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羊蹄山・開聞岳・鳥海山・大山… 郷土の「富士」10選

1位の羊蹄山(ようていざん)=蝦夷(えぞ)富士(北海道)

「○○富士」と呼ばれ愛されている山が全国にある。思わずカメラを向けたくなる雄大で均整のとれた姿。そんなフォトジェニックな郷土富士を専門家が選んだ。

1位 羊蹄山(ようていざん)=蝦夷(えぞ)富士

(北海道)840ポイント
どの方角からも整った山容

日本百名山に名を連ねる北海道を代表する名峰。「富士山の写真に混ぜても一般の人は気づかないのではないか」(萩原浩司さん)との評もあった。並び連なる山がない独立峰であるのに加え、「山裾を広げ、どの方角から見ても整った山容が望める」(佐藤孝三さん)点でも本家に酷似している。6人の専門家が1位に選んだ。

富士山と見まがうのはそのシルエットだ。「山頂部にかけて傾斜が急になるラインは浮世絵の富士山ともマッチする優美さ」(小林政能さん)。北海道ならではのスケール感や冠雪時の白と青のバランスも富士を彷彿(ほうふつ)とさせる。これからの季節は「羊蹄山をバックに花畑が広がる写真映えスポットが周囲に多くある」(王麗華さん)。

迫力と優美さだけではない。動植物の宝庫でもある。「夏は高山植物が楽しめ、近くに有珠山のジオパークや雪解け水が湧き出す名水スポットなど見どころが多い」(森順子さん)。「JR比羅夫駅に宿があり、そのまま登れる珍しい山でもある」(小塩稲之さん)

(1)1898メートル(2)http://www.town-kyogoku.jp/kanko-event/mounnt-yotei/

2位 開聞岳(かいもんだけ)=薩摩富士

(鹿児島県)740ポイント
海面から立ち上がる裾野

薩摩半島の南端部に見事な三角すいのシルエットを描く日本百名山の秀峰。錦江湾の入り口の「海門」にあることが名前の由来だという。傾斜は富士山よりやや急だが、どこから見ても整った形をしている。JR最南端の西大山駅からの眺めも有名だ。「麓のひまわり畑から見る景色は夏のイメージそのもの」(城市奈那さん)でフォトジェニック。海に突き出た特異な立地で、「海辺や茶畑を前景に入れて眺める開聞岳はまさに薩摩の富士」(萩原さん)といえる。

標高は1000メートルを下回るが、独立峰で海面から裾野が立ち上がっているため「富士山感」は強い。「四季折々の花と湖と開聞岳が織りなす絶景が楽しめる」(森さん)。北側にはカルデラ湖の池田湖がある。ルートによっては航空機の窓からも望め、「湖と海とのコラボ感が上空から味わえる」(小林さん)。近くには指宿温泉もある。

(1)924メートル(2)https://www.ibusuki.or.jp/tourism/view/kaimondake/

3位 鳥海山(ちょうかいざん)=出羽富士

(秋田県・山形県)510ポイント
東北の名峰 広大な田んぼ潤す

秋田からは「秋田富士」、山形からは「庄内富士」とも呼ばれる日本百名山。「広大な裾野を持った独立峰」(萩原さん)。日本海に浮かび上がるシルエットは「『影鳥海』とも呼ばれ圧巻の姿だ」(田代さん)。巨大な活火山で「山頂が冠雪した姿は富士山に酷似している」(小塩さん)。雪は豊かな水となり、広大な田んぼを潤してきた。水田から仰ぎ見る山は、まさに東北の富士にふさわしい。

山麓の人々からは古くから守り神として崇拝されている。「美しいブナの原生林をはじめ四季ごとの様々な表情があり、見ても撮っても絵になる東北一の名峰」(佐藤さん)。氷河の痕跡らしい地形も見られ「山麓では『氷河』を冠した特産品もある」(横倉和子さん)。120種類もの高山植物が観察でき、花の百名山にも名を連ねる。

