ウィズコロナ時代のテレビドラマ 制作の工夫は続く
連続ドラマの収録が再開する一方、ウィズコロナの時代のテレビドラマ制作の試みが続いている。「ステイホーム」が叫ばれていた5月上旬、いち早くお目見えしたのがパソコンやスマホのカメラを使い、遠隔撮影したリモートドラマだった。分割画面に俳優たちが映るリモートドラマが相次ぐと、次に実生活でも兄弟姉妹、夫婦関係にある俳優を配役して共演するNHKの「リモートドラマ Living」が登場した。撮影も俳優側に委ねることで分割画面から脱し、通常のドラマに一歩近づいた。続いてフジテレビ系の「世界は3で出来ている」は、1人の俳優が3役を演じて3密を避ける意表を突いたドラマだった。
7月24日の深夜(25日)から放送するドラマ24特別編「40万キロかなたの恋」(テレビ東京系、金曜深夜、テレビ大阪のみ翌週月曜深夜、全4話)は、たった1人で宇宙船に長期滞在する宇宙飛行士(千葉雄大)を主人公にすることで、違和感なく3密を回避したドラマだ。わずらわしい人間関係を嫌い、ユリという名前のAI(人工知能、声・吉岡里帆)との宇宙暮らしに満足していた彼が、地球にいる元恋人(門脇麦)とモニター越しに再開したことを機に、生活が一変する。
企画したテレビ東京の浜谷晃一プロデューサーによると、ステイホーム期間中、「直接会えない孤独な日常は、宇宙で孤独に過ごす宇宙飛行士みたいだ」と思ったのがドラマ誕生のきっかけだったという。「会えないという点では1キロ離れていようが、40万キロであろうが変わりがない。(コロナによって他者と)当たり前に会えていたものが会えない。日常の大切さを表現するとともに、コロナ禍における精神的なテーマを描きたいと思った」と語る。制作が決まったのが5月末で、脚本は玉田真也氏が執筆。原作がないオリジナル作品のドラマとしては異例の速さで作り上げたという。
宇宙船の場面の撮影には、リアルタイム合成という技術を使った。グリーンバックを背景に演技をする主演の千葉(合成前の画像)をカメラで撮影すると同時に、あらかじめ用意しておいた宇宙の様子を描いたCGを合成する(合成後の画像)。撮影後、すぐに編集に取りかかることができるため制作期間が限られる場合に効力を発揮するという。コロナ禍はドラマ制作の作業効率を下げ、制約を増やす。だが、浜谷プロデューサーは「制約があるからこそチャレンジングな企画を発想したり実現したりすることが増えた。ドラマは時代に寄り添ったもの。今回のドラマは、人と会う大切さをかみしめる今の時代を切り取っているのかなと思っている」と話す。
(関原のり子)