/

スゴ腕投資家座談会「二番底はあり得る、警戒は必要」

トッププロとスゴ腕個人投資家が真剣トーク(上)

コロナショックから急回復した日本株市場。6月以降はニュースで乱高下する状態が続く。この相場にどう挑むべきか。国内屈指のファンドマネジャーである苦瓜達郎さん。「Bコミ」のハンドルネームでも知られる株式評論家の坂本慎太郎さん。株式投資で億単位の資産を築いた竹内弘樹さん。腕利きのプロと個人投資家の3人に緊急座談会をお願いした。前編ではそれぞれの投資の特色を浮き彫りにした後、足元の相場に対する感触を明かしてもらう。
苦瓜達郎(にがうり・たつろう)さん
三井住友DSアセットマネジメントのシニア・ファンドマネージャー。企業調査歴が28年に及ぶ国内屈指の中小型株ファンドマネジャー。著書『ずば抜けた結果の投資のプロだけが気づいていること 「すごい会社」の見つけ方』(幻冬舎新書)はベストセラーに。


坂本慎太郎(さかもと・しんたろう)さん
こころトレード研究所所長。「Bコミ」のハンドルネームで個人で投資を手掛ける傍ら、株式評論家として活躍する。証券会社ディーラーや大手生保ファンドマネジャーなどを経験。ラジオNIKKEI第1「カブりつき・マーケット情報局」(毎週金曜日)に出演中。著書多数。


竹内弘樹(たけうち・ひろき)さん
売上高が年5~10%、純利益が同10%以上で増加している「中程度の成長企業」の株を割安で購入し、億単位の資産を築く。初心者向けに株式投資の情報を提供するサイト「やさしい株のはじめ方」など複数のサイトを運営するライフパートナーズを起業して経営。著書多数。

──本題に入る前に、それぞれ手掛けていらっしゃる株式投資の特色を教えてください。

苦瓜達郎さん

苦瓜私は公募型の3本をはじめ、計9本の投資信託を運用しています。9本とも、時価総額の小さい中小型株に特化しています。企業の利益に照らして割安な銘柄を買うのが基本で、株価指標ではPER(株価収益率)をひたすら重視して銘柄を選んでいます。割安な株を頑張って持ち続ければいつかは上昇する。しかも上昇の幅は大きい。そういう信念を持って18年間、投信を運用してきました。

坂本 私は若い頃に証券会社のディーラーとして、株を短期売買していました。その後に中長期の運用を経験するためにかんぽ生命保険に転職し、債券と株の投信を運用しました。

それで短期と中長期の両方の運用スキルが身に付いたと考えて35歳で退職し、専業投資家に転身しました。そのうちに投資情報誌やラジオなど様々なメディアから声が掛かり、株式投資の評論を手掛けるようになりました。それ以降は、個人投資家と株式評論家の二足のわらじを履いています。

株式投資の方では、時間がある時は株の売り手と買い手の注文が並んだ「板」の状況を読んで売買する短期投資もしますが、基本は中長期投資です。小型株で業績予想に対する実績の進捗率が高く、投資家の買いが集まりそうな銘柄を先回りして買うのがメインですね。その他、特許などの無形固定資産の価値が高い銘柄を割安になった時に買って値上がりを待つという投資もします。

竹内 私は「やさしい株のはじめ方」という投資情報のサイトを2005年から運営しています。サイトを運営しながら自分でも株式投資を学んでいく。そういうスタンスで株に取り組んできました。

自身の投資手法については「成長バリュー(割安)株投資」と銘打って、10~20%の割合で利益を増やしている成長企業の株を割安に買うことを信条にしています。利益の伸びの目安で20%を上限にしているのは、それを超えると成長が長続きしない可能性が高くなるからです。

苦瓜 私の場合は、グロース株投資と言えるほどには業績の伸びを重視していません。もちろん業績が拡大しているのに越したことはありませんが、業績の伸びよりも足元のPERとその企業の価値に見合ったPERの適正値との乖離(かいり)の大きさを重視しています。

坂本慎太郎さん

坂本私もグロース株投資は手掛けていません。成長企業の株は大体、2~3年先の業績を織り込んでPERが付いています。業績の拡大が期待できなくなると、それを織り込んで株価が下落し、PERも下がります。

足元の業績は好調であっても、将来に対する期待がしぼむと株価が急落し、それまで100倍だったPERが一気に3分の1の水準に下がったりします。個人投資家の中には、成長企業の株を買ってテンバガー(10倍株)を狙うという考えの人がたくさんいます。ですが、そうした人たちは、成長の期待がはげ落ちて株価が急落すると、その直撃を受けて大きな損を被ることが多くあります。

株式市場が全体的に上昇したアベノミクス相場や小泉相場(2003~06年)の初期のように、成長企業の株も割安に放置されている時なら話は別ですが、そうした時以外にはグロース株投資は手掛けない方がいいと考えています。

