大阪大と興部町がふん尿からメタノールを生産、世界初

2020/7/15 19:00
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記者会見する大久保敬・大阪大学教授(右)と硲(はざま)一寿・興部町長(15日、興部町)

記者会見する大久保敬・大阪大学教授(右)と硲(はざま)一寿・興部町長(15日、興部町)

北海道興部町と大阪大学は15日、牛のふん尿から発生するメタンガスからメタノール・ギ酸の製造にこのほど世界で初めて成功したと発表した。生乳の品質が落ちる原因だったふん尿処理とエネルギー調達の課題を同時にクリアできる。今後、5年以内を目標に量産化を目指す。

メタノールはこれまで国内生産できず輸入頼みだった。生成したメタノールは常温・常圧だと液体になり、貯蔵が利くため燃料電池の燃料として使える。ギ酸も牛の餌の水分調整に使えるほか、水素に変換する技術の開発が進めばエネルギーとして利用が期待される。

大阪大学の大久保敬教授は15日に興部町内で開いた会見で「量産化に成功すれば日本はエネルギー大国に変われる」と訴えた。興部町の硲一寿町長も「バイオガスを燃料に売電しながら、メタノールを販売すれば地域貢献になる」と期待を込めた。

バイオガスからメタノール・ギ酸をほぼ無駄なく取り出せる(15日、興部町)

バイオガスからメタノール・ギ酸をほぼ無駄なく取り出せる(15日、興部町)

北海道の酪農地帯では離農が相次ぎ、酪農家の集約が進んでいる。オホーツク海に面する興部町では大規模化に人手が追いつかず、ふん尿を処理しきれないことが課題だった。ふん尿が放置されると、悪臭や環境汚染、生乳の品質悪化などの原因となる。

大阪大学の大久保教授は18年に世界で初めて、常温・常圧下で空気とメタンからメタノールとギ酸を低コストで作り出すことに成功した。動物由来のバイオガスから製造に成功するのは今回が初めてで、回収率は99%とほぼ無駄がない。

通常、メタンガスと酸素を反応させると燃焼反応が先に起きてしまうためメタノール製造は「夢の研究」(大久保教授)とされてきた。大久保教授らはフッ素系の溶媒の中で二酸化塩素に光を照射することで得られる物質をメタンガス、空気と作用させることでメタノールとギ酸を取り出した。

今後2者は化学企業と組んで量産化技術を5年以内に確立。全国で販売に乗り出す。試算では、年間80トンのメタノールと、400トンのギ酸が製造可能という。

興部町は札幌からJRやバスを乗り継ぎ約5時間。興部町周辺では年間134億円が化石燃料の購入費などで域外に流出している。ふん尿の活用法としてはバイオガス発電して北海道電力に売電する方法もあるが、送電網の容量が足りず接続できない状態だった。

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