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当歳は苦戦も底堅い需要 競走馬セレクトセール

2020/7/25 3:00
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「セレクトセール2020」で3億8000万円で落札された当歳馬の「ヒルダズパッションの2020」(手前)=共同

「セレクトセール2020」で3億8000万円で落札された当歳馬の「ヒルダズパッションの2020」(手前)=共同

新型コロナ禍で経済が凍りつく中、馬は売れるのか? 7月13、14の両日、北海道苫小牧市で行われた競走馬のせり市場、セレクトセール(日本競走馬協会主催)を巡る関心事は、一点に尽きていた。結果は、「需要の底堅さを示した」と評価すべきだろう。

2日間の売却総額は史上2位の187億6100万円(税抜き、以下同)。205億1600万円を記録した前年から8.6%減ったものの、コロナ禍以外にも悪材料があった点を考えれば健闘だった。ただ、主役級の種牡馬が姿を消し、当歳市場の足を引っ張った。不況の長期化と併せ、今後の不安要因となる。

■ディープ産駒、最後の大商い

例年通り、初日に1歳、2日目に当歳が上場された。今年の最大の特徴は、ディープインパクトとキングカメハメハという国内種牡馬「2トップ」の産駒が、当歳部門で姿を消した点。ディープが昨年7月30日に、キングカメハメハは10日後の8月9日に相次いで死んだ。ディープは首の不調で3月から交配を中止し、当歳産駒は数頭。体調の悪かったキングカメハメハは種付けをしなかったため、今回は初日のディープ産駒13頭とキングカメハメハ産駒10頭が、最後の上場となった。

予想通り、両馬の産駒は初日の市場をリードした。ディープ産駒は1頭が売買不成立だったが、残る12頭の売却総額が24億9700万円。平均価格が2億円を超え、価格上位6位までを独占した。

キングカメハメハ産駒は、社台グループ以外の生産馬2頭が売れなかったが、残る8頭の売却総額は5億6300万円。平均価格は7000万円を超えた。象徴的だったのが、最後に上場された「マルシアーノの2019」(牝)。母マルシアーノは10、11年の高松宮記念を連覇したキンシャサノキセキの全妹で、血統背景から活発な競り合いとなり、価格は1億7千万円に達した。

5億1000万円で落札されたディープインパクト産駒の1歳馬「シーヴの2019」=共同

5億1000万円で落札されたディープインパクト産駒の1歳馬「シーヴの2019」=共同

ディープ産駒では、母シーヴ(米国産)の牡馬が5億1000万円で全体の最高価格だった。異父姉に16年の米G1、ケンタッキーオークスを勝ったキャスリンソフィアがいる。落札者は「ショウナン」の冠馬名で知られる国本哲秀氏。2位は母がフォエヴァーダーリング(米国産)の牡馬で、異父姉モンファボリ(父フランケル)は6月20日に函館で新馬戦をレコード勝ちした。

落札した「ダノックス」は、野田順弘氏(オービック会長)の競走馬管理法人で、今回は9頭に11億4500万円を投じた。夫人の野田みづき氏も7億6400万円で9頭を購入しており、合計19億900万円と売却総額の10.2%を占めた。

■1歳部門、2年連続の100億円超え

種牡馬「2トップ」の最後の大商いに支えられて、初日の売却総額は104億2800万円と2年連続の100億円超えとなり、減少幅も2.8%止まり。1億円以上の高額落札馬も18頭で昨年の21頭に迫る水準だった。昨年の1歳部門最高は3億6000万円で今年より低かった半面、2億円以上が9頭に上った。今年は2億円以上が5頭で、価格面では上位2頭が突出していた。

昨年、1歳と当歳の両部門で最高価格馬を落札した「アドマイヤ」の冠馬名の近藤利一氏が、昨年11月に死去。高額取引の常連とあって、影響が懸念されていたが、昨年の近藤氏の落札頭数が少なかったためか、売却額全体への影響は限定的だった。

今年の購入側の主役だった野田氏のオービックは、テレワーク関連銘柄として注目を集め、1年前は1万2000円前後だった同社の株価は、13日の終値が1万9430円に。一方、コロナ禍を意識してか、前年と別名義で高額馬を購入する例もあった。10億5400万円で9頭を落札した「麻布商事」と、4頭に5億4600万円を投じた「エフレーシング」は、実は新顔ではなかったという。時期が時期で、目立ちたくない心理が働いたようだ。

■混沌の当歳、「昔の名前」が浮上

「2トップ」不在の当歳部門では、ハーツクライ産駒が人気を集めた。産駒のサリオスが春の皐月賞、日本ダービーで連続2着と活躍したことも効いた。価格首位は3億8000万円の「ヒルダズパッションの2020」。米国にわたって芝とダートのG1を制したヨシダ(牡6歳)の全弟で、「ホウオウ」の冠の小笹芳央氏(リンクアンドモチベーション会長)が落札した。

この馬を筆頭に3位までは全てハーツクライ産駒。2トップのうち、1歳上のキングカメハメハと同世代で、今年19歳のハーツクライの人気は、大種牡馬サンデーサイレンスの死後、1歳上のブライアンズタイム産駒の値が上がった例を想起させる。ポスト2トップが混沌としている表れといえる。

種牡馬「2トップ」不在の状況で人気を集めるハーツクライ

種牡馬「2トップ」不在の状況で人気を集めるハーツクライ

当歳馬はデビューが早くても2年後。先の見えない状況に加えて、信頼性の高い種牡馬もいないのでは、積極的には買いづらい。その点で、当歳市場の苦戦は予想されていて、実際、売却総額は83億3300万円と前年を14.8%下回り、1歳部門と明暗が分かれた。

6月6日に始まった今年の2歳戦では、ドゥラメンテとモーリスの産駒が注目を集めているが、ドゥラメンテは3頭が新馬勝ちしたものの、モーリス産駒はまだ1勝と出遅れ気味。また、今年の種付け料国内トップ(2000万円)のロードカナロアの産駒が、現3歳世代で重賞0勝という点も響いた。

今回の市場では、感染拡大防止のために入場者は事前に登録した馬主と同伴者に絞り、入場時は検温やマスク着用などのルールが設定された。6月までの市場の大半は中止かオンライン開催への転換に追い込まれており、初日の取引終了後に記者会見した吉田勝己・ノーザンファーム代表は「やれればいいと思っていた。結果は期待していなかった」と話したが、市場全体では底堅さを見せた。

背景には、競馬施行が無観客のハンディを克服している点がある。5月後半以降は中央の売り上げが回復軌道に乗り、7月20日時点で前年比2.1%減まで持ち直した。当面、レースの賞金・手当は維持されるとの安心感が、市場を下支えした。

だが、不況が深刻化すれば、馬券の売り上げも無傷では済まない。吉田照哉・日本競走馬協会会長代行は「日本全体の景気のこともある。今年は何とか持ちこたえていただいたが、来年はわからない」。実際、市場が近年で最も落ち込んだのは、リーマン・ショックの約2年後の10年。本当に怖いのは来年かもしれない。

(野元賢一)

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