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今期業績予想とのつきあい方(苦瓜達郎)

三井住友DSアセットマネジメント シニア・ファンドマネージャー

写真はイメージ=PIXTA

小売りや流通企業を中心に2月期決算企業の2020年3~5月期決算の発表が相次ぎました。しまむら(8227)やローソン(2651)など、第1四半期の発表時に3カ月前の決算発表時は「未定」としていた2021年2月期の業績予想を公表する企業も出てきました。

2月、3月期決算企業のうち売上高か利益のいずれかを公表する企業の割合は13日時点で45%です。5月末時点から3ポイント高まったとはいえ、まだ半数を下回っています。

こうした中で、通常よりは約1週間遅いタイミングとはいえ「会社四季報」の夏号が発行されました。アナリストがカバーしていない中小型株も含めて、とりあえず目安となり得る業績数字がすべての上場企業に対して示されました。業績予想がこれまでの未定からなんらかの数字が示されたのに対し、株式市場は全般的に素直に反応しているように思われます。先行きの見えない状況のもとでは当然のことでしょう。

一定の目安が示されたところで、次に考えるべきことはその精度です。業績予想が出そろったといっても、その前提や数字に対するスタンスはバラバラで、そこを見極められれば大きな投資チャンスになると考えられるからです。

明らかに厳しい状況が想定される企業の中には、「この程度の数字で済むならいいけど……」という印象を受ける例が散見されます。平時においても、厳しい状況下の業績予想は甘めになることが多いので、これは仕方のないことでしょう。もし、そういった企業を発見した場合は、当然のことながらすこし距離を取るべきだと思われます。

逆に、特需を受けた企業に関しては、明らかに上方修正余地が残されていると思われます。たとえば、食品スーパーやホームセンターといった日常生活関連の小売業者は、買いだめやライフスタイル変更に伴う需要発生に加え、値引きや販売促進活動の抑制といった要因もあり、第1四半期には空前の利益を上げる企業が多いでしょう。第2四半期以降は買いだめの反動や競争の再開、戦略的費用の積み増しといった要因が想定されるものの、通期でも大幅な増益となる公算は大きいと思われます。

ただし、現状が投資チャンスと言えるかどうかは、あくまでも株価および中期的な見通しとのバランスによると考えています。好調な月次売上高の発表などによって、これらの企業の株価は4月以降大幅に上昇しているケースが多く、過去の業績から見るとすでに割安とは言い難い水準に達していることが多いからです。投資家にとって今後必要なことは、足元の好調が一時的な特需にすぎないのか、それとも持続的なライフスタイル変更に支えられたものであるのかの見極めだと思います。

個人的には、むしろ小幅減益予想で売り込まれた企業の中に魅力的な投資対象が多く存在するように感じています。業績予想に対する株式市場の反応が素直と指摘しましたが、小幅であっても減益予想に対しては厳しい反応が多かった印象を受けています。

もちろん、単に予想が甘い企業も存在しますが、一方で厳しい環境下でもそれなりに高収益を持続できる事業を有していて、固めに予想を立てても大幅減益にはならないという企業もその中には存在するのです。そういった企業が今期をもし増益で乗り切ることができれば、株価の上昇余地は大きいでしょう。

また、リスクを取り切れる投資家であれば、厳しい状況下で、業績の底が示された企業に投資するのも一案でしょう。たとえば、会社四季報でのきなみ上半期の大赤字が予想されている結婚式場業界はどうでしょうか。新型コロナウイルスの影響で8月までの予約はほとんど延期になりましたが、その関係で9月から来年前半にかけての受注残はむしろ積み上がっています。もちろん新型コロナの本格的な再流行が発生しないことが必要条件ですが、下半期以降はかなり追い込みが効く状況であるとは言えます。

今期業績に関して、次の山は3月期決算企業の4~6月期決算発表シーズンです。そこで初めて会社予想を発表する企業も多く出てくるでしょうし、より細かな綾(あや)も見えてくるでしょう。しかし、繰り返しになりますが、より大事なのは来期以降の見極めであることは言うまでもありません。

プロのポートフォリオは運用に精通したプロが独自の視点で個人投資家に語りかけるコラムです。
苦瓜達郎(にがうり・たつろう)

1968年生まれ。東京大学経済学部卒業後、91年大和総研入社。アナリストとして窯業やサービス業の担当を経て中小型株を担当。2002年に当時の大和住銀投信投資顧問入社。中小型株ファンドの運用に携わる。

[日経ヴェリタス2020年7月19日付]

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