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ソニーのEV試作車、日米欧で公道実験 SUVも視野

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ソニーは2020年度中に電気自動車(EV)の試作車の公道走行の実験に乗り出す。27日に試作車「VISION-S(ビジョンエス)」を日本で初めて公開した。今後は多目的スポーツ車(SUV)など複数台を開発し、日米欧での走行実験を視野に入れる。競合に後れを取る車載向け画像センサーの販売拡大に向け、実験を通じたデータ収集を急ぐ。

東京都港区にあるソニー本社。社員が車寄せでスマートフォンの画面上を指で横になぞると、近くにあった銀色のフォルムのEVは、正面中央から両サイドに向かって直線上に光りながら解錠しドアノブ部分が現れた。試作車はデジタル技術と車の融合を体現しているようだった。運転手の操作でゆっくりと車寄せを一周するデモも見せた。

記者が運転席に乗り込むと、目の前には横一列にパネルが並ぶ。二本指でつまんで地図の大きさを変えたり、横にスライドして好きな音楽や映画を選んで再生したりできる。まるで大きなスマホを操作しているような感覚に包まれた。

ソニーEV試作車は車内のパネルで地図を見たり映画・音楽を楽しんだりできる

ソニーはEVの開発で車載向けセンサーの事業拡大を狙う。車体をひと目見ただけではわかりにくいが、試作車は33個のセンサーを搭載。画像センサーや複数の対象物の距離を測定できる「ToFセンサー」など複数のセンサーを組み合わせ、霧や逆光、夜間の雨などの環境でも周囲を正確に認識した画像を車内で表示できる。

ソニーはCMOS(相補性金属酸化膜半導体)センサーで世界シェア5割の最大手だ。大半はスマホカメラ向けで、車載や産業用途など向けの販売増が課題になっている。スマホのカメラのように画像を読み取るのではなく、センサーとして活用する「センシング」向けの売上高は、19年度はセンサー全体の4%にとどまっていたが、25年度までに30%を目指している。

車載向けでは、米オン・セミコンダクターや米オムニビジョン・テクノロジーズが先行している。調査会社のテクノ・システム・リサーチによると、ソニーは車載向けで8.6%のシェア(数量ベース)にとどまる。45%で首位のオン・セミとの差は大きい。

ソニーは既に複数台のEVの開発に着手した。SUVなど、地域や用途を変えて実験することで、ソニーが自動車業界に提案する要素を増やす狙いがある。シティグループ証券の江沢厚太氏は「自動運転のレベルが上がるのに伴い、ソニーの車載向けのセンサーのシェアが高まる可能性はある」と話す。

ソニーは車体の製造をオーストリアのマグナ・シュタイヤーに委託し、ほかの車部品大手からも協力を得た。ソニーでこの事業を担当する川西泉執行役員は「ソニー1社では作れないので、サプライヤーを含めた協業の可能性を探っていきたい」と話す。自動車メーカーとの連携については詳細の言及を避けたが「いくつか話はもらっている」と示唆した。

ソニーは開発したEVについて現時点では量産しない方針を示している。自動車を販売するには安全性に対する高い基準と責任が求められる。画像センサーなどを自動車メーカーに供給したいソニーにとって競合になりうるリスクもある。川西氏は「技術を蓄積している段階なので、無責任なことはできない」と説明する。

取材に応じるソニーの川西泉執行役員

それでもソニーが自動車を開発するのは、主力事業である画像センサーや、映画・音楽といったエンターテインメント事業にとって、自動運転車が無視できない存在になってきた背景がある。現在開発中の2台目はセンサーを現行の33個から増やす方針だ。川西氏は「公道を走ってみて初めてわかることは多い」と話す。自ら車両をつくってデータを集め、自動車メーカーに売り込む。

完全自動運転になれば運転手も含め、車内で自由な時間が生まれる。ビジョンエスには360度のあらゆる方向から音楽を聴ける立体音響技術を搭載した。実際に聞いてみると、ライブ会場で演奏者に囲まれているような感覚を味わえた。自社の技術やコンテンツを使った新たなビジネスチャンスとみている。

自動車産業は100年に1度の変革期を迎えているとされる。電機メーカーのソニーが自動運転EV車を開発するのは、車がデジタルでアップデートするスマホのような存在になる象徴とも言える。川西氏は「変革はクルマのIT(情報技術)化だ。(自動車部品メーカーではなく)何のしがらみもないソニーは最適解を出せる」と強調する。

(清水孝輔)

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