になった。

屋台骨だった2つの事業は今後も厳しい。調査会社のテクノ・システム・リサーチによると、デジカメの20年の世界出荷台数は約840万台と19年比で約4割減る。大森鉄男シニアアナリストは「デジカメはプロカメラマンしか買わなくなる」と話す。米調査会社IDCは、20年のA3レーザー複合機・複写機の出荷台数が約18%減少すると予測する。

キヤノンもこうした需要減を見すえ、対策を打ってきた。10年にオランダの商業印刷会社オセを約1000億円、15年に監視カメラのアクシスコミュニケーションズ(スウェーデン)を約3300億円で買収。有機EL装置や医療機器を含む新規4事業は前期で売上高全体の4分の1を占め、一定の成果は出ている。

ただ際だった利益貢献でデジカメや事務機をカバーしているとは言いにくい。16年に6600億円超で東芝から買収した医療機器は新型コロナでコンピューター断層撮影装置(CT)などが伸びたが、商談の遅れも響いた。今期のヘルスケア事業は売上高、利益ともに横ばいにとどまる。

ある証券アナリストは「中間配当を減らして、キャッシュの配分を見直そうとする姿勢は評価できる」と話す。今期は販売減に伴う構造改革費用を150億円計上し、追加的な合理化策も検討する。田中CFOは「(人員や拠点などで)余分なものは外部への売却といったアクションも進めなくてはならない」と話す。これまでにない逆境下のキヤノンをどう復活させるか。5月から社長を兼務する御手洗氏の手腕が問われている。

(橋本剛志、江口良輔)

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