米、中国共産党を標的に 強権路線の修正迫る
体制間競争が本格化へ
【ワシントン=永沢毅】ポンペオ米国務長官は23日の演説で、対中包囲網の構築を通じて中国に強権路線の修正を迫る方針を鮮明にした。トランプ政権には中国共産党の体制そのものに問題の根源があるとの認識が強まりつつある。「新冷戦」とも目される米中対立は新たな段階に入る。
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ポンペオ氏はトランプ政権の対中強硬派の代表格だ。その演説には、複数の点で米国の対中政策が節目にあると印象づける仕掛けがある。その1つは、その舞台として1972年に電撃訪中して対中外交を切り開いたニクソン元大統領ゆかりの博物館を選んだことだ。
「中国が変わらなければ世界は安全にはならない」「(中国に門戸を開いたことで)フランケンシュタインを作ってしまったのではないかと心配している」――。演説でもニクソン氏の過去の発言などを引用した。
ニクソン政権で始まった米国のいわゆる「関与政策」に終止符を打とうとするトランプ政権の方針が浮き彫りになった。欧州訪問から時間をおかず、博物館のある西部カリフォルニア州までポンペオ氏がわざわざ足を運んだのはそのためだ。

もう一つは旧ソ連への言及の多さだ。レーガン元大統領が「信頼せよ、しかし確かめよ」の原則にそって冷戦下でソ連に向き合ったと指摘。「中国に関していうなら『信頼するな、そして確かめよ』になる」との見解を打ち出した。
「中国共産党はソ連と同じ過ちを繰り返している」とも述べ、その強権主義が潜在的な同盟国を遠ざけているとの認識を示した。冷戦での勝利を意識し、新冷戦とも言われる中国との新たな体制間競争に打ち勝つ決意を示す機会にしたいとの意図がうかがえる。
ポンペオ氏は「世界の自由国家は、より創造的かつ断固とした方法で中国共産党の態度を変えさせなくてはならない」と宣言した。これまでも中国共産党の体制を問題視する発言を繰り返してきたが、これだけの舞台装置を整えて強権路線の修正を要求したのは初めてだ。トランプ政権としての本気度を表す。
ただ、対中包囲網の構築は道半ばだ。次世代通信規格「5G」からの中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)排除で英国が米国と同調し、フランスも足並みをそろえるとの報道もある。
ポンペオ氏は演説で「ある北大西洋条約機構(NATO)同盟国は、中国政府が市場へのアクセスを制限することを恐れている」と不満をあらわにした。中国と経済関係の深いドイツやイタリアを念頭においている可能性がある。
明言はしないが、ポンペオ氏は中国の体制転換を視野に入れているフシがある。演説の場には1989年の中国の天安門事件で民主化運動の学生リーダーらを招き、「自由を愛する中国の国民を元気づけなければいけない」と力説したのがその証左だ。
「そんなことは言っていない」。ポンペオ氏はFOXニュースのインタビューで、体制転換をめざしているように聞こえるとの質問をこうかわした。憲法改正で国家主席の任期を撤廃し、長期支配をめざす習近平(シー・ジンピン)氏がその行動を改める兆しはみえない。
在外公館の閉鎖を巡る応酬も続いている。収束のきっかけをつかめない米中対立はチキンレースの様相を呈している。
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