今日も走ろう(鏑木毅)

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レース中止でも前へ前へ コロナ後の日々思って力に

2020/7/23 3:00
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今年の9月に挑戦する予定だったレースが中止となった。イタリアアルプスの山中330キロメートル(累積標高差2万4000メートル)を不眠不休で走るトルデジアンというレースだ。トルデジアンとは3つ(北、中央、南)の日本アルプスを一気に全山縦走するような荒唐無稽のチャレンジで、トップ選手はほぼ眠ることなく5日間ほどで完走する。

一昨年も出場を計画したものの準備の段階でオーバートレーニングによる過労で入院し、出場断念を余儀なくされた。今回はコロナ禍で大会自体が中止。またもレース参戦を果たすことができない。

アルプスが舞台の荒行レース参戦は次回以降にお預け(欧州でのトレーニング)

アルプスが舞台の荒行レース参戦は次回以降にお預け(欧州でのトレーニング)

私の場合、年間に出場する大きなレースは1レースだ。今年は社会情勢からみて3月の時点で大会の開催は難しいだろうと予想していた。それでも自粛期間中、室内や自宅周辺でかなり集中してトレーニングに取り組めたように思う。筋肉の老化の進行をどのように抑止するか試行錯誤しているおかげで、練習へのモチベーションが保てているからだろうか。

昨年の夏はここ3年間の長期プロジェクトの集大成として、50歳で最高峰の舞台UTMB(ウルトラトレイル・デュ・モンブラン)にチャレンジした。10年前には3位だった順位は昨年125位と全盛期にはとても及ばなかったけれど、世界中の猛者が集結する中、加齢に伴う筋力の衰えを考え合わせると、まだこのレベルで走れるのだと大きな自信を得た。

人間、目標がないと体力は大きく低下する。常に目標を高く掲げ、体力を維持する必要があると痛感している。結局、今年の一大目標だったトルデジアンはなくなった。その代わり、自身の肉体へのあくなき探求心を駆り立てて、トレーニングを続けていくつもりだ。

加齢で走れなくなる要因はさまざま。経験上、その最たるものは速筋の減少だろう。速筋は遅筋に比べ衰えが早く、意識して鍛えないと急速に走れなくなる。速い動きや下り坂を使い、脚筋に負荷を加えてなんとか速筋の老化を食い止められる。ゆっくりジョギングをするだけではたちまち衰えていく。

59、60、61歳のフルマラソンの年齢別世界記録保持者である保坂好久さんはほぼ毎日、1000メートルの急斜面の下り坂を全力で5本以上、駆け下るトレーニングを長年続けていると聞いた。私も短い坂のダッシュや階段を全力で何度も駆け上がるトレーニングを地道に繰り返し、自分の肉体の反応を確認している。

トルデジアンというと、修験道の千日回峰行という荒行のなかの四無行を想起する。四無行は9日間、断食、断水、不眠、不臥(ふが)で一心に経を唱えるもの。経験された塩沼亮潤さんは危険極まりない修行にもかかわらず、「どんな世界が待っているのだろう」といたって前向きな心境で最後まで取り組めたという。自分がこれまで出場したレースの最長距離は170キロメートル。この倍の距離のレースには一体どのような新境地が待っているか、想像しただけでもワクワクする。そのために肉体の衰えをいかにして食い止めるのか、コロナ騒動が収束したら何をしようか、日々思いをめぐらしながら、現在の困難な状況を乗り越えるエネルギーを蓄えている。

(プロトレイルランナー)

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