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EV充電インフラに脚光 スタートアップ投資過去最高

CBINSIGHTS
電気自動車(EV)の充電設備を手掛けるスタートアップが勢いを増している。1~6月の資金調達件数は新型コロナウイルス禍のなかでも26件に達しており、通年で過去最高となる見通しだ。充電インフラの整備が進めば、EVの普及が一段と促されそうだ。

クルマの電動化は依然として大手自動車メーカー各社が最も力を入れている分野だ。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

原油価格は過去最低の水準にまで下がっているが、中国と欧州での規制の後押しや、バッテリーコストの低下により、EVの価格は手ごろになっている。

こうした追い風にもかかわらず、EVの普及はまだ本格化していない。消費者が1回の充電で走行できる航続距離になお不安を抱いているのが一因だ。

航続距離への不安を軽減する一つの手段は、EVの充電インフラを十分に整備することだ。そのため、EV充電設備を手掛ける企業のエコシステム(生態系)が形成されている。

こうしたスタートアップはここ数カ月、勢いを増している。20年1~6月の資金調達件数は26件に達しており、通年では過去最高だった19年の31件を上回る見通しだ。

EV充電スタートアップへの資金流入が増えている (15年~20年6月30日のEV充電スタートアップの資金調達件数)

この勢いの背景には、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)による経済的影響で、クリーンテックの他の分野が一時解雇(レイオフ)やコスト削減に直面していることがある。EV充電がコロナ禍による景気低迷の影響を比較的免れているのは、投資家がEVを長期的に有望視していることを示している。

今回のリポートでは、EV充電の分野に優先的に取り組んでいるスタートアップ、企業、自動車メーカーを取り上げる。

充電エコシステムのスタートアップの活動

スタートアップは様々な角度からEV充電に取り組んでいる。充電ステーションの建設(一般用、住宅用、オフィス用を含む)のほか、充電ステーションを管理し、エネルギーの流れを最適化するソフトウエアの開発などがある。

・充電インフラの整備

EV充電スタートアップの大半は、一般用または住宅・オフィス用の充電設備を手掛けている。

英トロージャン・エナジー(Trojan Energy)やベルギーのプラグインベスト(Pluginvest)など、一般用充電設備を手掛けるスタートアップはここ数週間、新たな資金調達ラウンドを発表している。

(出所:トロージャン・エナジー)

住宅用やオフィス用の充電設備を開発しているスタートアップも、この数カ月で資金を調達している。

スペインのバルセロナに拠点を置くウォールボックス(Wallbox)は5月、シリーズAの追加ラウンドでスペインの電力大手イベルドローラなどから1300万ドルを調達した。ウォールボックスは壁掛け式のEV充電機器を開発している。

ウォールボックスの壁掛け式充電機器(出所:同社)

さらに、英石油メジャーのBP傘下のBPベンチャーズが出資する米フリーワイヤ・テクノロジーズ(FreeWire Technologies)は、シリーズBと借り入れにより2500万ドルを調達した。調達資金はインフラ設置コストを削減できる「超高速」充電器の商用化に充てる。

・充電設備の管理

スタートアップ各社はEV充電を円滑化し、最適化するソフトウエアの開発にも取り組んでいる。

イスラエルのテルアビブに拠点を置くドライブズ(Driivz)は2月、1100万ドルを調達した。同社は充電ステーション運営会社向けの充電網管理プラットフォームの開発に取り組んでいる。2月のラウンドでは、ガソリン計量器大手の米ギルバーコや英ガス供給・販売のセントリカなどが出資した。

ドライブズの充電管理プラットフォーム(出所:同社)

各社は車両管理の観点からも充電管理に取り組んでいる。シリーズAで1320万ドルを調達した米アンプライ・パワー(Amply Power)は、エネルギーコストを最低限に抑えるためにクルマの充電を最適化し、充電情報をまとめるソフトウエアを開発している。

脱石油に備えるエネルギー企業

エネルギー企業もEV充電に資金を投じている。

石油メジャーの英BPや英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルに加え、イベルドローラ、仏電力大手EDFは一般用のEV充電ステーションの建設を支援している。

石油メジャーが充電ステーションの建設に寄与しているのは、既存のガソリンスタンドの立地を生かしたり、スタートアップへの出資や提携で充電能力を統合したりできるからだ。

シェルのEV充電スタンド=ロイター

シェルは特にEV充電分野への投資に積極的だ。

・19年1月には、米カリフォルニアに拠点を置くグリーンロッツ(Greenlots)を買収した。グリーンロッツはEV充電ステーションを建設・維持管理するソフトウエアを開発している。北米で電動モビリティー事業を拡大するのがシェルの買収の目的だ。

・17年10月には、オランダのニューモーション(NewMotion)を買収した。ニューモーションはオランダ、ドイツ、フランス、英国で住宅や企業向けのプライベートの充電設備を運営する。

シェルは太陽光発電によるEV充電ステーションの開発にも取り組んでいる。実用化を果たせば、EVと充電インフラの二酸化炭素(CO2)排出量はゼロになる。

BPも買収に積極的だ。18年には英チャージマスター(Chargemaster)と同社の充電ステーション7000カ所を1億7000万ドルで取得した。一定の認証を得られれば、BPのガソリンスタンドにフリーワイヤの充電設備「ブースト(Boost)」も設置する。

電力会社では、イベルドローラが3月、1億7000万ドルを投じて自前の高速充電ネットワークを開発する計画を発表した。さらに、EDFは英国とノルウェーで充電設備を展開する英ポッドポイント(Pod Point)の過半数株を取得した。

自動車メーカーも大いに関与

自動車メーカーも充電ステーション建設に投資している。前述したように、航続距離への不安が軽減すれば、自社のEV普及が進むからだ。

米EV最大手のテスラを除けば、独フォルクスワーゲン(VW)がこの分野で最も積極的な自動車メーカーの一つだ。

VWの米EV充電ネットワーク「エレクトリファイ・アメリカ(Electrify America)」はワシントンDCからロサンゼルスまで2700マイルをカバーする同社初の全米横断EV高速充電網だ。エレクトリファイ・アメリカの充電ステーションはあらゆるEVに対応している。一方、テスラの充電ネットワーク「スーパーチャージャー(Supercharger)」はテスラ車しか使えない。

VWは最近、EV「ID.3」の自宅での充電に乗り出し、近く「ID.3の充電ネットワーク」が完成すると強調した。

さらに、独ダイムラーと独BMW(米石油メジャーのシェブロンと独シーメンスも)はともに、充電ステーションを運営する米チャージポイント(ChargePoint)に出資している。チャージポイントは全米各地で一般用やビジネス用の充電設備を進めている。

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