避難所で段ボールベッド、感染防止にも 設置遅れ課題

2020/7/25 11:28
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段ボールベッドが設置された避難所(11日、熊本県人吉市)

段ボールベッドが設置された避難所(11日、熊本県人吉市)

豪雨被害にあった九州の避難所で段ボールベッドの活用が進んでいる。床に直接横たわるよりも体への負担やほこりを吸い込むリスクが少なく、新型コロナウイルスの感染対策にも有効とされる。避難所の環境改善に一役買っているが、自治体や避難者への周知不足や設置の遅れが課題となっている。

「腰痛があって雑魚寝は不安だったが、毎日ぐっすり眠れている」。熊本県八代市の自宅が浸水し、夫と市総合体育館の避難所に身を寄せる女性(70)は20日、疲れた様子ながらも笑顔を見せた。2台の段ボールベッドにマットレスを敷いて寝起きする生活だが「想像以上に快適」という。

床に布団や毛布を敷いて雑魚寝する光景は過去の災害で多く見られたが、床に付着した飛沫に触れるリスクや、窮屈な姿勢を続けることで起きる「エコノミークラス症候群」の危険性が指摘されていた。段ボールベッドは一定のスペースを確保できるため体を動かしやすく、床面からも30センチほどの高さを保てる。

段ボールベッドは東日本大震災を契機に考案された。2013年に佐賀県が全国段ボール工業組合連合会の地域組織と全国初の協定を結び、災害時に地元企業から提供される仕組みができた。内閣府が簡易ベッドの活用を盛り込んだ避難所運営指針を公表した16年を境に導入が広がり、7月10日時点で56自治体が協定を締結している。

被災地から依頼を受けた同連合会が現場に近い加盟企業に製造を要請し、企業は通常業務を止めてベッド用の段ボールを製造することもある。防災や医療の専門家でつくる「避難所・避難生活学会」によると、16年の熊本地震で約5300床、18年の西日本豪雨で約4000床が提供された。

熊本県は今回の豪雨で、政府のプッシュ型支援分を含め県内10市町村向けに約2500台のベッドを調達。15日時点で避難する約2100人分を確保できたという。

だが、県健康福祉政策課の担当者は「発災直後に発注しても、製造、輸送、設営という過程を経るため、利用できるまでに一定の時間がかかってしまう」と振り返る。

同県人吉市には7日にベッドが届いたが、設営作業の人手が限られ、市内7カ所の避難所で約900台が使えるようになったのは発災から1週間以上が過ぎた12日だった。

過去にはベッドの存在が被災した自治体側に浸透しておらず、活用につながらなかったケースもある。同学会によると、19年8月に発生した九州北部の大雨では、国が佐賀県内の自治体に300台を送ったが、使われずに倉庫で保管されていた。「自治体側が段ボールベッドの効果や運用方法を認識しておらず、支援を断られる例も多い」(同学会の担当者)

47都道府県のうち協定を結んでいないのは三重や大分など5県。豪雨災害や南海トラフ巨大地震などへの備えは急務となっており、同学会は20年度末までに全都道府県・政令市での協定締結を支援している。

同学会理事を務める榛沢和彦・新潟大特任教授は「段ボールベッドは新型コロナ対策に有効で、一日でも早い設置が欠かせない」と指摘。防災協定による提供には一定の時間がかかるとした上で「自治体は協定を結ぶだけでなく、備蓄倉庫を整備して災害前から準備しておく必要がある」と話している。

■簡易ベッド、欧米は浸透
 欧米では避難所に簡易ベッドを設置するのが一般的だ。榛沢和彦・新潟大特任教授によると、英国で第2次世界大戦中に地下鉄構内で避難生活を過ごした人は、エコノミークラス症候群や肺炎による死亡リスクが高まったことなどから、「床で寝るのは危険」との認識が定着し、早くから対策が進んできた。
 高潮やハリケーンなどの災害が多いイタリアや米国には各地に公的な備蓄倉庫があり、発災から48時間以内に避難所に簡易ベッドを設置できる。2009年に発生したイタリア中部地震では、被災地のラクイラに発災当日に仮設トイレが届き、翌日にはテントや簡易ベッド、枕などのセットが設置されたという。
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