安楽死「希望」、患者の支援不足も 総合的ケアが必要

2020/7/23 21:18
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医師が薬を投与するなどして患者の死期を早める「積極的安楽死」は、日本では患者が希望しても嘱託殺人罪などに問われる。終末期ではなく回復の見込みのない患者が死を望むことがあるが、精神的・社会的援助が不足しているケースも多く、支援体制の整備が求められている。

日本では、終末期の患者に対しては患者や家族の意思を踏まえ、延命治療をしないことは容認されている。

厚生労働省は2018年3月に「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」を改訂。最終的に延命治療の不開始や中止を決める際は「医療・ケアチームによって、医学的妥当性と適切性を基に慎重に判断すべきである」として複数による判断を求めた。

ただ終末期でも患者や家族の意思は家庭環境などが影響し、変化する。そのためガイドラインでは「精神的・社会的な援助も含めた総合的な医療・ケアが必要」と強調する。さらに「生命を短縮させる意図をもつ積極的安楽死は対象としない」と明記している。

これまでの安楽死は患者に接してきた主治医が関わることが多かった。今回は遠隔地の医師がSNSを通じて患者と知り合って実施したとされる。患者への精神的なサポートや生活環境の改善などの試みができていない可能性がある。

必ずしも終末期ではないが、回復の見込みのない患者が死を望むことはある。オランダや米国の一部の州などでは患者の安楽死を認めている。

日本医師会の「医師の職業倫理指針」(16年10月改訂)では、ALS(筋萎縮性側索硬化症)を例示し、終末期ではない患者の延命治療の中止について「容認する意見がある一方、かなり強い反対意見もあり、国民的な議論が必要とされる」と認めていない。

医療倫理に詳しい慶応大学の前田正一教授は「薬物を投与して患者を死亡させる積極的安楽死は、耐えがたい肉体的苦痛などがない限り、日本では法的にも倫理的にも許容されていない。まして診療せずSNSを通じて依頼を受けたとすればありえない」と指摘する。

(社会保障エディター 前村聡)

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