(1)2236メートル(2)http://chokaizan.com/

4位 大山(だいせん)=伯耆(ほうき)富士

(鳥取県)460ポイント
眺める方角で変わる表情

富士山に見えるのは西側からの眺め。南北からは険しい表情になる。「この対比が魅力でもある」(千葉達朗さん)。様々な山容は「富士山、槍ケ岳に並ぶ名峰との評価もある」(小塩さん)。「もはや孤高の存在であり、富士山に似ているという理由で評価するのは不遜なほど」(服部文祥さん)。島根県からは「『出雲富士』とも呼ばれ、その名の日本酒もある」(小林さん)。山岳信仰が根付き、北側の「『賽の河原』からの眺めは霊山の威厳を感じる」(王さん)。食の恵みももたらす。「ブルーベリーなど肥沃な土壌を生かした特産品も魅力」(城市さん)。

(1)1729メートル(2)https://www.houki-town.jp/new2/5/8/1/

5位 岩木山=津軽富士

(青森県)370ポイント
湖面の逆さ富士 写真映え

麓の湖は「津軽富士見湖」の名を持ち、湖面に映る『逆さ富士』が美しい。「津軽っ子たちは自分が生まれ育った場所から見る姿が一番だと譲らない」(佐藤さん)ほど、心のよりどころとなっている。「円すい型の火山体は極めて均整が取れ、裾野の斜面に凹凸が少ない」(千葉さん)。地元の出身の「太宰治の随筆『津軽』に『富士山よりもっと女らしく…』と続く岩木山への賛美は、独立峰としてそびえる魅力を言い当てている」(萩原さん)。四季ごとの景観は遠くからも近くからも写真映えする。愛される名峰は「どっしりとそびえて弘前の街を見守る」(服部さん)。

(1)1625メートル(2)http://www.iwakisan.com/

5位 岩手山=南部富士

(岩手県)370ポイント
北上川の背景にどっしりと

角度によっては山の形が欠けるため「南部片富士」とも呼ばれる。「西側上空から見ると中央部に馬てい形のくぼ地がある」(千葉さん)。岩手県内最高峰で北上川の背景に浮かぶ姿は美しい。「盛岡の街とセットでふるさとの山のイメージが強く、人々の生活を見守る風格がある」(服部さん)。「どっしりとした山容は岩手県のシンボルにふさわしい」(田代さん)。噴火を重ねる中で山容は変化し、「雪解けの時期には山肌に鷲の形が見られることから『岩鷲山(がんじゅさん)』とも呼ばれる。田畑を耕す目安にもなる」(森さん)。山頂からは岩木山や鳥海山も望める。

(1)2038メートル(2)http://www.city.takizawa.iwate.jp/mtiwate

7位 磐梯山(ばんだいさん)=会津富士

(福島県)350ポイント
優しくて荒々しい二面性

磐梯山はわずか130年前に大噴火があった。南側から見ると「猪苗代湖まで伸びるきれいな曲線が印象的な均整の取れた火山」(千葉さん)だが、「北側の裏磐梯から見ると山体崩壊の荒々しさがある二面性を持つ山」(小林さん)だ。周囲には「宝石のように輝く五色沼など数多くの絶景スポットがある」(王さん)。優しくて荒々しい火山であり、信仰の対象でもある。「万葉集に詠まれ民謡でも親しまれている」(小塩さん)。日本ジオパークにも登録され、「周辺の湖からボートで山の美しさを身近に感じられるのも良い」(城市さん)。

(1)1816メートル(2)https://www.bandaisan.or.jp/information/

8位 利尻山=利尻富士

(北海道)340ポイント
島そのものが独立峰

日本最北の百名山。「アイヌ語のリイシリ」(高い島)に由来する。「山容は少々鋭いが、島そのものが独立峰としての富士山に似た形状を示す」(萩原さん)。「島全体が一つの頂点に絞られて天に向かっているように見えると称賛される」(横倉さん)。海に富士が浮かんでいるようにも見える。「対岸の稚内市には富士見という地名があり、古くからご当地富士として親しまれてきたことが感じられる」(森さん)。貴重な植物の宝庫。四季ごとに変わる景観が撮影意欲をそそられる。山頂からは樺太も見える。

