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小型ロケット、空中発射めざす 中小など実証試験

ウエーブ山口

つり下げたロケットの発射方向をコントロールする姿勢制御装置を実証した

宇宙産業への進出を目指して山口県内の中小企業が組織した「やまぐち空中発射プロジェクト」が小型ロケットを空中から発射するシステムの実証試験を実施した。今後、ロケットを高度約30キロの上空に運ぶ気球を開発。成層圏の気球から、地上よりも低コストで小型人工衛星を打ち上げる構想の実現に取り組む。

同プロジェクトは精密部品製造のアクシス(山口県下関市)、ひびき精機(同)、伸和精工(同県宇部市)の3社とRyuTeC(東京・荒川)が中心になって組織。衛星や打ち上げなどを研究開発する宇宙システム開発利用推進機構や千葉工業大学も参加している。2018年度から山口県の補助金を得て開発を進めてきた。

実証試験は山口県宇部市内の採石場で、大型クレーンに小型ロケット発射システムをつり下げて実施した。空中につり下げたロケットを目標の方向に向けて安定させる姿勢制御装置と、無線点火装置の機能や機械的条件を確認するのが目的だ。発射の衝撃の影響などを加速度計のデータや映像から解析し、改良する。

今後は小型ロケットと搭載する100キログラム級の小型衛星を並行して迅速に開発するモデルの構築に取り組む。地球観測や通信に利用する目的で多数の小型衛星を地球周回軌道に投入する「コンステレーション」の打ち上げ受注を想定している。

さらに、ロケットをつり下げて高度30キロメートルの成層圏へ運ぶ直径100メートル程度の大型気球の設計・開発を急ぐ。内部の浮揚ガスの噴射により、到達高度を調節したり、風による回転を止めて姿勢を制御したりするシステムの開発に取り組む。

プロジェクトの代表企業であるアクシスの古田陽介社長は「まだ1合目にも達していないが、3~5年で形にしたい」と話す。課題は開発資金の確保だ。気球の制御装置など本格的な開発はこれからの分野も多い。

20年度までの3年間の開発費用は約7000万円で、うち4000万円強が山口県の補助金。山口県の補助金は20年度までのため、21年度以降も開発を継続するには、投資家からの資金集めや資金力のある企業の参加などが必要になる。それには今回実証した姿勢制御装置や気球からの発射構想がどの程度評価されるかがカギになる。

プロジェクトの中心のアクシス、ひびき精機、伸和精工の3社は板金や切削など精密金属加工の技術を持ち、半導体製造装置部品などを製造。航空宇宙分野の参入に必要な認証規格も取得し、18、19年に米ユタ州立大の小型衛星カンファレンスに製品を出展するなど営業活動を強化している。

衛星需要増、市場参入狙う


 やまぐち空中発射プロジェクトが取り組むのは小型衛星打ち上げ市場への参入に向けた技術開発だ。急増する民間衛星の打ち上げ需要を狙い、世界各国の企業が低コストでの打ち上げ実現を競っている。低コストを実現する手段としては、米スペースXのようなロケットの再使用やロケットの小型化が代表的だが、空中発射もそのひとつだ。
 上空から発射すれば、地上発射に比べて重力と大気による影響が小さくなり、打ち上げに必要な燃料が圧倒的に少なくて済む。米ヴァージン・オービットは大型航空機の翼の下にロケットを取り付け、上空から発射するシステムの開発を進めている。
 航空機を使う場合、発射高度は約10キロメートルなのに対し、やまぐちプロジェクトが目指す気球からの発射高度は約30キロメートル。プロジェクトに参加している宇宙システム開発利用推進機構の持田則彦総括主任研究員は「航空機よりも発射コストは低く、気象条件も安定し、ロケットの振動も小さくなる」と利点を指摘する。
 気球からの発射はスペインや英国、米国などのスタートアップ企業も開発に取り組んでいる。世界的な競争の中で、地方の中小企業が衛星の打ち上げ段階までこぎ着けられるか注目される。
(谷川健三)

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