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巣立て、国際スポーツ人材 民間組織が若手の能力磨く

世界のスポーツ界のリーダーとなる若者を育てるための民間組織が誕生した。経営者や海外の人との対話の場をつくり、広い視野やコミュニケーション能力を育む。国際的な人材の不足という、日本のスポーツ界の課題に一石を投じられるか。

「皆さんが関わっていきたいソーシャルイシュー(社会的な課題)は何ですか? そこにスポーツがどう貢献できるでしょうか?」。6月半ばに開かれたビデオ会議。スポーツ団体や国際企業などのトップを夢見る大学生の質問に、企業経営者らが真摯に答えた。

一般社団法人「Global Skippers」(グローバルスキッパーズ)は、国際スポーツ界で活躍できる25歳以下の若者を育てるため、6月に設立された。

若手のスポーツ人材を育成する「グローバルスキッパーズ」を設立した中田宙志さん

発案者は、昨年のラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会組織委員会の中堅幹部だった中田宙志さん。総合商社をやめてスポーツ界に飛び込んだ中田さんが、W杯で人事などの業務をしていて痛感したのが、国際人材の不足だった。「(国際統括団体の)ワールドラグビーから『日本には国際スポーツイベントの専門家がいない』とずっと言われ続けた。大会の準備を進める中、グローバルな人材を育てる必要性を痛感した」と話す。

日本のアスリートの海外進出は進んでいるが、各競技の国際統括団体などで活躍する人は少ない。スポーツ庁や日本オリンピック委員会(JOC)も育成事業を行っているが、道半ばだ。

中田さんが特に必要と感じたのが、若い世代の支援だった。「世界のスポーツ界は人材の見極めが早い。30代前半で成果を出していないと、将来的に国際団体の幹部になるのは難しい状況になっている」

シンクタンクのソフィアバンク代表でJリーグ理事も務める藤沢久美さんらに声を掛け、グローバルスキッパーズを設立。アドバイザーには著名な投資家らも入る。

「スキッパーズ(主将)」と名付けた若手メンバーは現在10人。山岸遥子さんは英国の名門ラフバラ大を卒業し、9月から国際オリンピック委員会(IOC)がスイスで運営するスポーツマネジメントの大学院に進む。社会人向けのコースだが、年に1人ほどは卒業直後の学生も迎える。この枠で入学するアジア人は珍しいという。

IOCが運営する大学院に入学する山岸遥子さん

修了後は欧州のスポーツ業界で就職し、スポーツで世の中を良くしたいと山岸さんは話す。「世界中で社会的な分断が問題になっているが、スポーツのようなエンタメには人々をユナイト(結合)する力がある。その力を生かしたい」

既に国際スポーツイベントに関わる活動をしているのが、仏リール大大学院に通う岩沢健太さん。昨年のラグビーW杯では、来日する地方議会議員の案内役を担った。2024年パリ五輪でも、ホストシティーを目指す自治体が海外チームを誘致する際のサポートをしている。

仏リール大大学院に通う岩沢健太さん

世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)のスポーツ版を目指し、今年フランスで始まった「グローバル・スポーツ・ウィーク」にも参加。50人の若手リーダー「ヤング・スポーツ・メーカー」の一人として出席した。今後はフランスに残り、日仏のスポーツ界の懸け橋となることを目指す。「五輪もラグビーW杯も開かれる国なのに、日本にはフランスのスポーツビジネスの専門家がほとんどいないので面白い」と目を輝かせる。

将来有望な選手だったメンバーもいる。慶大生の古田京さんはラグビーの元高校日本代表で、大学でも主力のSOだった。4年の時には医学部生として同校初の主将も務め、話題になった。トップリーグ入りも期待されたが、スパイクを置いて医学の道を選んだ。

元慶大ラグビー部主将で同大学医学部に通う古田京さん

文武両道を地でいく古田さん。「自分には医療とスポーツを本気でやってきた強みがある。リーダーシップや、チームの中で仲間の良さを引き出すことにも自信がある」と話す一方、迷いも抱えているという。

グローバルスキッパーズの理事とのビデオ会議では「地域創生にも興味があって軸足を決め切れていない。自分の強みを生かせることがしたいけれど、明確な目標がなくて、後ろめたさを感じている」と告白。各理事に「20歳代の頃はどんな夢を持っていましたか?」と尋ねた。

コンサルティング会社、経営共創基盤の共同経営者である木村尚敬さんが丁寧なアドバイスを送った。「明確にこれがやりたいというのがなくてもいい。基礎体力を積み上げないといけない時期もある。やってきたことを積み重ね、40歳代くらいにこれかなというのが見えてくると思う」

アドバイザーは、各メンバーが手掛ける事業へのコンサルティング的な助言もしている。他にも、これまでに8カ国のヤング・スポーツ・メーカーとメンバーのウェブ討論会なども開いた。グローバルスキッパーズは今後、アジアのメンバーの受け入れや、海外のスポーツ団体との提携も検討中。世界を股にかけて活躍する人材がここから巣立つことが期待される。

(谷口誠)

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