野党再編 識者に聞く
立憲民主党と国民民主党の合流協議は両党が一度解散した後でつくる新党の名称などを巡って意見の対立が続いている。野党再編はどうあるべきか。2人の有識者に聞いた。
井手英策・慶応大教授「理念的な現実主義、必要」

野党はどうしたら政治への信頼を取り戻せるかを正面から議論しないといけない。今の再編議論をみる限り、そうした方向に向かっているとは思えない。
有権者が政治に求めるのは安定感だ。だが合流が実現するか見通せない状況はこれと逆行する。衆院選が近づくと議論を始めるやり方もまた有権者の不信感を強める。
野党共闘の本質は「共闘をしないと小選挙区で勝てない」という点だが、それは有権者に見透かされている。これまで旧民主党などは自民党との対比で主張を度々変えてきた。新しい理念をしっかりと掲げ「もう一度チャンスを」と素直に言うべきだろう。
自民党は極めて現実的である一方、共産党は理念的な政党だ。有権者が求めているのはその間にある「理念的な現実主義」といえる。中庸の理念を掲げながら現実主義でやっていく強力な野党を求めている。
立憲民主、国民民主両党とも合意形成に向けた努力が乏しい。立民の枝野幸男代表は政権構想を示し、国民民主の玉木雄一郎代表は消費税率の5%減税を主張する。
いずれも党内協議を経ないで出てきた。このようなやり方で有権者に支持されると思う方がおかしい。もっと地方議員を巻き込んだ議論をする必要がある。そうでないとせっかく理念や政策をつくっても選挙時の訴えにいかされない。
木内登英・野村総研エグゼクティブ・エコノミスト「消費税減税、旗印にならず」

野党再編の動きはマーケットでは注目されていないと言っていい。新型コロナウイルスへの対応を巡って安倍政権への批判は強まっているが、自民党への支持はそこまで落ちていない。政権交代への期待が高まっているわけではない。
野党は選挙で共闘することができても政策が違うのでは有権者から強い支持は得られない。自民党と旧民主党のような二大政党的な流れが続いていれば、政権批判が高まっている今、政権交代の機運があったかもしれない。
旧民主党は離合集散を繰り返し混乱を極めてしまった。そのなかで政策や政治理念がはっきりしなくなった。
野党が支持される素地はあると思う。コロナ対策で政権へ不安を抱く有権者は潜在的にかなりの数がいるだろう。
安全保障や憲法などの政策論を深め、共通化できるところは歩み寄る。これが信頼できる勢力の持ち直しに重要ではないか。政策は違うが、とりあえず党の名前を統一するというのでは支持は得られない。
国民民主党の玉木雄一郎代表が唱える消費税減税は野党の共通政策としての旗印にはならない。新型コロナに対応した一時的な政策にすぎず、悪い意味でのポピュリズムだ。社会保障の財源はどうするのか。将来の社会保障制度の持続性や不安を除く政策を考えることが重要となる。
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