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費用軽減・就労支援を問題提起 「がんでも安心」訴え

天野慎介さん(3)グループ・ネクサス・ジャパン

厚生労働省がん対策推進協議会の第2期の患者委員として「たすきをつなぐ」ために最初に取り組んだのは、第1期の患者委員の遺志を引き継ぐことだった。彼女自身も長期にわたり北海道で抗がん剤の治療を受けながら、「がん患者はがんだけでなく、お金との闘いを強いられている」と訴え、経済的負担の軽減を求めていた。だが実現をみることなく亡くなった。

あまの・しんすけ 1973年生まれ。慶大商卒。悪性リンパ腫の治療と再発を経て、患者会「グループ・ネクサス・ジャパン」を通じ、がん患者支援活動に取り組む。全国がん患者団体連合会理事長として患者の立場で国や自治体の審議会委員なども務める。

がん治療は入院から外来に比重が移りつつあり、がん患者の長期生存が期待できる新しい分子標的薬なども開発されつつあった。長期に継続して高額の化学療法を受けている患者の経済的負担も大きく、治療を断念したり生活保護を申請したりせざるを得ないケースもあった。協議会での患者委員からの要望を受け、高額療養費にかかる限度額適用認定証が後に外来診療に拡大され、負担が軽減された。

次に取り組んだのは、国の第2期がん対策推進基本計画の全体目標に「がんになっても安心して暮らせる社会の構築」を取り入れることだ。国の第1期がん対策推進基本計画では、がん医療の均てん化を目的にがん診療連携拠点病院が整備されるなど、医療を中心とした施策が策定されていたが、がん患者が抱えるとされる「身体的・精神的・社会的な苦痛」の軽減に向けた施策は不十分だった。

きっかけの一つとなったのは、沖縄県からの声であった。地方紙の長期連載で、仕事を継続できないなど、経済的な理由から自身や家族のがん治療をあきらめる方々や、がんに対する地域社会の根強い誤解や偏見があることが、赤裸々に記されていた。がんと診断され、治療するだけでも大変な時に、失職して収入を絶たれ、自身も家族も大きな困難に直面する。沖縄県だけでなく、日本の地域社会で広く起きている問題だった。

協議会で問題提起をすると、「ここは医療を話し合う場だ」「自分は長年医師をしているが、仕事で困っているなどと患者から聞いたことがない」などと多くの医療者は否定的であった。しかし地方紙を厚生労働省の担当者に見せると「これは本当に日本のことなんですか? もうこんなことは変えていきましょう」と社会的苦痛の軽減の重要性を理解してくれた。こうして働き方改革の一つとしても、がん患者の就労支援が国の政策に盛り込まれることとなった。

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