米軍、サイバー・電子戦を強化へ 南シナ海で中国に対抗

トランプ政権
東南アジア
2020/7/16 17:00
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米軍は南シナ海での軍事演習や航行の自由作戦を活発化させている(写真は同海域を航行する空母ロナルド・レーガン(前)と同ニミッツ=AP)

米軍は南シナ海での軍事演習や航行の自由作戦を活発化させている(写真は同海域を航行する空母ロナルド・レーガン(前)と同ニミッツ=AP)

【ワシントン=中村亮、北京=羽田野主】米軍は電磁波による通信妨害を行う電子戦やサイバー分野での作戦を担う特殊部隊を南シナ海周辺に配備する。南シナ海の軍事拠点化を進める中国に対抗する。トランプ政権は南シナ海の海洋権益問題に介入する立場に転じ、軍事面でも対中圧力を強める。

「南シナ海は中国という海洋帝国に属していない」。ポンペオ国務長官は15日の記者会見でこう強調した。「歴史を振り返ると自由主義国家が行動を起こさなければ中国共産党は支配地を拡大する」と主張し、中国への強硬姿勢を鮮明にした。

中国は南シナ海に独自の境界線である「九段線」を設定し、ほぼ全域に主権が及ぶと主張してきた。2010年代以降は人工島の軍事拠点化を加速。南沙諸島のファイアリークロス(中国名・永暑)礁には大型軍港と戦闘機の離着陸ができる3000メートル級の滑走路を整備。西沙諸島のウッディ島(同・永興島)には戦闘機の格納庫を備え、地対空、地対艦など各種ミサイルを配備済みとみられる。洋上での軍事訓練はほぼ日常化している。

こうした動きに対しトランプ政権は13日、南シナ海の海洋権益に関する中国の主張は「完全に違法」とし、従来の中立的な立場を転換させた。米海軍第7艦隊によるとミサイル駆逐艦ラルフ・ジョンソンが14日、南沙諸島付近で「航行の自由」作戦を実施した。

米軍はさらに2021年にも電子戦やサイバー分野での作戦、命中精度を高めた戦術地対地ミサイルの運用など、複数の戦闘領域にまたがって活動する陸軍特殊部隊をインド太平洋地域に派遣する。2部隊を送りうち少なくとも1部隊は南シナ海周辺国に常駐。フィリピンなどが候補に浮上しているようだ。

元海軍高官は南シナ海での有事に備え、中国軍の通信網を混乱させる手段が有効だと指摘する。中国は南沙の人工島に加え、中国本土沿岸部には南シナ海全域を射程に収める中距離ミサイルを配備。このため米軍は、有事の際に南シナ海への接近が困難にならないよう通信網を乱して中国に米軍の位置情報をつかませない戦略が必要になる。

南シナ海への接近が困難になった場合は遠方からのミサイル攻撃で対抗する。ホワイトハウスに近いジャック・ケーン元陸軍副参謀総長は、中国に対抗し地上配備型の中距離ミサイルをインド太平洋地域に配備することがトランプ政権の確立した方針だと指摘する。米国は19年に中距離核戦力(INF)廃棄条約を失効させ、中距離ミサイルの開発を進める。今後は配備先をめぐりアジア諸国と協議に入る。

米軍は、南シナ海が中国軍潜水艦の安定的な活動拠点になることも懸念する。中国の戦略原子力潜水艦に搭載された潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)は米本土を狙っており、中国が南シナ海の実効支配を強めて米軍の行動が縛られれば中国戦略原潜の所在を探知しにくくなる恐れがある。

米国は10年代前半に本格化した中国の南シナ海の実効支配への対応で後手に回ってきた。オバマ政権下で太平洋艦隊の情報部長を務めたジェームス・ファネル氏はオバマ政権がアジア重視の姿勢を掲げたものの実際には「目に見える行動は何もしなかった」と批判する。トランプ大統領も南シナ海問題への関心は薄く、中国への強硬姿勢を長期にわたり維持できるかどうかが中国抑止のカギを握る。

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