/

スゴ腕3人が語る「有望株は4~6月期決算を見て発掘」

トッププロとスゴ腕個人投資家が真剣トーク(下)

コロナショックから急回復した日本株市場。6月以降はニュースで乱高下する状態が続く。この相場にどう挑むべきか。国内屈指のファンドマネジャーである苦瓜達郎さん。「Bコミ」のハンドルネームでも知られる株式評論家の坂本慎太郎さん。株式投資で億単位の資産を築いた竹内弘樹さん。腕利きのプロと個人投資家に緊急座談会をお願いした。こちらの前編に続く後編では、現在の相場観に応じた投資の戦略を掘り下げる。
苦瓜達郎(にがうり・たつろう)さん
三井住友DSアセットマネジメントのシニア・ファンドマネージャー。企業調査歴が28年に及ぶ国内屈指の中小型株ファンドマネジャー。著書『ずば抜けた結果の投資のプロだけが気づいていること 「すごい会社」の見つけ方』(幻冬舎新書)はベストセラーに。


坂本慎太郎(さかもと・しんたろう)さん
こころトレード研究所所長。「Bコミ」のハンドルネームで個人で投資を手掛ける傍ら、株式評論家として活躍する。証券会社ディーラーや大手生保ファンドマネジャーなどを経験。ラジオNIKKEI第1「カブりつき・マーケット情報局」(毎週金曜日)に出演中。著書多数。


竹内弘樹(たけうち・ひろき)さん
売上高が年5~10%、純利益が同10%以上で増加している「中程度の成長企業」の株を割安で購入し、億単位の資産を築く。初心者向けに株式投資の情報を提供するサイト「やさしい株のはじめ方」など複数のサイトを運営するライフパートナーズを起業して経営。著書多数。

──今の相場の状況を受けて、自身の投資にどんな工夫を加えていきますか。

苦瓜達郎さん

苦瓜私の場合、割安さを重視して長期投資というスタンスは変わりません。強いて言えば、大きく上昇する銘柄については売却のタイミングを逃さないことを心掛けていきます。今は欲をかいて上値を追い掛ける相場ではないと考えていますから。

坂本 私も同じです。ボラティリティー(変動率)の大きい相場では、短期のトレードを手掛ける人はチャンスとみて多額の資金をつぎ込むことが多いのですが、逆に資金の量は絞った方がいい。上下どちらの方向に動くか分からないので、予想とは逆に動いて大きな損を被ることを避ける。それを優先すべきです。ボラティリティーが大きいと、値が動く幅も大きい。投資金額が少なくても、当たれば相応の利益を上げられます。

自分の投資では、4~6月期の決算が出てくるまでは売買を控えます。同期の決算を見て、業績予想に対する実績の進捗率が高い銘柄をスクリーニングして、集中投資します。決算が発表されるまでの期間はその準備に充てます。

竹内 私も売買は控えます。今の相場で全力で投資するのは怖いということもありますが、コロナショックによる暴落で、前から買いたいと思っていた銘柄を割安に買うことができて、満腹状態でもあるからです。

新たに買い入れた銘柄は、3年以上保有するつもりでいます。ただし、大きく値上がりするものがあれば売却して、次に相場が急落した時に銘柄を買うための資金をつくる考えでいます。

──今年から来年にかけて注目しているイベントはありますか。

苦瓜 当然ながら、コロナ禍の先行きは注視しています。それと財政政策の反動を懸念しています。相場が急変するとしたら、それがきっかけになるのではと考えているからです。

坂本慎太郎さん

坂本私はイベントに注目した投資を手掛けてはいません。ただし、メインのシナリオが崩れた場合には、自分の投資を修正しなければならない。そうは考えています。

例えば米大統領選については、現職のドナルド・トランプ大統領が勝つとみられていましたが、そのメインシナリオは崩れ始めています。民主党のジョー・バイデン前副大統領が勝つようなら、当然修正が必要になります。日本で注目なのは、東京五輪が開催できるかどうかでしょう。それによって業績が大きく変わる会社がありますから。