割安を追求する点は共通

──割安な株を売買しているという点では、3人とも共通されています。割安かどうかはどう判定されているのでしょう。

苦瓜 株の価値の源泉は企業が稼ぎ出す利益ですから、PERで判定するのが王道だと思います。ただし、現時点ではコロナショックで今後の業績についての見通しが立たなくなっている企業が多いので、株価を1株当たり当期純利益の予想値で割って算出する「予想PER」で割安かどうかを判定することは困難になっています。

一方で、世の中の7~8割はコロナショックが起きる前の状態に戻ると考えていますので、コロナショックの前に上げていた利益を基に、企業ごとのリスクも考慮して独自に将来の業績を推定し、足元の株価が割安かどうかを判定しています。

坂本 個人投資家でも中上級者の中には独自に業績を推定できる人もいますが、多くの個人投資家はそうではなく、会社や日本経済新聞などの予想を利用しています。それらの予想が開示されなくなり、多くの個人投資家にとって今の株式市場は「闇鍋」をつつくような状態になっています。個人投資家が今、株を売買するのは難しいでしょう。

竹内 私もお二人と同じような見方をしています。普段はまずPERの水準で振るいを掛けて、割安な銘柄とそうでない銘柄とに分けてから、個々の銘柄を詳しく見ていきます。今は2~3年先に業績がどうなるかをざっくりと算出しようとしています。ぴたりと的中させるのは無理なので、「この会社の業績は2~3年後にこれくらいに回復しているだろう」と見積もり、それに対して割安かどうかを考えるようにしています。

──そもそも、株価が割安かどうかにこだわっているのはなぜですか。

苦瓜 一つは経験でしょうか。バブル崩壊のまっただ中の1991年に株の世界に足を踏み入れて以来、リーマン・ショックをはじめ相場の暴落をいくつか経験し、その度に利益を安定して出し続ける会社が勝ち残る姿を目の当たりにしてきました。

嵐が去った後に、愚直に割安かどうかにこだわって銘柄を選んでいけば、下から風が吹いて押し上げられるように自然に上がっていくのを何回も経験しています。ですから、宗旨変えはせず、割安かどうかにこだわり続けていきます。

竹内弘樹さん

竹内私の場合は、割安な株を買うと価格が下がりにくいからです。先ほど坂本さんがおっしゃっていたように、PERで見て割高な株は、将来の業績に対する懸念が急浮上すると、売りが殺到して株価が急落する恐れがありますから。

PERが40倍や50倍と割高になっていても、成長性の高そうな企業の株はキラキラと輝いて見えるものです。ですが、そうした銘柄には目を向けず、「そこそこの成長で割安な株」という自分の得意なゾーンで有望株を探すようにしています。

坂本 私が割安株投資を好んでいるのは、投資の幅が広いからです。割安かどうかを重視して銘柄を選ぶのであれば、割高な成長株が全体相場の調整に連れ安した時に買うこともできますし、今ならコロナ禍の影響で落ち込んだ業績が1~2年後にある程度回復しそうな銘柄を先回りして割安に仕込むこともできます。このようにいろいろなパターンの投資を実行できます。

(写真:陶山勉)

大幅な上昇を狙うなら中小型株が基本

──銘柄の規模では中小型株を選好されていますが、どんなメリットを感じているのでしょうか。

坂本 中小型株は時価総額だけでなく会社の売り上げ、利益も小さいので、売り上げや利益が伸びれば、PERが大きく下がって割安になり、株価が上昇する可能性が高まります。実際に値動きも軽い。大きな値上がりを期待するなら、中小型株を選ぶのが基本だと思います。

値動きが軽いのは、中小型株を好んで買う個人投資家が多いからです。価格が上昇して時価総額がある程度大きくなると機関投資家も買い始めるので、そこで彼らに買ってもらう形で売却し、売買を終えることもできます。また、中小型株の場合、会社が複数の異なる事業を抱えているということはなく事業構造がシンプルなので、業績の分析が容易である点も魅力でしょう。

竹内 坂本さんの見方に1つ付け加えるなら、株価のブレが大きい点も中小型株のメリットでしょうか。適正な水準を大きく超えて上昇することがありますから、その分まで値上がり益を取ることが望めます。

苦瓜 繰り返しになりますが、中小型株はミスプライシングの度合いが大きくて、いろいろと腕を振るえる余地があることが大きなメリットです。それと株価指数を対象にした先物の売買など、大口投資家の売買の影響を受けて変に価格が動くことがない点も、中小型株のメリットでしょう。

ショック後の上昇には踊らず

──足元の相場は、ニュースで乱高下して先を見通しにくくなっています。この全体相場の状況についてはどう受け止めていますか。

苦瓜 割安株投資が通じにくい相場で苦労しています。こういう相場は10年のうち2年くらいはあるものです。特にショックと名付けられる暴落の後に多い。

ただ、割安株投資が通じにくい今の相場は、コロナショックの後に始まったわけではありません。米国でトランプ政権が発足して、米中摩擦が取り沙汰されるようになったあたりから始まった。成長株と見なされているごく一部の銘柄に資金が集中して、そうした銘柄のPERが異常に高くなり、それ以外の銘柄のPERとの格差が広がって二極化しました。割安株投資が通じないので、今は我慢です。

