最低賃金 事実上の据え置き 労使対立で「目安」断念

2020/7/22 23:14
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東京都内で開かれた中央最低賃金審議会=22日午後

東京都内で開かれた中央最低賃金審議会=22日午後

厚生労働省の中央最低賃金審議会(厚労相の諮問機関)の小委員会は22日、2020年度は最低賃金の目安を示すことを断念した。新型コロナウイルスによる景気低迷で労使の主張が激しく対立し、双方が合意できる水準を見いだせなかった。学識者らによる公益委員は19年度の全国平均901円を維持することが適当との見解を示した。

小委員会が目安を提示できなかったのはリーマン・ショックがあった09年度以来になる。各都道府県は例年、小委員会が示した目安を踏まえ、8月下旬までに各地の最低賃金を定める。20年度の各都道府県の審議について小委は地域の雇用情勢などを踏まえて自主的に対応するよう求めた。

小委員会は連合や日本商工会議所など労使双方の代表と、有識者による公益委員の3者で構成しているが、協議は難航を極めた。20日午後から大詰めの協議に入ったが、労使の主張の隔たりが大きく一度とりやめた。21日夕から始まった第5回会合は夜通しで議論したものの合意には至らず、22日朝に再び中断。再開後の午後にようやく着地点をみつけた。

異例の長時間審議になったのは、新型コロナによる経済危機のなかで、最低賃金の改定に対する労使の意見が真っ向から対立したためだ。最低賃金は近年、毎年3%の引き上げが続いてきたが、新型コロナが議論の構図を一変させた。

これまで人手不足などを背景に最低賃金の引き上げに同意してきた経営側は、コロナで景気が低迷するなか、賃上げよりも雇用維持を重視すべきだとして目安の凍結を主張した。新型コロナ関連の解雇・雇い止めは3万5千人を超える見込みで、経営環境の厳しさが続く中で最低賃金を引き上げれば倒産が増えると訴えた。

これに対し、労働側は所得の改善で消費を底上げする経済の好循環につなげるために賃上げを継続するよう要求した。感染拡大後にもかかわらず、中小企業は今年春に賃金を平均1.2%アップしていた。「最低賃金だけ凍結するのはおかしい」と訴えた。

例年、公益委員は労使双方の主張を踏まえ、3回目の協議にとりまとめ案を提示する。今年は隔たりが大きすぎたため、5回目でようやく示された。

労働側が最後までこだわったのが地域間格差の是正だ。19年度は最高額(東京都)と最低額(岩手県や鹿児島など)の差は223円に達する。協議開始時は全国一律の引き上げを求めていたが、最後は最も水準の低い分類にあたる県だけでも1円以上あげられないかと訴えた。

一部の県は直近の景気状況を踏まえても、都市部との差を縮小するために引き上げに意欲を示しているところがある。こうした地域を後押ししたいという考えが連合にはあった。最後は公益委員がまとめる文書に20年度の地方の議論について「地域間格差の縮小を求める意見も勘案しつつ、適切に審議が行われることを希望する」と盛り込み、連合は矛を収めた。

第2次安倍政権は最低賃金を大きく引き上げる方針を打ち出し、労使の議論が追随していくのがここ数年の流れだった。今年は「官製賃上げ」の流れが途絶えたことが、労使がなかなか歩み寄らない一因になった可能性もある。

海外では新型コロナの感染拡大後でも最低賃金の引き上げを決めた国もある。ドイツは21年1月に20年の9.35ユーロから1.6%上げ、22年7月には11.8%引き上げる。

日本商工会議所の三村明夫会頭は同日夜、「中小・小規模事業者の実態を反映した適切な結論で評価する」とのコメントを出した。連合の冨田珠代総合局長は「引き上げが必要な地域は労働条件の底上げに資する審議を期待している」と述べた。

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