/

海外と日本の長所を融合 捕手マルティネスの可能性

中日のアリエル・マルティネス捕手が注目されている。キューバ出身の24歳。7月、育成から支配下登録されると1軍でもマスクをかぶり、有力な正捕手候補に名乗りを上げている。コミュニケーションが大事な捕手に外国人を使うことには慎重論もあるだろうが、彼のプレーを見れば見るほど、やれそうだという思いを強くしている。

アリエルは強肩に加え、きめ細かいリードなど日本的な要素も兼ね備えている=共同

私は若い頃、米国に野球留学していた。海外で捕手に求められるのはワンバウンドのブロックと強肩だ。アリエルは変化球もしっかり止められるし、リーグ屈指の俊足を誇る巨人・吉川尚輝選手の盗塁も刺している。打撃の迫力も日本人にはないものだ。

だが、アリエルは「優れた外国人捕手」ではない。日本で本格的な捕手修業を受けただけあって、投手への気遣いを感じる構えやきめ細かいリードといった日本的な要素も兼ね備えている。海外と日本の長所を融合したハイブリッドという印象を受ける。

言葉の問題を懸念する声もあるだろうが、野球用語は万国共通だ。来日3年目のアリエルであれば、心配には及ばない。経験が必要なポジションであることは日本人でも外国人でも同じ。重要な場面に限っては、伊東勤ヘッドコーチや中村武志バッテリーコーチがベンチからサインを出すなどして補助すればいい。

捕手はチーム力を大きく左右するポジションだ。私の現役時代の中日には谷繁元信さんをはじめ、中村さんや矢野燿大さん(現阪神監督)、小田幸平さんといった経験豊かな捕手がいて、リードにもそれぞれ味があった。矢野さんは直球で追い込んで変化球勝負、中村さんは変化球で追い込んで直球勝負がベースになっていた。

最も意外性があったのは谷繁さんだ。前に出たサインの意味が後になって「なるほどなぁ」と腑(ふ)に落ちることがよくあった。例えばキーマンとなる打者に対し、浅い回には執拗に内角に投げておいて、長打が許されない終盤は外角一辺倒。内角の残像がある打者はそれでも簡単に踏み込めない。谷繁さんはミットがぶれないキャッチング技術でも評価が高く、審判員の間では谷繁さんの捕球が一番ボールを見やすいというのが共通認識になっていた。

捕手のタイプは様々でも、私は基本的に彼らの要求通りに投げられれば完封できると信頼していた。捕手は投手の何倍も相手打者と対戦を重ね、データも頭に入っている。自分よりはるかに深い裏付けのうえにサインを出しているはずだから、サインにはほとんど首を振らなかった。捕手の意図を理解し、要求に応えることに全力を尽くした。

2015年に現役を退いた3021試合出場のプロ野球記録をもつ谷繁さんの後釜となる正捕手の育成に苦労してきた中日にあって、アリエルの台頭は他の捕手にも大きな刺激になっている。木下拓哉は攻守にレベルアップし、加藤匠馬、新人の郡司裕也(慶大)も加わっての切磋琢磨(せっさたくま)は面白い。熱いポジション争いがチーム力の底上げにつながることを期待している。

(野球評論家)

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン