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コロナで留学中断、急ピッチで就活 進路変更の学生も

就活探偵団

海外留学組にとって就活は例年課題だが、今年は想定外に早く向き合っている(写真はコロナ禍以前の留学経験者が大学職員に相談する様子)

新型コロナウイルスが海外で学ぶ日本人留学生を直撃した。感染防止のために帰国を余儀なくされ、突如始まった就活に悪戦苦闘している。語学力と国際感覚を身に付けた留学経験者は企業からみれば垂ぜんの的のはずだ。それなのに日本人留学生が苦しむのは日本独特の採用慣習に問題があると言えそうだ。

「予定が狂ってしまった」。九州地方の国立大学4年の女子学生は悔しさをにじませる。2020年3月に欧州に留学に飛び立ったのもつかの間、新型コロナの影響でたった2週間で帰国を余儀なくされたのだ。

もともとは大手商社志望だった。留学を決めたのもそのためだ。3年生の夏に大手商社のインターンシップ(就業体験)に参加した際、参加者の中にいた留学経験者がキラキラ輝いて見えた。「私も海外で経験を積んで、選考で留学したことをアピールしようと思った」

しかしシナリオはあっけなく崩れた。帰国した3月は、一般学生がすでに会社研究やオンライン説明会の参加などで動き出していた。「完全に出遅れている」。焦りは募り、自動車販売会社や不動産会社など受けられるものは片っ端から受けた。6月下旬に地方の商社に滑り込み、就活を終えた。

やはり結果には納得はしていない。新型コロナが収束したら、ワーキングホリデーなどの制度を使って海外に行き、スキルアップして大手の商社に転職するのを夢見ている。

新型コロナの影響で外出制限や都市封鎖(ロックダウン)に遭い予定が狂った(日本人留学生が撮影したフランスの大学構内の様子)

海外での就職を希望していた人も進路変更を余儀なくされた。英国の大学に在籍しつつフランスの大学に留学中だった男性は、パリにある国際機関でインターンシップに参加する予定が、新型コロナで立ち消えになった。

海外の国際機関への就職を考えていたが、新型コロナの収束が見えないため難しいと判断。今は帰国し、日本のコンサルタント企業や国家公務員に照準を切り替えた。慣れない日本での就活に戸惑いは隠せないが「個人の欠陥ではない。話せば採用担当者も理解してくれる」と自分に言い聞かせる。

300人弱が帰国

新型コロナの影響で今春、多くの留学生がプログラムの途中でやむを得ず帰国した。都内のある私大では、海外留学中だった300人弱の学生が帰国したという。入学時から留学のための準備を入念に進め、就活との両立を進めようとしていた学生も多い。

大手就職情報会社のディスコ(東京・文京)が日本から海外に留学した人を対象に20年4月にまとめた調査によると、新型コロナによる就活への影響について「とても影響がある」と答えた人が59%、「やや影響がある」と答えた人が34%で、合わせて9割以上が何らかの影響があると認識している。

一方で早期帰国を前向きに捉えた人もいる。上智大4年の男子学生は19年8月から米国ルイジアナ州にある大学に留学していた。本来であれば20年6~7月に帰国予定で、就活を本格化させるのはそれからだと考えていた。

しかし新型コロナの影響を受け、予定より早く3月下旬に帰国した。帰国後も留学先大学の授業を国内でオンライン受講していたこともあり、就活に本腰を入れ始めたのは5月半ばだった。

それでも「日本にいることで時差を気にすることなく動け、情報も格段に入りやすくなった」という。オンライン説明会やセミナーに積極的に参加。6月下旬に環境関連企業の内定を獲得した。

活動が出遅れた学生を救済しようと企業側も動く。伊藤忠商事は6月選考に参加できなかった学生を対象とした夏選考を7月に実施した。研究職に就く予定であった理系院生や教育実習などに参加した教員志望の学生などに交じって「留学先から急きょ帰国した学生もたくさん受けてくれた」という。

ソニーも秋採用を初めて実施する。通常の春選考のフローと同様、書類選考と複数回の面接を経て内定を出す。主に留学生を対象に21年10月入社も想定しているという。

ただ、こうした採用ルートを複数設ける企業は少ない。大半の企業の採用活動は依然として政府ルールである「3月説明会解禁、6月の選考解禁」に合わせて実施する。この時期に就活に取り組めないと学生は選考ルートに乗ることが難しくなってしまうのが今の就活制度の現状だ。

前述の私大によると、例年海外に交換留学した学生は6月ごろに帰国し、7割の学生が帰国後に急ピッチで就活を進める。残りの3割の学生は留年して、就活も1年遅らせるという。

「留学経験者は海外での文化や風習を理解し尊重するなど一般学生が持たない感覚を備える」(採用コンサルタントの谷出正直氏)。経済のグローバル化が進む中、こうした国際感覚と語学力を兼ね備えた留学経験者を求める企業は多い。

そのため、留学など幅広い経験をしてきた人を採用しやすくしようと、経団連は19年4月に時期にかかわらずに採用活動を実施する「通年採用」を推進していくことで大学側と合意した。今後の企業の対応に注目が集まる。

国内留学も手

新型コロナの収束が見えない中、これから留学しようと考えていた人は諦めモードだ。

明治大3年の男子学生は大学を休学し、20年4月中旬から約1年間、オーストラリアに英語の語学留学を予定していた。

目的は語学力を高めるため。英語検定試験「TOEIC」の高スコアをエントリーの条件にする企業も多く「英語力を付けてから就活に臨もうとしていた」と話す。

しかし感染拡大を受け、渡航1カ月前にオーストラリアから渡航制限が出た。「準備はすべて済んでいたのに、今後どうすればいいのだろう」とため息をついた。

留学をした場合、23年卒を考えていたが、留学が中止となり22年卒に切り替えた。今は仕事で英語力がそれほど求められていない企業を中心に、15社ほどのインターンにエントリーしている。

明治大就職キャリア支援センターの青木博氏は「『新たなチャレンジ経験が何かできないか』と考え、留学希望者には国内インターンや地方留学を勧めている」という。

収束が見えない新型コロナウイルス。学生が自由に学び、安心して就活できる環境が戻るのはいつになるのだろうか。

(企業報道部 鈴木洋介、仲井成志)

[日経産業新聞 2020年7月29日付]

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