村上春樹、3年ぶりの小説新刊 書店集客策は控えめ

文化往来
2020/7/23 2:00
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村上春樹の新作短編小説集「一人称単数」(文芸春秋)が18日、発売された。短編集では「女のいない男たち」(文芸春秋)以来6年ぶり、長編を含めると「騎士団長殺し」(新潮社)以来3年ぶりの新刊小説となる。出版市場が縮小する中で、村上春樹の新刊はベストセラーの貴重な種。過去には刊行に合わせて全国の書店が大がかりな販促活動を繰り広げてきたが、今回は新型コロナの影響で控えめの様子だ。

村上春樹の新作で立てられたタワー(18日、東京都千代田区の三省堂書店神保町本店)

村上春樹の新作で立てられたタワー(18日、東京都千代田区の三省堂書店神保町本店)

文芸春秋によると、初版は前回の「女のいない男たち」より2万部少ない18万部。刊行前に1度増刷がかかり、22日時点で計23万部となっている。文芸誌「文学界」に発表された「石のまくらに」や「品川猿の告白」など7編に加え、書き下ろしの「一人称単数」の計8編を収録する。表題作はスーツを着ることに違和感を覚える男性の物語だ。

発売当日、三省堂書店神保町本店では通常午前10時の開店時間を早めて、午前7時に営業を始めた。店内に新刊約400冊を積んだタワーを立て、レジ前には期間限定で村上作品を年代順に並べるコーナーも作った。副田陸児店長は「他の作家と比べて村上さんの著書は圧倒的な部数を誇る。今回も期待したい」と話す。新作を手に取った男性客は「コロナの時代でも村上かな。作品を読むと元気になる」と答えた。

ただ、過去数回の新作発売と比べると、今回は様子が少し異なる。「女のいない男たち」では発売当日の午前0時にカウントダウンイベントを開いた書店もあったが、今回は新型コロナの感染拡大に伴い、ソーシャルディスタンス(社会的距離)を取りにくい大規模な集客イベントを控える動きが目立つ。福岡県内のある大型書店は「目立った集客方法はやりにくい」と通常営業に徹する。

村上春樹の新作発売は図らずも、感染防止対策と集客の両立に苦心する書店の姿を浮き彫りにしたと言える。

(篠原皐佑)

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