楽天、UQ、ワイモバ… 格安スマホ、料金お得なのは
佐野正弘のモバイル最前線

「携帯電話の料金水準は諸外国と比べて依然として高い水準にあり、大幅な引き下げの余地がある」。菅義偉官房長官の6月30日の発言が、波紋を呼んでいる。その根拠は総務省が同日に公表した「電気通信サービスに係る内外価格差調査」で、世界主要6都市の中で東京の携帯電話料金が高い水準にあるとの結果が出たためだ。

菅長官が携帯電話料金の値下げに言及したのは2018年8月以来2度目。その際は「携帯電話の料金は4割引き下げる余地がある」と発言。それ以降、総務省の主導で携帯電話料金引き下げに向けた議論が進められ、結果として19年10月に改正電気通信事業法が施行された。
この法改正により、通信料と端末代を明確に分離した「分離プラン」の義務化や、スマートフォンの値引き上限を2万円に設定、いわゆる「2年縛り」の違約金を従来の10分の1の水準に引き下げなど、携帯電話業界の商習慣を大きく変える規制がなされることとなった。
さらに4月には、第4の携帯電話事業者として楽天モバイルが参入。携帯大手のサブブランドが対抗プランを打ち出すなど、ブランドにこだわらなければ低価格でスマホを利用できる環境はかなり充実した。低価格サービスの内容を改めてまとめてみよう。
エリア限定だが、月額2980円で使い放題
やはり注目は4月から商用サービスを開始した楽天モバイルだ。月額2980円(税別、以下同)で提供する「Rakuten UN-LIMIT」は、楽天モバイルが自社で構築したエリアの中であれば高速データ通信が使い放題、専用アプリ「Rakuten Link」を利用すれば国内の音声通話も使い放題になるなど、お得度合いはかなり高い。
ただし楽天モバイルがカバーしているエリアはまだ東名阪など都市部の一部に限られる。それ以外のエリアや地下などはKDDIのネットワークとのローミング(相互乗り入れ)でカバーしているため、使い放題の対象外となってしまう。しかしながらKDDIのエリア内であっても最大5ギガバイト(ギガは10億、GB)までの高速データ通信が可能で、使い切っても最大1Mビット/秒(bps)で通信できることから、YouTubeを標準画質で視聴するくらいはできる。
なお楽天モバイルは、Rakuten UN-LIMITの契約者先着300万人に対し1年間無料で利用できるキャンペーンを実施している。6月末で100万契約を突破したが、それでもまだ余裕があるのでお試し感覚で契約してみるのも悪くないだろう。

楽天対抗を打ち出したサブブランド
「新規参入の楽天モバイルはまだ不安」というのであれば、携帯大手のネットワーク品質を低価格で利用できるサブブランドの利用を検討したい。サブブランドとしてはソフトバンクの「ワイモバイル」と、KDDIが別会社のUQコミュニケーションズから今秋の事業承継を予定している「UQモバイル」がある。両ブランドともに楽天モバイルの本格参入を受けて対抗プランを打ち出している。
そのうちUQモバイルが6月1日に提供開始した「スマホプランR」は、月額2980円で10GBの高速データ通信が可能、通信量が10GBを超過した後も最大1Mbpsでの通信が可能であるなど、Rakuten UN-LIMITを強く意識したプランとなっている。データ通信が使い放題になるわけではないが、場所を選ぶことなくどこでも10GBの通信量が利用でき、しかも余った通信量を翌月に繰り越すことも可能なので、楽天モバイルのエリア外に住んでいる人はこちらの方が魅力的だろう。
ただしスマホプランRは、音声通話が30秒20円の従量制となる。通話を頻繁にするなら、通話し放題となる「国内通話かけ放題」(月額1700円)や「国内通話10分かけ放題」(月額700円)などのオプションを一緒に契約する必要があるので注意しよう。

ワイモバイルも、従来提供していた料金プランのうち、月額3680円の「スマホベーシックプランM」と、月額4680円の「スマホベーシックプランR」の内容を改定。スマホベーシックプランMの通信量が9GBから10GBに増量された(スマホベーシックプランRは14GBで据え置き)ほか、どちらのプランも通信量超過後の通信速度が最大128kbpsから1Mbpsに高速化された。

このうちRakuten UN-LIMITやスマホプランRの対抗プランとなるのはスマホベーシックプランMとなる。料金がやや高いように見えるが、スマホベーシックプランMは1回10分以内の国内無料通話が標準で付いているので、実はスマホプランRに国内通話10分かけ放題をプラスしたのと同じ金額なのだ。
加えてスマホベーシックプランMには「Yahoo!プレミアム」が無料で利用できるなどの特典が用意されている。通話の回数が多く、「Yahoo! Japan」「PayPay」などヤフー関連のサービスを利用しているなら、こちらを選んだ方がお得といえる。
日本通信は完全通話定額を実現
より低価格を求めるならMVNO(仮想移動体通信事業者)のサービスも選択肢に入ってくる。MVNOは携帯大手から回線を借りてサービスを提供しているため、昼間の通信速度が低下しやすい、サポートが弱いなどのデメリットはあるものの、利用できるエリアは大手と変わらないし、楽天モバイルやサブブランドよりもさらに安価なプランも多い。
中でも注目はMVNOの老舗、日本通信が7月15日から始めた「合理的かけほプラン」。これはNTTドコモの回線を用いたサービスで、音声通話が完全かけ放題、最大3GBの高速データ通信を月額2480円で提供する。同社がNTTドコモに通話回線のレンタル料の値下げを求めていた問題で、総務省がドコモに値下げを求める裁定を公表し、レンタル料が下がったため、割安な新料金プランを導入できた。

これまで5~10分の通話定額サービスを提供するMVNOはいくつか存在したが、利用するには専用アプリを使って電話をかける必要があり、通話品質が落ちる、緊急通報用電話がかけられないなどの弱点があった。これに比べて日本通信の合理的かけほプランは、通常の音声通話と同じ方法、同じ品質で何時間話しても追加料金がかからないことから、通話主体に利用している人には非常にお得なプランといえる。
またデータ通信容量は月当たり3GBだが、それを超過した場合でも1GB当たり250円で容量を追加できる。トータルで10GB利用した場合でも4230円で済む計算だ。携帯大手のメインブランドの場合、1GBの追加に1000円前後かかることを考えれば、かなり安価に利用できることがわかるだろう。
確かに携帯大手はショップによる手厚いサポートやサービスが充実しているし、最新のiPhoneなどスマホのラインアップが充実している。だが最近は、ほとんどの手続きがオンラインや電話で済むし、低価格で高機能・高性能のスマホも増えている。スマホの使い方にある程度慣れている人なら大手のメインブランドにこだわる必要性は薄らいでいる。


前述のように19年10月の法改正で2年縛りの違約金は1000円以下に引き下げられ、違約金をあまり気にすることなく乗り換えができるようになった。それだけに「スマホの料金が高い」と日頃思っている人は、乗り換えを検討すべきだろう。
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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