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日本の主流は「株式投機」? 投機より投資を目指そう

ろくすけさんの勝てる株式投資入門(6)

株式投資で3億円を超える資産を築き、アーリーリタイアしたブロガーのろくすけさん(ハンドルネーム)。会社員投資家の夢を実現した実在のスゴ腕投資家が、会話形式のフィクションストーリーを通して、株式投資の取り組み方やノウハウをやさしく解説していきます。

●ろくすけ 実在する本連載の著者。人気ブログ「ろくすけの長期投資の旅」を運営。
●ゴロー 大学院を修了後、化学メーカーに就職して1年目の青年(架空)。旅先で出会ったろくすけさんに師事するという設定。
●ナナコ ゴローの妹(架空)。大学で経営学を専攻している。兄と一緒にろくすけさんに株式投資の基本を学ぶという役どころ。

前回、日本企業の個別株投資のメリットをろくすけさんから教わったゴローとナナコ。では、具体的にどんな投資をしたらいいのでしょうか。話は今回から投資の取り組み方に入っていきます。

ゴロー お久しぶりです。それにしてもコロナショックと、そこからの株価の回復はすさまじくて、びっくりしましたよ。「株はギャンブル」と父が言っていたのも、分かる気がしました。

ナナコ 私の印象は違います。ろくすけさんのお話を伺っていたので、「暴落しても株価はいずれ反発して戻るだろう」というイメージを持って見ていました。回復のスピードはさすがにちょっと速過ぎる気はしましたが……。

投機で上場来高値を更新した銘柄も

ろくすけ 株式市場には多種多様な参加者がいて、色々と異なる思惑で株を売買しているからね。「投資」をしている人もいれば、「投機」と呼んだ方がいい取引をしている人もいる。様々な売買が入り交じって、時に不可解な値動きが生み出される。ここ数カ月の株価の動きがまさにそうだ。ベテランの投資家でも、相場の動きを読もうとして、それが裏目に出てしまった人が多いんじゃないかな。

そこで今日は投資と投機の違いについて話そう。下の表は、2つの違いを私なりに整理したものだ。日本の株式市場に参加している人の大多数は、投資ではなく投機をしている。これが私の見解だ。

具体例を挙げて説明しよう。まず下の囲みのGMOペパボ(3633)の株価チャートを見てほしい。同社は、インターネット上にホームページを開設するのに必要なウェブサーバーを低価格で個人に貸し出し、月額料金を受け取る事業などを手掛けている。

株価の推移を見ると、コロナショックが起きる前から株価が大きく下落していた。これは、業績の伸びに陰りが見えたことが原因だ。ところが、コロナショックで暴落した後に反発し、6月には上場来高値を更新してしまった。

「投機」だと値動きのチェックも大変

短期の値動きを捉えて、頻繁に売買して利益を積み重ねることもできる。だが、常に値動きをチェックし、大きく動いたら即座に売買しなければならない。仕事を持つ人が片手間にやるのは難しい。

ゴロー すごい! でも、コロナショックの最中に業績が急回復したなんてことはないですよね?

ろくすけ そんなことはなかったよ(笑)。同社の親会社であるGMOインターネット(9449)の関連会社の株が一斉に急騰し、それが投機家たちの買いを誘って、業績の動向とは関係なく株価が乱高下したんだ。株価が大きく動いている銘柄に投機家たちが群がった結果だ。

ナナコ そうなんですね。でも、なぜ日本では投機の方が主流になってしまったのでしょう?

ろくすけ 原因の一つとしては、投資先の企業の「価値」が長期的に増えていくという期待をなかなか持てないことが大きいと思う。期待が持てないのは、バブル崩壊後の日本経済の疲弊したイメージや、成熟期から衰退期に入った著名大企業の印象が強いからだろう。

企業の価値が長期にわたって増え続けると信じられないから、何らかの材料で値上がりして含み益があるうちに売却し、利益を確定しようとする人が多い。これは実に残念なことだ。個別に見ていけば、価値を生み出し続けていて、投資としてじっくりと持つのにふさわしい企業の株はいくらでもあるのだから。

