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内水氾濫、備え進まず 2割強はハザードマップ未公表

大雨で冠水した福岡県久留米市街(8日午前)=共同

九州を襲った豪雨で、福岡県久留米市は筑後川の支流でポンプの排水能力が限界に達し、低地が浸水する「内水氾濫」が起きた。都市部で目立つ水害で、近年多発し浸水棟数は洪水を上回る。費用などの制約から2割強の自治体がハザードマップを未公表で、住民への注意喚起は遅れている。

「10年で浸水は3回目。もううんざりだ」。久留米市で建具工場を営む男性(59)はため息をつく。豪雨で工場周辺は7日から水がたまり、8日に数十センチ浸水した。仕事で使う木材も捨てざるを得ず「暮らしが立ちゆかなくなる」と訴える。

同市は筑後川の水位が上昇した際、支流への逆流を防ぐため支流の水門を閉めた。代わりに支流の水をポンプで排水したが、能力を超え、支流の水が地表にあふれた。市中心部など広域で浸水し、床上・床下浸水は約1950棟に上った。

この地域は2012年の九州北部豪雨や18年の西日本豪雨でも内水氾濫が発生。市は県や国と対応を協議し、4月にまとめた対策で排水場のポンプ増設や貯留施設の整備を盛り込んだ。完成には5年程度かかるため、市は「避難誘導に力を入れる」(担当者)とし、浸水想定を示す標識などを増やす予定だったが間に合わなかった。

河川の堤防が決壊するなどして起こる氾濫と異なり、支流や下水道の排水能力が限界に達し、堤防で守られた内側(居住域側)で水があふれる現象を「内水氾濫」と呼ぶ。

地表がアスファルトで覆われた都市部は水が地中に浸透しにくく、低い平地は内水氾濫が起きやすい。家屋が密集する地域が広範囲に浸水することが多く、17年までの10年間の内水氾濫による浸水棟数は約22万棟で、洪水(約10万棟)の2倍超に上る。

19年10月の台風19号では川崎市で多摩川の水が排水管を逆流して内水氾濫が起き、5カ所で計110ヘクタールが浸水した。同市の武蔵小杉駅周辺はマンホールなどから水があふれ、地下の配電盤が浸水で故障して停電したタワーマンションもあった。

自治体は5年に1度のレベルの大雨に対応できるように下水道の整備を進めるが、整備率は18年度末で59%にとどまる。記録的な豪雨が相次ぐ中、ハード対策で浸水を防ぎきるのは難しい。

国は06年から、各自治体に内水氾濫のハザードマップの作成を呼び掛ける。下水道の処理能力や過去の被災状況などを基に推定したもので、東京都各区や大阪市などは洪水のハザードマップと並列したり重ね合わせたりして周知している。

国土交通省によると、過去に甚大な浸水被害が発生するなど早期にハザードマップが必要な484自治体のうち、25%の自治体は19年3月末時点で未公表だった。久留米市は道路の冠水想定は公表していたが、市街地のマップはなかった。

調査などには規模により数千万円単位の費用がかかる。同省担当者は「小規模自治体ではコストや人員の面でハードルが高い」とみる。

同省は詳細なデータがない場合、地形などを基にした暫定的なハザードマップの作成を促している。内水氾濫の増加を受け対策を議論した同省の有識者会議も6月、過去の浸水状況などに基づき20年度末までにハザードマップを公表するよう改めて自治体に求めた。

中央大の山田正教授(河川工学・水文学)は「内水氾濫のリスクは高まっており、住民が家屋の浸水対策や適切な避難判断に生かせるように関係機関は情報発信することが必要だ。ハザードマップは危険な地域を分かりやすく示す工夫も求められる」と指摘した。

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