竹内 私もイベントはあまり気にしていません。木を見て森を見ずで、個々の会社を見て投資していますから。ただ、東京五輪が開かれるかどうかは気に掛けています。中止になったら、株式市場で何らかのショックが起きる可能性はあるとみています。

震災の後の動きを思い返す

──現在、特に有望視している業種はありますか。

苦瓜 世の中の7~8割はコロナショックが起きる前の状態に戻るとみているので、その恩恵を最も受けるのは自動車とみています。

坂本 私が注目しているのは、消費者金融です。裁判所に出向き定期的にチェックしているのですが、過払い金の返還を求める訴訟の件数は、ピークを過ぎて減少に転じています。コロナ禍でニーズも拡大しているので、大きな業績回復が見込めます。その割にまだ物色されていないので、今は仕込み時ではないでしょうか。

竹内弘樹さん

竹内普段は業種を気にしていませんが、コロナショックでは自動車と結婚相談所に注目しました。結婚相談所に目を向けたのは、東日本大震災の後に人生のパートナーを求める動きが広がったのを思い出したからです。今回も広がる可能性があると考えています。

──苦瓜さんの言われるように7~8割がコロナ前に戻った場合、2~3割は元に戻らないことになります。そうした状況では銘柄の選び方にも何らかの変化が生じますか。

苦瓜 業績を伸ばしている会社の株で割安なものを買うことは変わりません。コロナ禍の影響を受けることなく業績を伸ばす会社もありますし、コロナ禍を追い風にして伸びる会社もある。そうした銘柄の中で、割安なものを探していきます。

坂本 新たな商機や成長の糧をつかんだ企業を目ざとく見つけて、その株を早く買うことがやはりポイントです。個人投資家は、ファンドマネジャーの苦瓜さんのように企業と直接対話して情報を得ることはできません。ですから、自分の生活の中から、商品の売り上げやサービスの利用が好調で業績を伸ばしていきそうな会社を見つけていくしかない。あとは街歩きをしてみたりして、人気が高まっている商品やサービスを探すといった工夫をするといいでしょう。

竹内 私も世の中の変化に目を凝らしていくしかないと思いますね。それと2~3年はコロナ禍のダメージが残ると思いますが、5年後や10年後にはいろいろなものが大きく前進して、「そう言えば、あの時はコロナで大変だったよね」と振り返るようになっているのではないかと楽観的に考えています。

(写真:陶山勉)

──足元ではIPO(新規株式公開)で上場する銘柄の売買が過熱気味です。その状況をどう見ていますか。

苦瓜 今は「絶対に失敗できない」という思いから、証券会社がIPOの候補を厳選しています。それが上場の直後に付く初値が高騰する一因になっている構図があります。IPOで上場する会社のクオリティー(質)にはそう問題はないと見ていますが、証券会社の姿勢によって新規に上場する会社の数が減り、需要と供給の間に大きな隔たりができて、ゆがんだ状態になっています。こうした状態はしばらく続くでしょう。

坂本 IPOで上場した銘柄については、上場から少なくとも3カ月はたたないと購入しない。このことをルールとして守っています。理由は2つあります。まずIPOの際に付いた高値では買いたくない。もう一つは、四半期決算の数字を1回はチェックしてから買いたいからです。

初値がかなり高いと、適正な水準に下がるまで半年や1年かかったりしますので、今年に新規上場した銘柄はすぐには手掛けにくいですね。買ったら3カ月~半年以内で売って売買を完結させたいので、割安に買うことを意識します。

竹内 コロナ禍でIPOの中止が相次いだ後に上場する銘柄の初値が高騰しているのを見て、「これはいける」と考えた経験の浅い投資家の参入も相次いでいるようです。ですから、異常に高い初値が付くケースはしばらく続くと私も考えています。上場する銘柄もIT(情報技術)やインターネット関連が多く、その中で「ウィズコロナ」や「アフターコロナ」で業容を拡大していくことが期待される銘柄は、過剰と思われるような高い初値が付くのではないでしょうか。

