教員志望の学生奮闘 受験生向け高校紹介ビデオ

新型コロナウイルスの影響で学習や受験の環境に支障が出ている子どもたちを支えようと、教育を学ぶ大学生らがウェブでの情報発信に奮闘している。5月に緊急事態宣言が解除された後もボランティアで動画や教材の作成を続け、保護者や学校現場からも歓迎されている。
「どんな部活動がありますか」。6月、一般社団法人「子どもの成長と環境を考える会」メンバーの大学生ら4人が都立西高校(東京・杉並)を訪れ、ビデオカメラを回して校内を撮影した。インタビューに応じた萩原聡校長は「中学生に学校を知らせる機会ができてありがたい」と喜んだ。
新型コロナの影響で中学生向けの学校見学会や文化祭を中止する高校が相次ぐ。同会も2006年から、小中学生や保護者を対象に関東圏で開いてきた教育相談会が延期となった。
そこで、メンバーの教員志望の大学生らが動画投稿サイト「ユーチューブ」に「受験応援さんだるちゃんねる」を4月に立ち上げた。志望校選びに悩む中学生に見てもらうのが狙いで、公立と私立の計33高校分の動画63本を投稿した。
各校約2時間かけて取材した映像に、テロップや音楽を付けて2分以内の映像3~4本に収める。スマートフォンなどで1校につき数時間かけて編集する。初年度の納入金や先生の趣味など単刀直入な問いかけが好評で、視聴数は2万回を超えた。
高校からの依頼も増え、高校入試が本格化する11月ごろまでに都内100校を撮影する目標という。都立西高での活動に撮影助手として参加した明治大4年の小林賢弥さんは高校の数学教師を目指している。「教育実習も延期になり残念だった。教員になって今回のボランティア経験を生かしたい」と話す。
オンライン上で障害を持つ子どもの学習を支える取り組みもある。津田塾大(東京都小平市)で障害児の学びを研究する学生ら約20人が小中学生向けの学習支援サイト「まなキキ」を4月に開き、情報更新を続ける。
サイト名は「新型コロナによる休校で自宅学習が長引き、学びの『危機』に直面する子どもが増えるのでは」との問題意識から付けた。広がりを見せるオンライン学習が、障害のある子どもに配慮ある内容とは限らないからだ。
学生ボランティアらが国語、算数・数学、理科、社会、英語の各科目の教材として使えるサイトを探して使い勝手を確認し、リンク先を紹介。字幕の有無や文字の読み上げソフトが使えるかなども指摘する。学習に困難を感じる子が意欲を持ちやすいよう学習方法の提案もした。
障害者の意見を聞き、サイト内の文章の校正を重ねた。同大学2年の川口実鈴さんは「オンライン教材には誰もが使える工夫が必要だと分かった」と話す。
保護者らから「障害児向けのサイトは少なく助かる」との声が寄せられている。サイト作りを発案した同大インクルーシブ教育支援室の柴田邦臣准教授は「小中学生に年齢や感覚が近い学生ならではの内容になった。子どもが自発的に学ぶきっかけになれば」と期待している。

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