米コロナ対策、超富裕層に恩恵集中 株高で資産急増

2020/7/18 0:00 (2020/7/18 5:35更新)
保存
共有
印刷
その他

【ニューヨーク=後藤達也】米国の新型コロナウイルス対策の恩恵が富裕層に集中している。金融緩和による株高でIT(情報技術)企業の創業者ら世界のトップ10に入る米国人の資産が年初から14兆円増えた。米の雇用全体の回復は遅れており、中間層との所得格差が目立っている。

米ブルームバーグ通信によると、世界の純資産額上位10人の内、首位でアマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)ら8人が米国人だ。8人の純資産の合計額はサウジアラビアの国内総生産(GDP)に匹敵する7424億ドル(約80兆円)で年始から2割強増えた。

ベゾス氏の16日時点の資産は約1780億ドル。年初から630億ドル以上増え、過去最高を更新した。テスラのイーロン・マスクCEOも約690億ドルと2019年末比で2倍以上となった。

富裕層の資産急拡大の背景には株高がある。新型コロナを受けた大規模な経済対策や金融緩和で、多額のマネーが米株式相場に流れ込み、企業業績実態とかけ離れた上昇基調にある。

ナスダック総合指数は7月、連日のように史上最高値を更新し、ダウ工業株30種平均は3月の安値から5割近くも上昇した。11月の大統領選で再選を目指すトランプ氏は14日の記者会見でも株高をアピールし「米国に関して国民は心地よく感じている」と胸を張った。

ただ株高とは対照的に新型コロナの再拡大で多くの州が経済活動に再度の制限をかけるなど、米景気全体の「V字回復」は遠のいている。雇用状況を見ても、6月の失業率は11.1%と08年のリーマン・ショック直後を上回ったままだ。

政府は失業手当の拡充など対策を進めるが、低所得層の雇用の受け皿となってきた外食産業などの回復には時間を要するとの見方が広がる。失業保険給付の急増や企業向けの資金支援策など一連の経済対策と税収の落ち込みで、連邦政府の財政赤字は急拡大している。

新型コロナという危機的状況の中、株高で潤う富裕層と、雇用という生活基盤さえ失いかねない中間層は対照的だ。これまでも指摘されてきた様々な格差がより鮮明になってきており、恩恵が不十分と感じる中間層の不満が高まる恐れもある。

「即座に、大幅に、永続的に我々への税金を引き上げるよう求める」。米娯楽大手、ウォルト・ディズニー共同創業者の孫アビゲイル・ディズニー氏ら英米など80人以上の「億万長者」は、コロナ対策の財源に自らへの課税強化を各国政府に求める書簡を公表した。

表向きは富裕層が自らの資産をなげうちコロナ対策に取り組む姿勢に見えるが、格差問題で自らに寄せられる恐れのある批判をかわす狙いとも読み取れる。

「株価にばかり関心を払っている」――。大統領選の民主党候補が確実視されているバイデン前米副大統領はトランプ氏をこう非難する。当選すれば「労働者の家庭を徹底的に支援する」ため合計7000億ドルの政府支出案を明らかにした。格差問題が大統領選の争点になるとの意識からだ。

米エマーソン大学の調査では、有権者が投票時に最も重視する問題は「経済」との回答が31%で首位だった。2位の医療や3位の社会問題を大きく上回った。新型コロナ後の経済回復が急務の中、広がりつつある格差問題をどう解消するのか。大統領選や米国社会の重要なテーマになりそうだ。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]