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リニア静岡工区遅れで3つの代替案 実現難しく混迷も

リニア中央新幹線計画の混迷が深まっている。JR東海は静岡工区について6月中に工事再開ができなければ「2027年の開業が困難」としていた一方、15日の会見で金子慎社長は延期の正式表明を避けた。静岡県内では県を迂回するルート変更など大別すると3つの代替案の議論も出始めているが、現状はいずれもハードルが高い。

リニア中央新幹線

「仮に遅れたとしても、早期の開業を目指していく」。この日の会見で金子社長はこう強調した。静岡工区は大井川の水量減を懸念する静岡県が一貫して工事の再開を認めていない。

10日、計画を認可した国土交通省の藤田耕三事務次官は静岡県の川勝平太知事と対談し事態の打開を図った。この場でも工事再開は認められず、省と流域市町が直接対談する可能性は残された。

国交省やJRと県の協議が平行線をたどり続けた場合、解決に向かう代替案の考え方は大きく3つある。一つがルート変更だ。知事は次官との会談で「自然環境の保全とリニア開通を両立する一つの考え方」と切り出した。県議からも同様の意見が出始めている。

ただ、変更は容易ではない。実際にするとなると、環境評価、地層や地盤の強度を測るボーリング調査、用地確保といった複雑な手続きが必要だからだ。関係者からは「数年単位」、「10年」といった開業延期が必要との声が挙がる。金子社長もこの日の会見で「ルート変更はありえない。全国新幹線鉄道整備法に基づいて11年からルートを決めている」と強調した。

まずは東京(品川)―甲府までの先行開業を唱える声もあるが、金子社長は「新たな施設を作る必要があり、運営しがたい」との見解を示す。

ルートを変えるのではなく、県が懸念する川の流量減を補うのも一つのアイデアだ。大井川では東京電力が管理する田代ダムなど、複数のダムが川の水を取水している。JRが工事によって出た流量を電力会社から補てんしてもらうことにより、相殺すれば良いとの考え方もある。

ただこれも電力会社などとの折衝が必要な上、ダムの渇水時は解決につながらない。「我々から積極的に要請することは難しい」(JR幹部)、「それで済む話でもない」(県関係者)と、JRと県からも否定的な声が目立つ。

金銭的な補償はどうか。水資源に絡む公共工事は影響が出た場合、一般的に完了後1年以内に申請すれば、最長30年の補償を受けられる。JRは20年2月、今回の補償ではこうした申請期限を設けないと表明した。

また、過去には自然環境保全基金の創設や、東海道新幹線に静岡空港の新駅を設置するといった、JRが負担する県への「代償」が議論に挙がったこともあった。

ただ、これらは多くの関係者が納得を得る計画の策定に時間がかかる。「補償や代償より、まずは水影響を徹底的に議論する方が先」との声は根強い。

金子社長は会見で、補償案について「いずれ重要な話の1つになる」との見方を示しつつ、「水影響については引き続き議論していく」と意気込んだ。リニアの27年の開業は絶望的でも、目の前の水環境の課題に真摯に向き合うのが最善という状況に変わりはなさそうだ。

(野口和弘、高畑公彦)

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