イナゴ投資家が後を絶たないのは残念

──最近、個人投資家の間で著名な投資家が保有している銘柄を追随して買う、いわゆる「イナゴ投資」を実践する人が増えている印象があります。この点をどうみていますか。

坂本 私はYouTubeで、イナゴ投資をする人たちを非難しています。「それだから儲からないんだ」と。

個人投資家が「儲かりそうだ」と他人が推奨する銘柄を知りたがるのは、今に始まったことではありません。私の講演でも、具体的な銘柄について話をする時にだけ目の色を変えてメモを取る人がいますから。でもそれはもったいないことだと思います。

10年や20年にわたって勉強すれば、個別株の分析ができるようになり、自分なりの売買の仕方も身に付くはずです。多くの人にそうなってほしい。実際にイナゴ投資で失敗して株を続けられなくなる人も多いですから。最低限、足元の株価が割高なのか割安なのかは、自分で判断できるようになってほしいですね。

苦瓜 株式市場が盛り上がっていると、安易にイナゴ投資で儲けようという人が入ってくる。そして、その多くが淘汰されて、一部が賢くなって市場に残っていく。こういうことは常に繰り返されてきました。仕方のないことなのかなと思いますね。

竹内 結局どの銘柄が儲かりそうなのか。その結論だけを知りたい人が多い傾向は、私が株式投資を始めた頃からずっと続いていて変わっていないですね。しかし、ツイッターなどで特定の銘柄を推奨する人は、なぜわざわざそんなことをするのか。多くは自分がその銘柄を高く売り付けたいからでしょう。この点に気づいて自分で勉強しようとする人がなかなか増えない。そして、言葉は良くないかもしれませんが、株式市場で他の投資家が儲けるための養分になってしまっている。これは残念なことです。

株式投資の醍醐味はここにある

──最後に、株式投資の醍醐味はどこにあると考えているのか。それぞれのお考えを伺いたいと思います。

苦瓜 よく言うことなのですが、「株式市場は横暴な上司である」と私は考えています。本当に横暴で、訳の分からない動きが多いですし、明らかに間違った反応をすることも少なくありません。でも、長い目で見れば、株式市場はやはりすごい英知の固まりなんですよね。その英知の固まりである市場とリアルタイムで常に向き合うことで、いろいろな学びが得られます。それが自分の人生で物事を考えていく上での土台にもなっています。

坂本 私は小学生の時に株の魅力にとりつかれました。年を重ねるごとに「株を極めたい」という思いが募り、学生時代にやっていた音楽バンドをやめたり、マージャンも断ったりして、株以外に割く時間を削ってきました。趣味として残ったのは、時間のさほどかからないウイスキーの収集くらい。今では株式投資の評論活動も含めると、生活時間の9割を株に費やしていますね。

そこまでするほど株の何が楽しいのか。それはお金が儲かることではなく、自分の予想が当たることだと考えています。様々なプロセスを経て、立てた予想が的中した時に感じる喜びは、他のものには代えがたいほど大きい。その喜びを再び味わいたくて、株式投資を続けています。

株式投資の評論では、75歳を超えても続けている先輩方がいらっしゃいます。それを見習って、折々の相場についての自分の見方を長く伝え続けていきたいですね。

竹内 私は違った見方をしていて、株式投資をするからにはやはりお金を増やしたい。そう考えると、自分の仕事以外でお金を稼ぐことができる点が大きいとみています。自分の仕事だけでは限界があるから、お金にも仕事をしてもらって、稼いでもらう。銘柄を選ぶのは、自分のお金の就職先を選ぶようなもので、そこから稼ぎを持ち帰ってもらうという感覚を抱いています。

株式投資にはあまり時間を費やさず、育児など他のことに時間を振り向けたい。ですから、保有株に上昇の余地があり続ける限りは、10年でも持ち続けるという姿勢でいます。もちろん、その間はウキウキとしている時間は本当に短くて、含み損に耐えながら株を買い増ししていったり、売り時を逃さないように警戒したりして、心が疲れることも多いのですが。

精神を鍛え、ある程度のレベルになったら達観して、感情を抑えながら株を持ち続ける。それが株のつらいところであり、楽しいところでもあると思っています。

(中野目純一)

[日経マネー2020年9月号の記事を再構成]

日経マネー 2020年9月号 仕込むなら今! 次世代10倍株

著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2020/7/21)
価格 : 750円(税込み)

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン