中国、証券・保険9社を実質国有化 「明天系」狙い撃ち

習政権
中国・台湾
2020/7/20 19:00
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【北京=原田逸策】中国の金融監督当局が証券、保険など金融機関9社を実質国有化した。いずれも2017年1月に香港で失踪した著名投資家の肖建華氏が率いた明天集団が支配する企業ばかり。民間企業による野放図な海外投資をけん制する狙いがありそうだ。

明天系で最初に国有化された包商銀行

対象は新時代証券、国盛証券、商品先物の国盛期貨、天安財産保険、華夏人寿保険、天安人寿保険、易安財産保険、新時代信託、新華信託の計9社。法律に基づいて当局が経営権を接収した。期間は17日から21年7月16日までの1年間。取締役会や株主総会は効力を失い、当局が送り込んだ経営陣が運営する。9社の総資産は合計9千億元(約14兆円)を超す。

9社はいずれも肖氏が1999年に創業して急成長した投資会社、明天集団の傘下にあり「明天系」と呼ばれる。複雑に入り組んだ形で出資し、上場企業や金融機関を含めて多くの会社を支配した。関係者は「傘下企業があまりに多く、支配先の社印を管理する倉庫があった」と話す。2019年5月に当局が接収した包商銀行も明天系だ。

肖氏は17年1月、香港の高級ホテルで失踪した。中国の治安当局が大陸に連れ戻したとされる。同時に金融当局は明天系の金融機関への監督を強めた。海外資産を売却させて数千億元の資金を国内に還流させたり、リスクの高い業務を縮小させたりしてきた。今回の接収で明天集団の解体が決定的になった。

当局は証券法143条や保険法144条を接収の根拠とした。資産が劣化したり経営破綻の淵にあったりして、当局が放置すれば顧客や金融市場に重大な損害を与える場合を想定する。包商銀行は明天集団の資金流用で資産が劣化していた。

今回は接収の理由に資産内容の悪化ではなく企業統治の問題を挙げた。差し迫った危機とはいえず、規定を援用するには苦しい説明だ。明天集団は「これまで国家のカネを一銭も使わず、一度も債務不履行を起こさず、流動性危機はなく、取り付けもない」などと接収を批判する声明を出したが、直後に削除された。

明天集団を強引に接収したのは海外に資産を移そうとする企業をけん制する狙いがありそうだ。米国との長期の覇権争いをにらんで貴重なドル資産を流出させた企業を制裁し、民間企業に警告を発する思惑が浮かぶ。

当局の標的は明天集団、安邦保険集団、大連万達集団、海航集団の4つとされる。13年ごろから海外投資を急拡大させ、人民元急落や外貨準備の流出を招いた。文化大革命を主導して裁判にかけられた四人組になぞらえ「新四人組」とも呼ばれる。安邦や明天は金融当局が経営権を接収し、海航も海南省が経営に介入した。万達も海外資産の売却を迫られ、業務縮小が続いている。

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