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イチからわかる「商品先物」 総合取引が27日スタート

株から商品まで一体で

商品先物取引の「総合取引所」が27日に発足する。商品先物の取引活性化に向けた転換点になる可能性がある。取引の仕組みや盛衰の歴史をイチから学ぼう。

ダイナミックな値動き魅力

商品先物取引の大部分はデリバティブ(金融派生商品)として大阪取引所に集約する

株価指数先物から商品先物まで一体的に取引ができる総合取引所の設立に向け、7月27日に東京商品取引所から大阪取引所に貴金属やゴム、農産物の取引が移管される。日本取引所グループ(JPX)の下で進む改革により、日本の商品先物市場は転換点を迎えた。多彩な要因が絡み合いダイナミックな値動きをする商品先物は魅力的であると同時に「ハイリスク・ハイリターン」の側面を持つ。取引の仕組みや盛衰の歴史をひもとく。

商品先物では、将来売買する商品の金額と数量を前もって決め、お金の支払いと商品の受け渡しを後で行う。「限月」制度により取引可能な期間は区切られており、取引の最終日である「納会日」までに反対売買で取引を手じまいすれば現物の受け渡しは伴わない。将来の値上がりを予想するなら、買いから始め、値上がりしたところで売ると利益が出る。反対に値下がりするとみれば、先に売る約束をして、下がったところで買えば利益が出る。

証拠金取引、高い資金効率の一方でリスクも

総合取引所が27日に発足する

取引を始める際は商品取引会社を窓口にして口座を開き、担保となる証拠金を預ける。商品先物は外国為替証拠金(FX)取引と比べて、必要な証拠金に対する取引可能額が大きく、資金効率がいい投資といえる。読みが当たると大きな利益が得られるが、外せば痛手も大きい。「追い証」と呼ばれる追加の証拠金を払う必要が生じたり、元本を割り込んだりする可能性もある。ハイリスク・ハイリターンである点には注意が必要だ。

商品の価格は国際情勢や気候変化などによって絶えず変動する。原油を例に考えてみよう。2020年初に原油相場は急騰した。きっかけは米軍によるイラン革命防衛隊司令官の殺害事件だ。両国の関係が悪化し、原油の主要な生産地である中東からの供給に支障が出るとの不安が高まった。その後は新型コロナウイルスの感染拡大により燃料需要が大幅に減るとの見立てから相場は下落した。国内外の様々なニュースから商品の需給構造に変化がおきると想定されるとき、価格は変動する。

日本の商品先物は2000年代前半から縮小の一途をたどる。東商取の売買高(前身の東京工業品取引所を含む)は2003年をピークに減少し、19年は1901万7381枚(枚は最小取引単位)と16年間で8割弱も減った。

縮小の主因は取引の勧誘規制の強化にある。仲介業者による積極的な電話勧誘などで投資経験の乏しい個人が損失を被るといったトラブルが社会問題になったのを受け、05年に1度断った人への再勧誘が禁じられた。11年には投資を望んでいない人への勧誘自体ができなくなった。楽天証券経済研究所の吉田哲コモディティアナリストは「個人投資家の流入が細ることで流動性が縮小し、実需家や投機筋も参入しにくくなる悪循環になった」とみる。取引の利便性が高まる総合取引所の設立は日本の商品先物の風向きを変えるのか。市場の注目が集まっている。

株と口座一本化で利便性向上

「証券系の金融フローを取り込む土台ができる」。日本取引所グループ(JPX)の清田瞭最高経営責任者(CEO)は総合取引所の意義をこう強調する。大阪取引所(OSE)によると、新たに10社弱の証券会社が商品先物の取り扱いを検討しているとみられ、投資の間口が広がりそうだ。

市場移管により、金などの商品先物を株価指数先物などと同じ口座で取引できるようになる。OSEは金融商品取引法、東商取は商品先物取引法と根拠法が異なり、従来は資金を別々に管理する必要があった。口座を一本化できれば、値動きが異なる商品と株を機動的に売買できるなど利便性が増す。

ネット証券が新規参入、低コストの売買後押し

商品先物のインターネット取引を手掛ける楽天証券は、市場移管に合わせて株価指数先物と一体で運用する口座メニューを導入。標準の取引手数料も250円(税別)と従来より70円超引き下げる。商品先物会社もサンワード貿易(東京・新宿)がすでにネット手数料を引き下げた。今後ネット証券の新規参入が進めば、低コストで売買できる機会も広がる。

注意が必要なのは、原油やガソリンなどのエネルギー先物はOSEに移管されず、当面は東商取に残る点だ。東商取は2019年9月に、法人向け専用の電力先物市場を上場させた。「総合エネルギー市場」として燃料と電力を一体で取引できる環境を整える狙いだ。

このため金と原油の先物をともに売買すると、これまで1つでよかった口座が2つ必要になる。どちらかの商品で損失が出て追加の証拠金を積む際、原則として新たに入金するか、もう一方の口座から資金を移動させる手間が生じる。

この点については救済措置を講じた。商品先物で金商法と商先法の口座が分かれる場合、投資家と契約を結べば商取会社が口座を一体で管理し、それぞれの証拠金を融通して損益を相殺できるようにした。だが株価指数先物と原油は一体管理ができない。不便は解消されず、楽天証券は東商取の原油先物の取り扱いをやめた。

日本のデリバティブ市場の底上げは急務だ。JPXの19年のデリバティブ取引高は3.6億枚と、世界の取引所ランキングで17位にとどまる。市場活性化には取引の利便性を高める取り組みが引き続き重要になる。

JPXは早ければ22年秋にも、株価指数先物や商品先物で祝日取引を導入する方針。土日と元日を除くすべての休業日を対象とし、取引日数を欧米並みに引き上げる。金や原油は、日本の祝日中に相場が大きく動くことも多い。ネット売買を手掛ける多くの商取会社は祝日取引に前向きで、売買機会拡大への期待が高まりそうだ。

小野嘉伸、桝田大暉が担当した。

[日経ヴェリタス2020年7月26日付]

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