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待望の7月場所、我慢の日々が報われる場所に

19日に両国国技館で初日を迎える大相撲7月場所で、4カ月ぶりに相撲の日常が戻ってくる。新型コロナウイルスの影響で夏場所が中止となり、我慢の日々を過ごしてきた力士や関係者にとっては待望の本場所だ。都内でも多くの感染者が出ている中で油断はできないが、角界がさらに先へと前進していくためにも無事に千秋楽まで乗り切りたい。

7月場所に向け、幕下以下の力士と稽古する朝乃山(日本相撲協会提供)=共同

無観客で開催した3月の春場所後に帰京して以降、私が部屋から出て外を歩いた回数は5度もない。必要な買い物や腰の治療などで外出した以外は、ずっと部屋にこもっていた。弟子たちが外出制限で苦しい状況に置かれているのに、自分だけが自由に行動するわけにはいかない。どこにも行けない毎日は、出無精の私でもさすがにきつかった。まして10代や20代の若手にとっては非常にストレスのたまる4カ月間だったはずだ。

緊急事態宣言解除後、より引き締めた相撲界

日本相撲協会の方針に沿って力士たちは皆、厳しいステイホーム生活を送ってきた。日ごろの買い出しは1人か2人だけで最低限の回数に抑え、24時間ずっと部屋の中で過ごすのが基本。私の弟子には整骨院などでの治療も最近まで控えさせていた。息抜きのタイミングがないのはつらかったと思うが、高田川部屋の力士1人が亡くなってしまったように、どれだけ気をつけても感染してしまうこともある。相撲界は団体生活なので、なおさら注意して行動しなければならない。

政府の緊急事態宣言が解除されてから、世間は警戒を緩める傾向にあったようだが、逆に我々はより一層気を引き締めていた。出歩く人が増えるということは、買い出しなどの際に無症状の感染者と接触してしまうリスクも高くなるということだ。力士は土俵で相撲を取ってなんぼ。何としても本場所を迎えるためにも、細心の注意を払って乗り越えていく必要があった。

そんな生活面の制約に加えて、力士にとっては稽古が満足にできないこともストレスになっていた。接触を控えるため、4月以降は相撲を取る稽古ができない期間が続いた。その間にできたのは四股やてっぽう、すり足という相撲の基礎運動ばかり。5月に入って相撲協会から「師匠の判断で接触する稽古を取り入れてもよい」と通達が出たものの、やらせてみると空白期間のせいで体のあちこちに痛みが出る力士も多かった。そこから再び基礎中心の内容に戻すなど、様子を見ながら慎重に稽古内容を調整せざるを得なかった。

四股やてっぽうなど、基本的な稽古しかできない日が続いた。写真は朝乃山(日本相撲協会提供)=共同

やりたい稽古ができずに不満を募らせた力士もいるかもしれないが、考え方次第ではプラスになった面もある。四股などの基礎運動はけがをしない体をつくるために欠かせず、地力の向上にもつながる。すぐに目に見えて結果が出るわけではなく、10代の若手力士には重要性を簡単に理解できなかったとしても、この経験がきっと生きてくるはずだ。体を休める時間を十分にとれたことで故障の回復を図ることもできた。基礎で体をいじめ抜き、しっかり休養をとることで体をつくり直せたという力士もいるのではないか。

6カ月ぶり、観客の前で相撲ができる喜びをぶつける

こうやって本場所を迎えられるのも、みんなが我慢に我慢を重ねて感染予防に努めてきたからだ。900人近い相撲関係者を対象とした抗体検査でも過去に感染歴があるとされたのは5人だけで、現時点でウイルスの陽性者はいないということだった。それは皆が自粛生活をきちっと守ってきたということを示しているのだと思う。その努力が報われるような場所になればいいと願う。

東京・両国国技館正面に設置された大相撲7月場所の御免札=共同

初場所以来、半年ぶりに観客の前で相撲を披露できるという喜びも大きい。闘志が湧き上がって張り切る力士もいれば、久しぶりで緊張してしまう力士もいるだろう。それでも全員が、相撲ファンという存在の大切さを思い知らされるはずだ。会場に足を運んでくれたりテレビで応援してくれたりする人たちのおかげで相撲が成り立っていて、自分たちが支えられていると気づく良い機会になったともいえる。

弟子たちには、たまっているものを全部バシッとぶつけてこいと言いたい。場所前の出稽古に行けず調整が難しい部分があったのは間違いないが、どんな状況でも体調を整えて相撲が取れるところを見せるのもプロの役割だ。本場所を迎えられるありがたみをかみ締めつつ、今までやってきたことを土俵の上で全てぶちまけるくらいの気持ちで臨んでもらいたい。

(元大関魁皇)

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