(1)1721メートル(2)https://www.rishiri-plus.jp/shima-no-susume/tozan/

9位 男体山(なんたいさん)=日光富士

(栃木県)310ポイント
霊山としての歴史と存在感

山岳信仰の聖地で、山頂には日光二荒山神社の奥宮が置かれる。「霊山としての歴史や存在感は本家富士山にも劣らない」(服部さん)。周囲には「『華厳の滝』などの景勝地を有し、日光の社寺とともに親しまれている」(横倉さん)。日光国立公園の中心的存在で「自然のみどころが多く一日中楽しめる」(城市さん)。写真対象としては、「四季を通じて絵になり、山、滝、湖、温泉、湿原とぜいたくな観光資源がそろっている」(佐藤さん)。標高も高く、「首都圏からビル越しに見えた時はうれしい」(田代さん)。

(1)2486メートル(2)http://www.nikko-kankou.org/spot/14/

10位 榛名富士(はるなふじ)=榛名富士

(群馬県)280ポイント
ロープウエーで楽々山頂へ

榛名山は赤城山、妙義山とともに上毛三山と呼ばれ、太古の噴火で形成された山々の総称。その中に「榛名湖に裾野を広げる均整のとれた美しい姿から榛名山の象徴とされる榛名富士がある」(横倉さん)。中央火口丘である榛名富士。その山影が「火口原にできた榛名湖に映る『逆さ富士』は何とも美しい」(田代さん)。「硯岩(すずりいわ)」という高台からは息を飲む絶景が望める。気象条件が良ければ「富士山や日本アルプスまで見渡せる山頂にはロープウエーで登れるため、子連れでも楽しめる」(王さん)。

(1)1391メートル(2)https://www.city.takasaki.gunma.jp/kankou/nature/harunako.html

均整とれた姿に 地域の愛着深く

「郷土富士」「ふるさと富士」は400以上あるといわれる。今回選ばれた山々は、いずれも地域の人が特別な親しみを寄せている点でも「富士」の愛称を冠するにふさわしい名峰ぞろい。すべて火山である点も共通している。噴火と美しさは裏腹なのだ。

1位の羊蹄山と、2位の開聞岳はともに10人の専門家が選び、3位以下を引き離した。日本のほぼ中央に富士山がそびえ、南北の両端に郷土富士の代表格が位置する構図は興味深い。

郷土富士は海外にもある。「世界の『富士山』」の著書がある田代博さんによるとその数は54。代表格はフィリピン・ルソン島のマヨン山=写真=だ。完璧な円すい形で、日本からの移民は「ルソン富士」と呼んだ。均整のとれた雄大な山に富士を重ねる郷愁は、異国の地ではとりわけ強かったに違いない。

ランキングの見方

 山の正式名称と○○富士の名前(所在地)。数字は専門家の評価(点数)の総計。(1)標高(2)情報サイト。写真は1、2、3、4位が佐藤孝三氏、5位(岩木山)はofficeたけぐみ代表竹浪正顕氏提供、5位(岩手山)浦田晃之介、10位大久保潤撮影。7位会津若松市、8位利尻町観光協会、9位日光市観光協会提供。マヨン山はフィリピン政府観光省提供。

調査の方法

 「○○富士」の別称がある全国の山から専門家の協力で27をリスト化。(1)富士山のように雄大で均整のとれたフォトジェニックな姿(2)周囲の環境を含めた観光地としての魅力--の観点で11人の専門家に1~10位まで選んでもらい、編集部で集計した。

今週の専門家

 ▽王麗華(いこーよ)▽小塩稲之(日本観光文化協会会長)▽小林政能(月刊「地図中心」編集長)▽佐藤孝三(山岳写真家)▽城市奈那(観光Reデザイン編集部)▽田代博(富士山遠望鑑定士)▽千葉達朗(日本火山学会副会長)▽萩原浩司(「山と渓谷社」特別編集主幹)▽服部文祥(登山家・作家、「岳人」編集部)▽森順子(地理女net代表)▽横倉和子(日本旅行総研研究員)=敬称略、五十音順

(大久保潤)

[NIKKEIプラス1 2020年7月25日付]
[NIKKEIプラス1 2020年7月25日付]

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