企業の価値は複利で増える

ろくすけさんはここで一呼吸入れてから、話を続けます。

ろくすけ だが、原因としてさらに大きいのは、価値を生み出し続ける株式会社の本質をしっかりと教わる機会がないことだ。

学生時代に世界史の授業で、世界初の株式会社といわれるオランダの東インド会社について習っただろう。航海に多額な資金を必要とする探検家に対し、複数の資本家がリスクを取ってお金を出し合う。それで遠い異国で香辛料を獲得する一大プロジェクトが成立するという話だ。あれを延々と繰り返しているのが株式会社の本質だ。

表に示したように、東インド会社は一連のサイクルを繰り返して、香辛料を獲得する航海プロジェクトの規模を拡大させていった。プロジェクトが成功し続ければ、その規模は前に説明した「複利の効果」(第4回参照)によって雪だるま式に増えていくんだ。

説明を簡便にするため、1回の航海で獲得した香辛料によって、資金の1.5倍に当たる収入を常に上げられると仮定しよう。さらに収入の2割を配当として投資家に還元し、8割を次の航海の資金に充てると仮定する。

ナナコ 最初に投資家から集めた資金が100なら、航海で獲得した香辛料の売却代金が資金の1.5倍の150。そのうち2割の30を配当として投資家に還元し、残りの120を次の航海に振り向けるというわけですね。

2回目の航海の資金は初回の1.2倍に増えるから、2回目でも資金の1.5倍に相当する売り上げを得るとすると、収入は最初の元手100×1.2倍×1.5倍=180。そうか! 航海の資金、収入、配当のいずれも1.2×1.2×1.2と、1.2の掛け算の積み重ねで増えていくのね。

ろくすけ その通りだ。そうすると、10回目の航海の資金と配当などの額は初回の約5.2倍にもなる。このように収益や配当が複利の効果で雪だるま式に増えることを期待して、その期待を織り込んだものが企業の価値になる。

株式会社がお金を増やす仕組み、すなわち、同じことを続けて利益が出れば、企業の資金は複利の効果で加速度的に増えていくという株式会社の本質を理解したい。そうすれば、価値を生み出し続ける企業の株を長く持つという投資の本質も腑に落ちるはずだ。

「投資」だと値動きは常に見なくてもOK!

投資であれば、短期の値動きが激しくても、企業の成長見通しに変化がない限りは持ちっぱなしにできる。企業の業績は定期的にチェックしなければならないが、値動きは常に確認しなくて済む。負担が少ないので、仕事を持つ人でも取り組みやすい。

下の2つは、連結会計の損益計算書などの作成を支援するパッケージソフトを開発・販売するアバント(3836)の株価チャート。週足チャートの方を見ると、同社の株価は短期では乱高下している印象が強い。しかし月足チャートで見れば、2012年に上昇が始まってから19年11月に最高値を付けるまでの間は、18年終盤に全体相場が大きく下落した局面では連れ安したものの、それ以外の期間は上昇基調で推移していたことが分かる。



競争の原理も理解しよう

ナナコ でも、実際には企業の収益は一定ではなく、増減しますよね。

ろくすけ そうだ。だから、安定して利益を稼ぎ出す企業の株を持ちたい。航海に例えれば、他国の船が入ってこない大海原を見つけて、船団を安定して大きくし続ける企業の発掘を目指す。競争相手が増えると取り分が減り、企業の成長スピードも遅くなるからね。

この競争の原理を理解することも重要だ。本質や原理を理解して価値を増やし続ける企業を見分けられるようになり、その企業の株を長期保有する。そうすれば、頻繁に銘柄を入れ替える必要はなくなるので、仕事で忙しい人でも取り組める。

私は若い人ほど、投機より投資に目を向けてほしいと願っている。株価を押し上げる材料を探し回ることに貴重な時間を費やしてほしくはないからだ。

ゴロー 投機は厳禁ですね!

ろくすけ いや、時には投機を利用することも必要だ。投機家たちの買いが入って株価が上振れすれば、それで望外の高値で売ることも可能になるからね。これについてはまた改めて説明するよ。投機と投資の比較で価値と価格について言及したから、今度はその違いについて考えよう。

(次回に続く)

今回のまとめ
利益を出し続ける会社は、複利の効果で急速に成長する

[日経マネー2020年9月号の記事を再構成]

日経マネー 2020年9月号 仕込むなら今! 次世代10倍株

著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2020/7/21)
価格 : 750円(税込み)

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