米、ドルで中国締め付け 香港巡り8つの金融制裁検討

2020/7/15 7:29 (2020/7/15 7:42更新)
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米国の香港自治法は中国の金融機関のドル取引を停止させることも可能になる=ロイター

米国の香港自治法は中国の金融機関のドル取引を停止させることも可能になる=ロイター

【ワシントン=河浪武史】トランプ米大統領が14日署名して成立した「香港自治法」は、中国の大手銀行への金融制裁に道を開く。米銀との取引を禁じる8つの手法を列挙した。ドル調達の封じ込めという中国への強烈な「脅し」だが、実行すれば世界の金融システムに亀裂が入りかねない。

香港自治法に盛り込まれた米当局の経済制裁は2段階ある。米国務省は90日以内に、香港の自由や自治を侵害した個人や団体を特定し、ドル資産の凍結などの制裁の可否を検討する。米共和党は制裁対象として、中国共産党・最高指導部の韓正副首相(香港担当)らを視野に入れる。

2次制裁として、その個人や団体と取引がある金融機関も対象となる。香港自治法は具体的な制裁手法を挙げており(1)米銀による融資の禁止(2)外貨取引の禁止(3)貿易決済の禁止(4)米国内の資産凍結(5)米国からの投融資の制限(6)米国からの物品輸出の制限――など8項目が決まった。

取引断絶などの措置をとれるように制裁発動まで1年間の猶予を金融機関に与える。対象を中国金融機関に限っていないが、中国銀や中国工商銀、中国建設銀など巨大銀行に照準を当てる。

同法を主導した共和党のトゥーミー上院議員は「中国経済の将来はドル取引にかかっている。中国の巨大銀行がドルより(香港の)迫害者との取引を優先するならそうすればいい」と言い放つ。

基軸通貨ドルの封じ込めは、中国への強烈な脅しとなる。ブルームバーグ・インテリジェンスによると中国国有四大銀が抱えるドル資金は1兆1000億ドル(約118兆円)。中国企業の貿易決済を担うだけでなく、新興・途上国でのインフラ投資など「一帯一路」の資金の出し手だからだ。

野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「最悪のシナリオを想定すれば、海外事業を手がける中国企業が米ドルの送金をできなくなる可能性がある。当然、中国の貿易はしぼむ」と指摘。「中国がデジタル人民元の国際化に積極的なのはそのゆえんかもしれない」と語る。

米国内には米連邦準備理事会(FRB)とウォール街がそれぞれ主体の2つのドル決済網がある。両者の1日当たりの取引額は3兆ドル超で、中国の巨大銀は決済網からはじき出されれば途端にドルの資金繰りに窮する。

中国の大手銀をドル経済圏から排除すれば「中国の銀行不安に直結し、国際的な金融システムそのものが揺らぎかねない」(米財務省幹部)。米当局は対北朝鮮制裁で中国の丹東銀行(遼寧省)をドル決済網から締め出したことがあるが、大手銀には制裁を科さなかった。中国のドル調達を締め上げる今回の制裁手段も、影響力が甚大すぎて「抜かずの宝刀」となる可能性がある。

日米欧の金融機関への影響も未知のリスクだ。中国が制定した香港国家安全維持法には「外国勢力との結託」を禁じる項目があり、米制裁の回避に動けば、逆に中国から報復措置を浴びるリスクもある。米中の亀裂は、国際金融システムの弱点となりかねない。

香港では米欧金融機関などが米制裁につながる個人や法人取引の洗い出しに入った。関係者によると主にマネーロンダリング(資金洗浄)対策で収集した情報をもとに点検している。

日本のメガバンクも適用となる公算が大きい。制裁対象となる金融機関がこれから指定され、具体的な運用方法が不透明ななか「現時点で大きな影響は見込んでいない」(メガバンク担当者)との受け止めだ。

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