米、南シナ海介入へ転換 中国の領有権主張「違法」

トランプ政権
2020/7/14 19:55 (2020/7/15 5:14更新)
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トランプ米政権が南シナ海の海洋権益に関する中国の主張を「完全に違法」と否定した。従来の中立的な立場を転換し、中国と権益を争う東南アジア諸国の支持を明確にした。違法な活動に関わる中国企業などへの制裁へ環境整備を進める。

中国は新型コロナウイルスへの対処に追われる周辺国の間隙を突く形で南シナ海での勢力圏を伸長させている。米国の立場転換はその動きを食い止めるのが狙いで、南シナ海での米中対立は新たな段階を迎えた。

ポンペオ米国務長官は13日の声明で「世界は中国が南シナ海を自らの海洋帝国として扱うのを認めない」と明言。南シナ海での領有権を巡る中国の主張を否定した2016年7月のオランダ・ハーグの仲裁裁判所の判決に「米国の立場を一致させる」と強調した。

今回の声明は判決から12日で4年を迎えたのにあわせて出した。南シナ海を巡っては、これまで米国は当事者に国際法を尊重した平和的な解決を促してきた。ポンペオ長官はフィリピンやベトナムなど中国と海洋権益を争う国を支持し、中国の主張を初めて全面否定する立場を明確にした。

ポンペオ国務長官は、南シナ海における中国の主張を初めて全面否定した=AP

ポンペオ国務長官は、南シナ海における中国の主張を初めて全面否定した=AP

米戦略国際問題研究所(CSIS)のボニー・グレイザー上級顧問はツイッターでポンペオ長官の声明は「中国の行動に強力に対処する法的根拠を与える」と指摘した。南シナ海ではベトナムの排他的経済水域(EEZ)で中国船が調査活動をしたり、フィリピン漁船が中国船に衝突されて沈められたりしている。米国は今後、関わった中国の企業や組織、個人に制裁を科す可能性がある。

中国外務省の趙立堅副報道局長は14日の記者会見でポンペオ長官の声明に「米国が南シナ海の平和と安定を破壊している」と猛反発した。

中国側では数日前から連日のように南シナ海とその上空の脅威を主張する宣伝を国営メディアなどが繰り広げる。6~8日まで3日間続けて米軍の電子偵察機などが中国大陸に接近したと指摘。国営メディアが盛んに取りあげる理由について、北京の外交筋から「南シナ海の防空識別圏の設定に向けた布石では」との見方も出ている。

防空識別圏は領空に近づく航空機を識別するための空域で、戦闘機の緊急発進(スクランブル)の判断基準になる。中国外務省の趙副報道局長は6月22日の記者会見で「それぞれの国は防空識別圏を設定する権利を持つ」と述べていた。

中国の習近平(シー・ジンピン)政権は南シナ海問題をどうしても譲れない「核心的利益」と位置づけるが、台湾やチベット問題などと比べて優先順位は劣ると米国はみる。強硬姿勢に出ても軍事衝突に至らないとの判断があるとみられる。

香港国家安全維持法の施行が予想以上のスピードで進み、米政権では対中警戒が一段と強まっている。南シナ海では7月初旬、米中が同時に軍事演習に踏み切った。緊張が一段と高まりそうだ。

茂木敏充外相は14日の閣議後の記者会見で、ポンペオ長官の声明について「地域の平和と安定に向けた米国の揺るぎないコミットメント(関与)を示すものだ」と歓迎した。東南アジア諸国連合(ASEAN)も米声明をおおむね歓迎している。6月26日の首脳会議では中国の南シナ海を巡る活動に「懸念」を示す声明を採択していた。

しかし、米国への疑念も強い。19年11月にタイのバンコクで開いた米国との首脳会議ではトランプ米大統領が欠席。ASEAN軽視の姿勢に反発が広がった。中国は積極的な支援で影響力を強めており、カンボジアのようなASEAN後発国はなびき始めている。

フィリピンのロケ大統領報道官は14日の定例会見でポンペオ氏の発言に対して直接の言及を避け、「我が国の立場は米中いずれかにくみするのではなく、国益を守ること」と述べた。フィリピンは領有権の主張を棚上げして中国の経済支援を求める外交を推進しており、南シナ海の緊張を高める米国の介入を必ずしも望んでいない。

(ワシントン=永沢毅、北京=羽田野主、ハノイ=大西智也)

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