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大谷、2試合12四死球も 垣間見えた進化の兆し

スポーツライター 丹羽政善

紅白戦に登板したエンゼルス・大谷=共同

二刀流としての復帰が秒読みとなった大谷翔平(エンゼルス)。2018年9月2日以来、674日ぶりとなった7日の復帰登板ではアンソニー・レンドーン、アルベルト・プホルスら主力組が相手だったが、術後2度目の登板となった13日は、一転して若手中心で編成されたチームを相手に投げた。

「ちょっと、投げにくそうだったから」

復帰初戦で7四球と荒れた一因をそう分析したミッキー・キャロウェー投手コーチ。大谷もそれを否定せず、「味方に投げるのもあまり経験がないので、どちらかというと置きにいってしまった」と話し、続けた。「術後明けの不安というよりは、そういう面が大きかったかなと思います」

キャロウェー投手コーチは「当ててはいけないという心理も働いたのだろう」とも考え、同じ味方でもほとんど知らない選手が相手ならば違うのでは――というのが2戦目の配慮だった。その狙いはまずまずはまり、多少は変化球が抜けるなどしたが、4回途中まで15人と対戦し、2安打、1失点、1三振、5四死球だった。

依然として制球に懸念が残るが、多くのトミー・ジョン手術(肘内側副靱帯再建術)を執刀し、コーチとして毎年ドラフトにかかる選手育成も行ってきた川崎市武蔵小杉にある「ベースボール&スポーツクリニック」の馬見塚尚孝医師は初登板後、「ブルペンとはタスク負荷量が違う」と話し、手術の影響によるものではないと捉えた。

「打者がいて、守備がいて、テンポが求められ、監督やメディアの目もある。ブルペンでは自分のペースで"シングルタスク"をこなせばいいが、紅白戦では他のタスクも課題となる」

むしろ、正しい方向に進化している――そう映った。

肩肘の負担が小さい投げ方

そう考えられる一つのポイント。大谷のリハビリの進捗を測る上で、馬見塚医師は、踏み出した左足が地面に着地する寸前にボールを持った手が投球する腕の肘の位置よりも上にあるかどうかに注目していた。そうすることにより、「体幹の加速に対して腕の加速のタイミングの遅れがないため肩肘の負担が小さく障害リスクが低い」と同医師。これを日本では外旋位コックアップタイプと呼ぶが、実際、エンゼルスも同様の方針だった。昨年12月、大谷のリハビリを見守ったキャロウェー投手コーチは、「日本へ帰ってからもキャッチボールをすると思うが、ハイコックポジションだけは意識してくれと大谷に伝えた」と明かしている。

「その位置にないと、投げるときに上半身が回転を始めたとき、腕が遅れてその腕にストレスがかかる。マウンドから投げる場合は傾斜がある分、多少(腕を上げる)時間的な余裕があるが、フラットグラウンドでは、特に意識をする必要があるから」

大谷自身も手と肘の位置を確認しながらリハビリを進め、キャンプ中断直前、「ブルペンのレベルでは意識してできますけど、もちろんバッターに集中したときにそういうふうなところまで落とし込める練習をする必要はある」と説明し、シングルタスクであるブルペンでの投球の自信を深め、あとは実戦というマルチタスクが求められる場面でどうか――というところまでたどり着いた。

「試合のレベルで投げるときにも、基本的に緩やかに順序よく加速していけるかどうか」

そんな経緯を踏まえれば、手と肘の位置は現在地を知る重要な目安となりえたわけだが、実際はどうだったのか。その点を馬見塚医師に確認すると、「継続して投球動作の進化に取り組んでいますね」と評価した。「テイクバックの動作を見ると、変更を試みているというのは間違いない」。打者を迎えて力を入れても、もはや、それぞれの位置を意識する必要のないレベルに運動が自動化されていた――そう捉えて、よさそうだった。

自らの感覚を頼りに最適値を探す

もっともそこがゴールではない。指導者らが関われるのはここまでで、あとは本人が自身の感覚を頼りに答えを探すことになる。馬見塚医師も、「僕らが言っている良い、悪いは、ある幅にいるよっていうだけで、その中で大谷選手がなんか良いなって、最適値を探す作業が始まる。そこから先は微妙なとこなので、外から見てもわからない」と話し、こう例えた。

「コーチの指導は数学でいうところの整数を教えられるにすぎない。例えば、目指す動作が1.4だとしたら、外部のコーチは1と2の間に正解があるとしか言えない。小数以下は選手自身が探索しなければならない。これまでは2と3の間を大谷選手は探しながら適応してきた。しかし、昨年の投手コーチの提案で、大谷選手は2と3の間を探索するところから、1と2の間を探索する方向にシフトした感じですね」

大谷は「キャッチボールが大事」と口にする=共同

その真値探し。

大谷は、「一番大事なのは、キャッチボール」と口にする。「ブルペンも傾斜の感覚とか大事ですけど、課題だったりとかは、数多く投げれるのはキャッチボールなので、そこでフィーリングを確かめるのは大事かなと思います」。

それを聞いて、2年前に春のキャンプを訪れ、大谷とも親交がある解説者の権藤博氏が、こんなことを言っていたことを思い出した。

「大谷には、キャッチボールを大切にしろ、と何度も伝えた」

リハビリを経て、大谷はようやく原点であり、再起の出発点に立った。

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