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SDGs、試される企業 コロナ禍でマネーの選別加速

SDGsが変えるミライ

国連が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」は、目標期限の2030年まで10年を切った。取り組みを加速させるため、機関投資家がSDGsに貢献しているかどうかで、企業を選別する動きを強めている。環境や社会に配慮するESG投資とSDGsがより強固に結びつく新たな段階に入った。

17の目標 期限は2030年

オランダの運用会社APGは7月6日、企業のSDGs実現に対する貢献度を評価する枠組み「持続可能な開発投資(SDI)アセットオーナープラットフォーム」を作ったと発表した。オランダの運用会社PGGM、オーストラリアの年金基金、カナダの運用会社も参加し、運用資産は合計1兆ドル(約110兆円)にのぼる。

SDGsはSustainable Development Goalsの略で、2015年9月の国連サミットで採択された30年までの国際目標だ。「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」など17の大きな目標があり、その下に具体的な169のターゲット、さらに232の指標が設定されている。

貢献度の高い企業への投資、容易に

APGなどはまず169のターゲットのうち投資に適するものを選び、各ターゲットに貢献する製品やサービスとひもづけた。他のターゲットに悪影響を与えないことも条件とし、該当する製品・サービスの売上高をその企業の貢献度にしている。1つの企業が複数の製品・サービスを通じて、複数のターゲットに貢献する場合は、合計の売上高がその企業の貢献度になる。

評価対象は世界の約8000社。共通の定義や分類、データを用いて評価することで、投資家はより貢献度の高い企業に資金を振り向けたり、ポートフォリオ全体の貢献度を測定したりできるようになる。

上位にノルウェーやベルギー企業

SDGsで評価が高いのはどんな企業か。たとえばノルウェーのトムラ。センサー技術を活用して、飲料容器や古紙の自動回収機のほか、廃棄物や混合金属からリサイクル材料を選別する機械などを手掛ける。ベルギーのユミコアは排ガスを浄化する自動車用触媒などを提供しているほか、20種類以上の金属を回収して再利用している。SDGsの12番目の目標「つくる責任 つかう責任」では廃棄物の管理や削減を掲げており、これらの企業が貢献するとみられる。

投資家の間で、SDGsへの関心は急速に高まっている。ESG投資を推進する国際団体、責任投資原則(PRI)によると、責任投資原則に署名しPRIへ報告をしている機関のうち、SDGsに言及したのは直近で650と、19年から5割以上増えた。

JR東は9位、TOTOなど18も対象に

SDGsを企業の評価に加える機関投資家も増えている。オランダの年金基金ABPは、25年までに運用資産の2割をSDGsに貢献する企業に投資する目標を掲げる。日本生命保険はESG関連の債券投資や融資の際に、SDGs達成の後押しになるかを判断基準にする。また、仏ナティクシス傘下で責任投資専門の運用会社ミローバは、SDGsにマイナスの影響を与える企業を投資対象から外す。

SDGsへの貢献度が高い企業には資金が流れやすい仕組みが整ってきた。株価指数に連動した投資もその1つだ。例えば、米市場に上場する「iシェアーズ MSCI グローバルインパクト上場投資信託(ETF)」は、米指数会社MSCIのSDGs関連指数への連動を目指す。世界の企業のうち、MSCIのESG格付けが7段階中で下から3番目の「ダブルB」以上などの条件を満たしたうえで、SDGsに貢献する製品やサービスの売上高が全体の5割以上を占める企業に投資する。

同ETFの組み入れトップは17日時点で米電気自動車(EV)メーカーのテスラ。走行中に排ガスを出さないEVはSDGsが掲げる気候変動対策につながる。4位の上海蔚来汽車(NIO、ニオ)もEVの設計や製造、販売を手掛ける。日本企業ではJR東日本が9位に入る。鉄道は自動車や飛行機よりもCO2排出量が少ないうえ、運営するオフィスが省エネルギーの認定を受けている。このほか、JR東海日本ハム、TOTOなど18の企業や不動産投資信託(REIT)が投資対象になっている。

こうした取り組みの背景には投資家の焦りがある。環境や社会問題の解決に資するとESG投資を推進してきた。にもかかわらず、気候変動問題はさらに深刻になるなど、成果があらわれていない。SDGsという世界共通の目標を活用すれば、実社会への投資の効果を確認しやすい。見せかけだけで中身を伴わないESG投資を除外する効果も期待できる。

「道のりの3分の1まできたが」

新型コロナウイルスの感染拡大は、SDGsの達成を難しくしている。国連は7日に公表した「持続可能な開発目標(SDGs)報告2020」で、「道のりの3分の1まできたが、世界は30年までの目標達成の軌道に乗っていない」と指摘した。

新型コロナの発生前は、妊産婦や子どもの健康促進、電力へのアクセス拡大、女性の政府への参画増大などで前進があった。ところが、コロナは貧困、医療、教育の分野で数十年分の前進を帳消しにしてしまうという。今年、7100万人が極度の貧困に陥るとみられ、1998年以来、初めて世界で貧困が増加に転じる。児童労働も20年ぶりに増加しかねない。

新型コロナでマネーによる選別加速

投資や事業が、SDGsに寄与するかどうか証認する取り組みも進んでいる。国連開発計画(UNDP)が年内にまとめる「SDGインパクト」では、未上場株ファンド、債券、企業活動に一定の基準をもうける。第三者機関が基準を満たしているかどうかを判断し認証を出す。投資や事業に「お墨付き」があれば、もっと投資を呼び込めると期待する。UNDPは同時に国ごとにどの目標に対する投資が必要かを示す「投資機会マップ」の作成も進めている。

コロナ禍は投資家の環境・社会問題に対する関心をいっそう高めた。米航空会社は大規模な自社株買いの末に資金難に陥り大量解雇に動いている。雇用を守り、感染防止策を徹底する企業の方が、優秀な人材を確保でき長い目では成長するという見方を投資家は強めている。気候変動問題への危機感も強まった。欧州などは環境に配慮した経済回復を目指しており、環境に資する企業は政策の追い風が吹きやすい。

新型コロナと相次ぐ評価基準や認定制度の導入で、SDGsに貢献する企業とできない企業の選別はますます加速しそうだ。

(ESGエディター 松本裕子)

「SDGsが変えるミライ」
BSテレビ東京では日経スペシャルとして特番『 SDGsが変えるミライ~小谷真生子の地球大調査~』を7月31日に放映、今後もシリーズ化します。それに合わせ本コーナーではSDGs関連記事をピックアップし、お届けいたします。

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