──コロナショックの後には株式市場が急回復して、過去のリーマン・ショックや東日本大震災で起きた暴落の後とは異なる展開になりました。

苦瓜 暴落でダメージを受けて、その後の上昇局面にも付いていけませんでした。暴落のスピードも反発の速度もめちゃくちゃ速かったですから。急回復に乗れなかったのは残念ではありますが、その負けも中長期では取り返せます。

先に述べたように、私は世の中の7~8割はコロナ禍が始まる前の状態に戻ると思っています。世の中が落ち着いてくればおのずと勝てる。そういう形に、私の運用している投信は既になっていると考えています。

坂本 私は昨年の秋ぐらいから相場の状況に対して警鐘を鳴らしてきました。業績の下方修正が相次いだにもかかわらず、それを無視して買われてPERが異常に高くなっていたからです。ですから、私は債券や金、不動産など複数の異なる資産に分散投資しているのですが、その中で株式投資のウエートを落とし続けてきました。

コロナショックの後に相場は急回復しましたが、その中で際立った上昇を見せたのが、新興企業向け市場の東証マザーズに上場している中小型株です。まずコロナショックの前から我慢して持ち続けていたホルダーたちの投げ売りが出尽くして下げ止まり、自律的に反発した面があると思います。それとマザーズに上場している企業には、コロナ禍の影響を受けにくいところが多い。さらにワクチンの開発など、コロナ関連であることを材料にバイオベンチャーに過剰な期待が集まって、マザーズを押し上げたとみています。

この勢いが続くかどうかは分かりません。投資家の間で「もう限界」というマインドが広がれば、上値は重くなるでしょう。いずれにしても、これから手を出しにくい状況であるのは確かです。

竹内 コロナショックの暴落では、個別銘柄を空売りしてヘッジを掛けていたのですが、相場の戻りが速くて空売りの決済が遅れ、損失を出しました。リーマン・ショックの時の経験から「まだ下がる」と警戒していたのですが、回復のスピードは本当に速かったですね。

マザーズの急騰は初心者の参入も影響したのではないかとみています。昨年に老後資金2000万円問題がクローズアップされ、不安を抱いた個人投資家がコロナショックの暴落を機に株式投資に乗り出した。それが証券口座開設の急増につながりました。マザーズの急騰の背景にも、相場の反発で利益を上げた初心者の方たちがマザーズの銘柄に投資を広げたことがあるのではないでしょうか。

直近の相場では、IPO(新規株式公開)を果たした銘柄の初値が異常に高くなっているので、その反動で相場が急落しないかと懸念しています。でも、今の相場でも投資を続けないと資産を増やせないし、と言って全力で行くのも怖い。ですので、新規の買い付けは控えている状況です。

二番底の可能性も視野に

──これから相場が急転して二番底に向かう可能性についてはどう考えていますか。

苦瓜 これまでの経験に照らすと、急激に上がったものは大抵反落しています。今回も恐らくその例に漏れないでしょう。他に平穏なところがありますから、急騰したところにはここからあえて出て行かなくてもいいと考えています。

竹内 現在の株価の水準と1株当たり純利益はかなり乖離していますので、いつかはそれが解消される時が来ます。ですが、その時期を予測するのは困難です。6月11日に米株式相場が急落して、ダウ工業株30種平均が1800ドル超下がりました。あの時に他の市場にも波及して、不安の連鎖が世界に広がるかもしれないと身構えました。意に反して持ち直しましたが、同様の相場の急落があったら、次はどうなるか。

景気の底割れを防ぐために、世界各国の政府と中央銀行が連携して金融政策と財政政策を総動員して、膨大な量の資金を市場に供給しています。それが、株式市場のバブルを生む一因になっていると思うのですが、これがいつまで続くかも気になります。とにかく今の相場は気味が悪いですね。

坂本 私は、米大統領選が行われる11月までは、ニュースに反応して乱高下を繰り返す相場が続くとみています。ただし上値が重い一方で下値も堅いので、大きく下げる可能性は少ないでしょう。ある程度下がると、「買い時」とみて買い向かう人がたくさんいますから。

それと大きく崩れた時には、東証1部に上場している全銘柄のPBR(株価純資産倍率)が1倍を切ったら、買い下がっていくといいと思います。リーマン・ショックや東日本大震災の時と同様にコロナショックの暴落でも、東証1部の全銘柄のPBRは0.8倍で下げ止まりました。そして1倍を超える水準に回復しています。1倍を切った時点で買い下がっていけば、反発によって値上がり益を得ることが見込めます。

(後編に続く)

(中野目純一)

日経マネー 2020年9月号 仕込むなら今! 次世代10倍株

著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2020/7/21)
価格 : 750円(税込み)

春割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料!

関連企業・業界

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で申し込むログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で申し込むログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で申し込むログイン